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居場所は「不必要な時間」の共有から生まれる。分身ロボットOriHimeがつくる、役割を独占しない人間関係 東京・日本橋からほど近い交差点の一角にある、「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」。通りに面したたくさんの窓から、植栽のグリーンと暖色のあかりが見える。ガラス戸のエントランスを通ると、カフェのカウンター脇にいる1台のロボットが話しかけてくれる。 「いらっしゃいませ! 今日はどちらからですか?」 このロボット、機械ではあるがコンピューターが対応しているわけではなく、向こう側には人がいる。“パイロット”と呼ばれるスタッフが、自宅などから遠隔操作しているのだ。ここDAWNでは、卓上サイズの「OriHime」と身長約120cmの「OriHime-D」を介して、家の外での仕事が難しい人が在宅ワーカーとして入れ替わり立ち代わり働いている。 開発したのは、オリィ研究所代表の吉藤オリィ氏。Ori
子どもや家族との日常、趣味の記録など、スマートフォンやクラウドにはたくさんの写真がたまっていく。家族に共有したり、SNSに投稿したり、写真の楽しみ方はさまざまだ。 写真プリントアプリ「ALBUS」は、毎月8枚好きな写真を選ぶと、マンスリーカードとともに届けてくれる。送料(税込242円)のみでプリント代は無料だ。「毎日を宝ものに。」をコンセプトに、アルバムづくりが習慣になることで、「いつのまにか家族の“宝もの”が増えていく」のが狙いだ。 ALBUSの写真プリントは、“ましかく(正方形)”の判型が特徴。専用アルバム「ALBUSBOOK」やフォトフレームなどオリジナルアイテムも取り揃え、誰でも気軽にアルバムづくりができる。写真プリントアプリとしては、ハードカバーアルバム販売のシェア1位を誇る(2021年時点) スマートフォンやタブレットによって、写真を撮ることが日常となった。クラウドでいくらでも
花を飾ると暮らしが変わる? “かわいいが届くお花便”「FLOWER」が提案する、心地よい変化のつくり方 帰りがけに花屋に立ち寄り、花を選ぶ。せっかくのかわいい花だから、きれいな部屋に飾りたくなる。片付いた部屋で花を眺めていると、少し手の込んだ夕食を作りたくなったり、お風呂にゆっくり浸かりたくなったり、自分に目を向けられるようになる──。ただそこに花があるだけで、少しずつ暮らしが変わっていくのだ。 「花を飾ると、暮らしが変わる。暮らしが変わると、自分をもっと好きになる。」をタグラインに、2019年2月にスマートフォンアプリとしてリリースした『FLOWER(フラワー)』。「かわいいが届くお花便」をコンセプトに、花を取り入れることでライフスタイルや暮らす人に変化を促す。 生花のECサービス「FLOWER」では、「ポストに届く定期便」と「ロスレスブーケ」の2サービスを展開。定期便は月に2回、花とグ
2022年3月15日、日本の情報学研究を推進する研究機関からあるデータセットが公開された。 提供元は、『プロメア』や『キルラキル』などのヒット作を手がけるアニメーションスタジオ〈TRIGGER〉。同社の数あるヒット作のなかでも、オリジナルとして制作された短編劇場作品『リトルウィッチアカデミア』の制作データが提供され、大学や研究機関の学術研究に利用できるようになった。 学術研究とアニメーションという一見距離があるように見える二分野であるものの、この取り組みについて国立情報学研究所(以下NII:大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所)の教授、大山敬三氏は「双方にとって新しい扉を開く第一歩になるのでは」と語る。 こうした取り組みの背景には研究所、アニメーションスタジオの双方にどのような展望があり、実現に漕ぎ着けたのか。そして、この取り組みで、一体何が生まれうるのか。 NI
