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マネーロンダリング(資金洗浄)対策は、コストが嵩む(かさむ)わりに、効果に乏しいようだ。 大まかな推計になるのは致し方ないが、年間3兆ドルに及ぶと見込まれている不正資金のうち、当局が差し押さえるのに成功しているのは約30億ドル。成功率は0.1%だ。その一方で、マネーロンダリング関連の法令を遵守するために、銀行をはじめとした民間の合法な企業が負担している費用は、年間で3000億ドルを上回っている。当局が犯罪組織から差し押さえている額(30億ドル)の100倍以上だ。 ・・・(略)・・・犯罪組織は、年間で30億ドルを差し押さえられている。その一方で、銀行をはじめとした民間の合法な企業は、法令を遵守するために年間で3000億ドルの費用を負担しているだけでなく、80億ドルの罰金を科されている。マネーロンダリング対策の真の標的は、非合法の犯罪組織ではなく、合法の組織なのではないかと疑いたくなるのも無理
近年のアメリカの政策関係者間での懸念材料の一つに、外国貿易と産業政策がアメリカ国内の製造業の健全性と強靭さにどのような長期的な影響を与えるかというものがある。トランプ政権とバイデンバイデン政権は、弱点となっているアメリカの製造業に対処しようとしている。トランプ政権は2018年と2019年に中国からの輸入品に数千億ドルの関税を課し、バイデン政権も今年の5月になって追加の関税対象を発表した。11月の大統領選で誰が勝っても、アメリカの政策立案者の間でこうした貿易への関心は続くことは明らかであり、実際こうした関心は世界中に広がっている。 しかし、アメリカが世界の最後の消費者としての役割を果たし続ける限り、つまりアメリカ以外の世界の貿易黒字の半分を吸収するだけの貿易赤字を抱え続ける限り、アメリカの製造業が全体的に復活する可能性は低いだろう。なぜなら、貿易不均衡と製造業の強さに関しては、世界規模でのパ
トロント市長ロブ・フォードが、選挙キャンペーン(と自身の仕事)を一旦やめてリハビリに専念することに決めた [1] … Continue reading 。トロント市民の多くは、このニュースを聞いて間違いなく安堵したことだろう。現実の問題について議論できるようになるかもしれないと考えると、ほとんど胸が躍るような気持ちになる(また私としては、オリヴィア・チャウ [2]訳注:トロント市長選での左派の候補者。ヒースは、再分配に傾倒しすぎているとしてチャウに批判的な態度をとっている。このエントリを参照。 に投票しなければならない義務感を抱かずに済むという開放感もある)。 本題に入る前に、フォードに少しだけだがお別れの言葉を述べておきたい。みんなと同じく、そうする誘惑に抗しきれないからだ(これは本当のお別れではない。フォードはまず間違いなく30日以内に戻ってくるだろう。「願わくばお別れにしたい」という
(規範的)民主主義理論に目を向けると、こうした現象を理解する上で役に立つような議論はどこにも見当たらない。社会がこの現象にどう対応すべきかについて考えたい場合はなおさらだ。 このエントリは前の投稿〔翻訳はここで読める〕への付記である。今朝、朝食を食べながらエコノミスト誌を読んでいて(そう、私はそういうことをしているのだ)、次の一節に出くわした(実際にはアメリカの上院議員テッド・クルーズに関する記事である)。 アイオワ州の共和党上位2人のうちの片方は、どの国にも見られるタイプだ。政策に乏しく、自惚れと誇張が激しく、自分が蔑んでいる国を、自分の意志の力で取り戻すと約束する。自分を強い男に見せるドナルド・トランプの仕草は、ブエノスアイレスからローマに至るまでおなじみのものだ。リアリティ番組と不動産ビジネスという要素が事態にひねりを加えているが。 トランプは「どの国にも見られる」タイプの人物で、ア
2021年9月、岸田文雄は「新しい資本主義」という野心的な綱領を掲げて首相に選出された。岸田は、自民党の党首として、経済成長と所得分配の好循環をもたらす新規で、より良い経済システムの実現を約束してみせた。日本政府はこの「新しい資本主義」を推進するための計画をいくつか提示したが、日本国民は依然として現在の実体経済に不満を抱いている。日本の株式市場は急騰し、日経平均は一時的に約34年前のバブル期の水準を超えたが、2023年半ば以降の経済成長は停滞している。岸田政権の支持率は着実に低下しており、2022年当初には50%を超えていたが、2024年2月には25%にまで低下した。 革新的な経済運営を約束したのは、岸田政権が初めてではない。2013年、安倍晋三は、拡張的な金融政策によって日本経済を復活させることを約束した。しかし、アベノミクスや、現在の岸田プランにも関わらず、賃金の伸びは停滞したままだ。
