宮崎駿監督は、編集者・音楽評論家の渋谷陽一が﹃風立ちぬ﹄について﹁この映画は、戦争が大きなテーマになっているんですけども﹂と問うたのに対して、﹁戦争そのものじゃないですけどね。モダニズムですよね﹂と答えている。この﹁モダニズム﹂は﹃風立ちぬ﹄を理解する上で重要なキーワードだ。﹃風立ちぬ﹄は﹁モダニズム﹂を接点にして、﹃坂の上の雲﹄︵司馬遼太郎︶や宮崎自身の監督作である﹃もののけ姫﹄と繋がっている。 ﹁目の前に果てしない道が開けたような気がします﹂ ﹃風立ちぬ﹄は零戦を設計したことで知られる設計技師・堀越二郎にインスパイアされた作品だ。本作の主人公・堀越二郎は、実在の人物と同じく軍用機開発に携わってはいるものの、その人生には小説家の堀辰雄の小説のモチーフが組み入れられている。堀は堀越と同時期に東京帝国大学に在学していた同時代人である。 ﹃風立ちぬ﹄は、結核で婚約者を失うという展開とタイトルを
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