<誹謗中傷で訴訟を起こされた被告が訴訟費用を上回るカンパを集め、さらに裁判過程をコンテンツ化して儲ける「ビジネス」が増えている> 4月18日、文学者の北村紗衣氏が、ネット上で「山内雁琳」を名乗る男性から受けた誹謗中傷を、名誉毀損だとして訴えた裁判の判決が東京地裁で下された。その内容は、雁琳氏は北村氏に対して慰謝料及び弁護士費用の合計220万円を支払うべしというものだった。同種の裁判と比べると、220万円という金額は重いとされている。 原告代理人が「被害者ではなく加害者がカンパを募る「誹謗中傷ビジネス」に対して、裁判所が歯止めをかけた重要な貴重な判決」と述べているように、この判決は、ネット上の誹謗中傷とその裁判がコンテンツとして収益化される風潮に一石を投じるかもしれない。 発端は別の誹謗中傷事件 事の発端は、文学者でフェミニスト批評を行っている北村紗衣氏が、歴史学者である呉座勇一氏のセミクロ
地震で破壊された石川県輪島市で生存者を探す消防士(1月1日) (Photo by James Matsumoto / SOPA Images/Sipa USA) <発災直後に被災地に入ったジャーナリストや政治家は個別の事情も顧みずSNSで苛烈なバッシングに遭った> 2024年1月1日に石川県能登地方を中心に発生した最大震度7の地震は大きな被害をもたらし、200人を超える死者と数万人の被災者を生み出した。この地震の発災直後から数週間、インターネット空間では様々な言説が乱れ飛んだ。その中で、この震災に関連する言説の特徴の一つだといえるのは、災害ボランティアに対して過剰に自粛を要請し、被災地入りしたジャーナリストや国会議員に対して苛烈なバッシングがあったことだ。今回のコラムでは、この現象について考えてみたい。 素人でもないのに 今回の能登半島地震では、半島という地形的な要因と地震によって道路が寸
ある日本赤十字の献血ポスターが、ネット上で議論を呼んでいる。問題になっているのはウェブ漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』とコラボレーションしたポスターで、献血に行くことによって同作品のクリアファイルが貰えるというキャンペーンの宣伝として製作されたものだ。 このポスターでは、いわゆる「乳袋」(*編集部注:乳房のラインがくっきり出る、一般的な服ではあまりない構造の絵画表現)など性的な側面が強調された女性キャラが、煽るような表情で、「センパイ!まだ献血未経験なんスか?ひょっとして……注射が怖いんスか?」という、挑発的なセリフを言っている。ポスター下部には赤十字のマークがあり、「みんなの勇気と優しさで患者さんを笑顔にできる」と書かれている。 キャンペーンは10月1日から始まっていたが、10月14日、あるアメリカ人男性が、ポスターの「過度に性的な」側面をtwitter上で問題にしたのをきっかけに、一気に
30年かかるプロジェクト、何かあったとき東電は正直に情報を明らかにするのか(8月24日、東京・東電本社前の放出反対デモ) REUTERS/Kim Kyung-Hoon <福島第一原発から放出される処理水のトリチウム濃度は安全基準を満たしている─政府や国際機関は繰り返しそう保証するが、隠蔽を重ねてきた東電が今後数十年続く放出を誠実に行うとは思えない> 2023年8月24日、日本政府は、現在は敷地内のタンクに溜められている福島第一原子力発電所から出た汚染水を浄化した「ALPS処理水」の海洋放出を行った。この放出については周辺諸国から懸念が出ているだけでなく、地元の漁業関係者も反対しており、これは海洋放出には関係者の合意が必要とした2015年の約束に反している。筆者は以前も、海洋放出については国や東電は2015年の約束を守るべきだと主張してきた。 いわゆる「トリチウム水」の海洋放出は全世界で行わ
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