Stephen Harper versus the intellectuals, part 2 Posted by Joseph Heath on August 25, 2015 | political philosophy, politics トム・フラナガン事件 〔訳注:トム・フラナガン事件とは、カナダで非常に著名な保守系法学者であるトム・フラナガンの「児童ポルノ」に関する発言を巡って起こった炎上騒ぎである。フラナガンは、2006年まではハーパーの法律顧問を努め、超保守の地域政党ワイルドローズ党の立ち上げに参加する等、非常に保守色が強い法学者である。フラナガンはカナダ先住民の法的権利の撤廃を主張していることもあり、左派の活動家からは非常に憎まれてる人物でもある。 2013年、フラナガンは大学で講演を行い、講演後の質疑応答で児童ポルノに関する法的規制について問われた際に、カナダの児童ポル
我ながら,パレスチナ抗議運動について書くのにはだいぶ飽きてる.2週間前の記事で言いたいことはだいたい言い尽くしていて,この運動全体がちょっとつまらないというのがぼくの中心的な論点だった.ただ,最近出たこの世論調査の結果は掲載した方がよさそうだ.というのも,ぼくが言ってたことはだいたいこれで裏付けられるからだ. Generation Lab は1250名の大学生を対象に調査を実施して,自分がとくに重要だと思う3つの問題を彼らに選んでもらった.パレスチナに言及したのは,たった 13% だけだった: Source: Axios この世論調査について,Axios がもうちょっと詳しいことを言っている: 抗議運動のいずれかの側に参加したことのある学生は,わずかな少数派にすぎない (8%).(…) この調査では,ガザの目下の状況に責任があるのは誰かという質問に対して,バイデン大統領と答えた学生の3倍も
社会科学研究ネットワーク(SSRN)の”the Handbook of New Institutional Economics”『新制度派経済学ハンドブック』に収録される、制度変化について扱った章を、ディシリー・ディシエルト(Desiree Desierto)との共著で書き上げた。 制度分析は個人を強調しない傾向にある。14世紀終盤から15世紀序盤にかけてのイングランドにおける農奴制の終焉といった展開は、農奴や貴族など一個人の行為や思想に左右されたものではなかった。産業革命は、ジェームズ・ワットやリチャード・アークライトを歴史から取り除いても生じただろう。制度分析の根底には、一個人よりもはるかに重要な、深層的・構造的要因が存在する、という前提がある。 重要な個人を無視するのは、経済史研究だけではない。英雄史観(Great Man Theory of History)は、学術の世界ではとっく
Sara Abrahamsson による新しい論文がこちら.ノルウェーのみに当てはまる事情も働いているのかもしれないけれど,研究結果はぼくの予想とだいたい合ってる.基本的な状況は次のとおり.中学校でスマートフォンが禁止されたものの,禁止の実施率はノルウェー各地でまちまちだった(し,外生的だ).中核的な発見をいくつか見てみよう.実際に論文を読んでみると,Twitter に出回ってるいろんな要約から受けるのとはいくぶんちがった印象を受ける: 成績は改善した.たとえば,女子生徒の成績は 0.08 標準偏差の向上を示している.やる値打ちはあるけれど,一世代の子供たちを救うにはほど遠い.女子生徒の場合,いちばん向上したのは数学のスコアだった. 精神衛生関係の専門家に女子生徒が相談することが減った.〔心の問題での〕一般開業医の受診は平均 0.22 回減り,専門医の受診は 2~3回減った. 「専門医や一
「人類がなしとげた記念碑的な技術的偉業に目をくらまされてはいけない」――アセモグル & ジョンソン いたるところで「2023年の最重要ビジネス書」のリストに『技術革新と不平等の1000年史』が挙がっていたのは,意外でもなんでもないだろう.まず,著者たち自身の経歴からして,比肩する者がいない.ダロン・アセモグルのことを経済学界の発電所と呼んでも,本人の実績にばかばかしいほど釣り合わない: 「2005年から2020年のあいだに経済学のトップ5学術誌に掲載された著者の苗字でワードクラウドをつくるとこうなる」 それに,アセモグルは国々の発展を制度から説明する説の主要な提唱者でもある.これまでに,アセモグルは『国家はなぜ衰退するのか』やその続編の『自由の命運』(ジェイムズ・ロビンソンとの共著)という有名な本で,この説を展開してきた.ぼくが「包摂的制度」や「収奪的制度」がどうのって話をしてるときには,
