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突発性難聴の発症に端を発する極めてパーソナルなアルバムである前作『REFLECTION』から2年。tofubeatsの新作EP『NOBODY』は、AI歌声合成ソフト『Synthesizer V』(Dreamtonics)を用いて制作された誰でもない声をフィーチャーしたハウス・ミュージックが頭と体を揺らす作品だ。彼にとって特定のヴォーカリストをフィーチャーしない初めての作品である本作は、画期的なことをしれっとやってのけるtofubeatsらしいマナーが感じられると共に、何重にもレイヤードされたコンセプトが匿名的なダンス・ミュージックに乱反射され、聴けば聴くほどに深く引き込まれる。その心地良くディープなグルーヴのただ中で、果たしてtofubeatsは何を思うのか。 取材・文 | 小野田 雄 | 2024年4月 撮影 | 久保田千史 ――コロナ禍がクラブ・カルチャーにおける大きな転換点。現場に立
昨秋に発売された『とあるバンドメンバーの失踪について / 맑은 공기』は、1990年代中頃に提唱されたサウンドスタイル“イルビエント illbient”をメインテーマとして制作された、AIWABEATZとASPARAによるスプリット・ミックステープである。現在はほぼ完売状態である同作だが、「自分のニューLP『Like No Other 3』は、このミックステープの制作があったからこそ作ることができた作品だと思うので、今一度しっかりと振り返りたい」というAIWABEATZ(以下 AI)本人の希望から、今年に入ってASPARA(以下 AS)との対談を同ミックステープの制作進行担当である筆者(oboco)の司会により敢行。それに併せてミックステープに使用しなかった楽曲も含めた“私的イルビエント考”と言える音楽を双方がセレクトし、リストを作成した。 進行・文 | oboco | 2024年2月 ①
2023年の現在に突如降臨したtrfスタイルのTKサウンド。昭和 / 平成~Y2Kの扱いがリヴァイヴァルを超越して一般化した令和の世にあっても再構築ではなく、もはやトラッドや古楽の再現として継承する方法論で話題沸騰中のグループがHiiT FACTORY。かつて共に「つばさレコーズ」に在籍し、Especiaを送り出したディレクター・横山佑輝(吉本興業 音楽事業部)とStereo Tokyoを手がけたマネージメント・水江文人(BANKU)が再びタッグを組み、若き時分より小室哲哉に師事してTKサウンドの秘伝を知り尽くした石坂翔太(よしもとミュージックパブリッシング)をメイン・コンポーザーに迎えた同グループは、いかにして生まれ、なぜ今世に放たれるのか。TKサウンド吹き荒れる往年には生を享けてもいなかったメンバーたちは何を感じているのか……。メンバー・Ai(vo | 以下 A)、Reyuna(rap
東京・下北沢の複合施設「BONUS TRACK」、同じく下北沢の「LIVE HAUS」などでイベントを企画する宮﨑岳史 aka ミヤジさん。2014年に閉店した東京・南池袋ミュージック・オルグの店長を務め、その後は5年間、東京・渋谷 7th FLOORのスタッフとして働く一方、2015年5月から今年3月までの毎週木曜日の夜には、音楽好きが多く集まる東京・阿佐ヶ谷のバー「Roji」のカウンターに立っていたミヤジさんは、現在も多種多様なイベントを企画する一方、さまざまな“場”にいる“パーティー・バラモン”でもあります。そんなミヤジさんは、会えばいつも知らないことを教えてくれ、自分の好きなことに素直で愛に溢れている。 ミヤジさんの企画するイベントに足を運び、いくつもの楽しい瞬間が生まれた“場”を共有してきたひとりとして、いつかじっくりお話を聞きたいと思っていましたが、ついにインタビューをさせてい
筆者がつやちゃんを知るきっかけとなったのは、DU BOOKS『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(2022)が出版されるというニュースだっただろうか。valknee / 伏見 瞬との公開鼎談で、初めて聞いた声は、ヒップホップについてメインに書いているという人物とは想像できないくらいに整然と落ち着いたトーンで、一体どんな人物なのか深掘りしたくなった。「ヒップホップを聴いていて、すごく思うのが……、ルーズさとか粗さみたいなものを大事にしてるなって。それってやっぱり、自分の中でけっこう衝撃だったんですよ」という言葉から、つやちゃんという人物について、少しだけ読み取れた気がした。 取材・文・写真 | SAI (Ms.Machine) | 2022年12月 ――自己紹介をお願いします。 「文筆家、ライターのつやちゃんと申します」 ――つやちゃんさんの名前の由来を教えてくだ