1.はじめに 本稿『現代貨幣理論(MMT)入門』は、筆者(ビル・ミッチェル)が2022年11月5日に京都大学で行った講演に基づいている。 世界金融危機〔2007年〜2010年〕とその十数年後の新型コロナウイルスの世界的大流行によって、経済政策においても、またその政策の根拠となる経済学においても、新自由主義の時代が持続不可能であることが明らかになった。 過去数十年間、ほとんどの先進国では、政府が緊縮寄りの財政政策を偏重し、家計債務〔の拡大〕に依存して自国の経済成長を維持してきた。また、政府は「効率的市場」の定理を唱え、金融市場が非合理的に作用し、投資資金の配分を誤る恐れを否定することで、金融市場に対する監視の緩和が民間債務の急増を招いたことを正当化した。また、ニューケインジアン [1] … Continue reading 的なマクロ経済学が支配的であったため、不安定化の責任は金融政策に押し
アメリカの不穏な情勢はピークを迎えていると,かなり早いうちにぼくは発言していた――だいぶさかのぼって,2021年中盤のことだ.それ以来に起きたいろんなことは,その判断と広い範囲で整合している.ただ,もちろん,不正だとして選挙に異論が唱えられたり今年の大統領選挙でトランプが当選したりすれば,状況は大きく変わるかもしれない.ともあれ,社会の不穏な情勢はちょっぴり引き潮になりはじめている小さなきざしはひとつまたひとつと現れている. たとえば,2020年2月(パンデミックが全面的に社会を襲う前)に比べて,いまニュースウェブサイトを人々が見る量はだいぶ減っている.また,右派系ウェブサイトへのトラフィックを見ると,非主流・過激派サイトも主流派サイトも,いっそう流入数が減っている. Source: TheRighting 左派はどうかと言うと,ハサン・パイカーみたいな主要な左派系ストリーマーの視聴数も,
「少なくとも、彼(ヒトラー)はアウトバーン(高速道路)を建設した」。ナチスが国内であんなにも支持された理由として両親や祖父母の口から繰り返し語られるがゆえに、多くのドイツ人の記憶に刻み込まれている文句である。ナチス政権が積極果敢な対外侵攻からジェノサイドに至るまでの一連の政策を推し進めるためには、国民からの圧倒的な支持が欠かせなかった。高速道路網の整備は、ナチス政権の疑いもなく光の面に属する成果として民衆の記憶の中に保存され、1933年以降にナチス政権が熱狂的に支持されるようになったのはなぜなのかを難なく説明してくれる絶好の答えとしてしきりに持ち出される格好になっている。 インフラを整備するための公共投資は、人心(国民のココロとアタマ)を掴む(つかむ)ことが果たしてできるのだろうか? 「ナチスがあんなにも支持されたのは、高速道路網を整備したから」という上の世代がひょいと口にする説明は、単な
Journal of Economic Perspectives誌に掲載されたジェルマ・ベル(Germà Bel)の論文――題して、“The Coining of “Privatization” and Germany’s National Socialist Party”(「『民営化』の由来とドイツの国家社会主義党」) ――を踏まえて「民営化」という語の起源を辿ったこちらのエントリー〔拙訳はこちら〕に対して、ジェーン・ガルト(Jane Galt)をはじめとして方々から数多(あまた)の意見が寄せられた(ガルトが自分のサイトで開陳している意見はこちら。本ブログのコメント欄に寄せられた数々の意見はこちら)。 ベルの論文についてああだこうだと意見が交わされているうちに、ナチスによる民営化の具体的な内容(特徴)はどんなだったのかという点へと議論の焦点が移っていった。そんな中、ベル本人がコメント欄に
2ヶ月ほど前,こんな調査結果がメディアを騒がせた――アメリカ人の若者の20%がホロコースト否定派だというんだ: The Economist/YouGov の新しい世論調査によれば,18歳~29歳のアメリカ人の5分の1が,ホロコーストは迷信・でたらめだと信じている. この質問で調査対象になったのは約200名の人たちという小さな標本でしかないが,反ユダヤ憎悪の高まり――とくに,アメリカの若者たちのあいだでのそれ――に対する懸念に信憑性を加えている. この調査の問題点はとにかく次の一点につきる――調査はまるっきりのゴミなんだ.この調査は「オンラインでのオプトイン方式世論調査」だった.つまり,インターネットでこの世論調査を見つけた人が誰でも回答できるものだったんだ.自分からネット世論調査を検索しにいきやすいのはどういう人たちだろうね? ネットの匿名荒らしと,あとは,世論調査にふざけた回答をしたくて
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