6枚目のアルバム『ぼちぼち銀河』(AWDR/LR2)を5月にリリースした柴田聡子(以下 S)。2022年は彼女にとって、シンガー・ソングライターとして本格的に足を踏み出すことになった(そしてその個性を世に広く知らしめることになった)デビュー・アルバム『しばたさとこ島』(2012, 浅草橋天才算数塾)のリリースから10周年にあたる意義深い年である。付け加えておくと『しばたさとこ島』のアナログ・レコードは「なりすレコード」の第1弾作品であり、同レーベル始動のきっかけにもなった重要作だ。 そしてその『しばたさとこ島』のプロデュースを務めていたのが、三沢洋紀(以下 M)。ラブクライ、LETTER、真夜中ミュージック、岡林ロックンロールセンター、川本真琴 with ゴロにゃんず、国際オバケ連合、PONY、わびさびくらぶ、ゆふいんの森など数々のバンドで活躍し、神奈川・横浜 日ノ出町のライヴ・バー「試聴
昨年7月にフル・アルバム『明日咲く』を発表し、同年末には東京・渋谷 WWWでの単独公演「2020年忘れ 劇場版 小日向由衣の野望 ~凸凹風雲録~」を成功させた“レジェンド”小日向由衣が、ニュー・アルバム『世界が泣いてる』を今年7月にリリース。同作は前作以上に内省的でありながらも、より外に向けられた聴後感を残す意欲的なネクストレヴェル作となっています。表現として現時点での限界まで自身を曝け出したと言える作品を制作するに至った過程、コロナ禍での機微が多分に反映された『明日咲く』から1年を経てもなお停滞した状況下において発表する意義などについて、ご本人がたっぷり語ってくださいました。 取材 | 南波一海 | 2021年7月 文・撮影 | 久保田千史 ――去年はコロナ禍で精神的にも落ち込んでしまって、そこから自らを奮い立たせて前作の『明日咲く』を作ったという背景がありました。そこから早1年が経ちま
SONIC YOUTHのメンバー、キム・ゴードンが上梓した『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』や、ロクサーヌ・ゲイの『バッド・フェミニスト』。音楽好きだったり、フェミニズムに興味がある人は野中モモの翻訳した書籍や存在を知っているのではないだろうか。編集者を目指して大学の社会学科を卒業後、会社員を数年経てロンドンの大学院に進学した野中は、どういった経緯で翻訳家 / ライターになったのか。また、私と同じ東京出身でロンドンに“上京”していた先輩として、いろんなことを訊いてみた。 取材・文・撮影 | SAI (Ms.Machine) | 2021年6月 ――自己紹介をお願いします。 「野中モモと申します。東京に生まれ、東京で育ち、途中5~6年ロンドンに住んでいたこともあります。今は戻ってきて、フリーランスで英日の翻訳とライターの仕事をしています。Lilmagという、ジンと呼ばれるよ
メタルを愛する若者を中心に勃興し、ファントフト・スターヴ教会(ベルゲン)への放火に代表される器物損壊から手を染めた始めた犯罪行為が殺人へと発展、やがてはVarg Vikernes(BURZUM)によって中心人物・Øystein Aarseth aka Euronymous(MAYHEM)が殺害されるという最悪の結末を迎えた1990年代初頭のノルウェイジャン・ブラックメタル。その軌跡とバックグラウンドを紐解くノンフィクション『ブラック・メタルの血塗られた歴史』(マイケル・モイニハン + ディーデリック・ソーデリンド著)を基に、かつて90sブラックメタルの祖・Quorthon率いるBATHORYで演奏した異色の経歴を持ち、Beyoncé、Madonna、METALLICA、THE PRODIGY、RAMMSTEIN、THE ROLLING STONES、SATYRICONらのMVを手がけてきた
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