青森県八戸市の中心市街地には市役所や公共施設が集まり、八つの横丁には個性的な飲食店が軒を連ねる。そのちょうど中央にある「八戸ブックセンター」は、全国でも珍しい“市営書店”として2016年にオープンした。 館内にはソファはもちろん、ハンモックもあり、コーヒーやビール片手にゆったりと本を読むことができる。気に入った本を買い、そのまま近くの「八戸まちなか広場マチニワ」で読むのも良し、余韻を楽しむために飲み屋に足を伸ばすも良し。八戸では、八戸ブックセンターを起点に「本のある暮らし」が実現している。 だが、そもそも市内には図書館もあれば、もちろん民間の書店もある。なぜそこへ新たに公共施設として公営書店をつくるに至ったのか──。背景には当時の市長の強い思いと、書店が「売れ筋」重視にならざるを得ない、地方ならではの課題があった。 オープンから丸5年が経った今、八戸ブックセンターの役割や、本を介して築いた
「可処分時間の奪い合い」「短尺動画の時代」なんて嘘。ITサービスの常識をひっくり返す、“超長尺”動画配信プラットフォーム『シラス』 ITサービスはいま「ユーザーの可処分時間を奪い合っている」と言われている。その一つの表れが、動画の「短尺化」だ。TikTokが流行し、YouTubeは最大60秒の動画フォーマット「YouTube ショート」をリリースした。そんな「短尺の時代」のさなか、平均2.8時間もの長さの番組を配信し、2020年10月のローンチから約1年半で合計3万人ものユーザーを集める動画プラットフォームがある──日本を代表する哲学者・批評家であり、出版・放送・イベント・教育など幅広く事業を展開する株式会社ゲンロンの創業者でもある東浩紀が立ち上げた『シラス』だ。 シラスはなぜ、トレンドに反して、“超長尺”動画で多くのユーザーからの支持を集めているのだろうか。その秘密を探るため、ゲンロンの
黒板消しの形のディスプレイクリーナー。1本の線で空間に役割を生み出す突っ張り棒。クリエイティブユニット・TENTが手がけるプロダクトは、シンプルなデザインで暮らしになじむ。まな板も兼ねるお皿「CHOPLATE(チョップレート)」は、2021年3月にSNSで発売を知らせると、1日で1000枚以上もの予約があった。 プロダクトデザイナーの治田将之氏(冒頭写真左)と青木亮作氏(右)が立ち上げたTENTは、オリジナル商品の開発・販売と、象印やキングジムなどのメーカーと組んだプロダクトデザインを数多く手がけている。お皿、フライパン、調理家電など、すでにたくさんの商品があるカテゴリーにおいても、はっとさせる提案を重ねている。 TENTが一貫して重視しているのは「自分たちがほしいものをつくる」こと。そして「顧客の暮らしがよくなる」こと。自宅で試作品を何度も使い、率直な心の動きや小さな気づきを頼りに機能や
使い続けることを前提とするサービスでは、使うほどユーザー側に体験が積み重なる。愛着が増すほど、提供者側によるルール変更に反発が起きることがある。 「ユーザーさんはパートナー。一緒に価値をつくっていきたい」と話すのは、登山アプリ『YAMAP』を運営する、ヤマップ代表の春山慶彦氏だ。 電波が届かない山の中でもスマホのGPSで位置情報がわかることや、ユーザー間のコミュニティ機能などが支持され、2013年のリリース以降の累計ダウンロード数は280万件。 そのYAMAPが2021年7月、方針を大きく転換した。他のユーザーの活動などに「いいね」できる仕組みを、“循環型コミュニティポイント”と定義する「DOMO(ドーモ)」に刷新。ポイントをユーザー間で送り合うほか、山の再生などの支援にも使えるようにした。 「いいね」を撤廃し、3カ月で失効するといった新ルールに、当初はユーザーから戸惑いや批判の声が相次い
「闇の自己啓発」「異常論文」「最悪の予感」……一見すると“異常”な印象を受けるこれらの文字列は、ある出版社から刊行された書籍や雑誌のタイトルである。 発売直後から売れ行き好調、SNSも大きく沸かせたこれらを手掛けるのは、早川書房。1945年8月という、日本史における転換点となった月に創設された同社は、日本にSFやミステリーを根付かせた立役者だ。もともとは海外文学がメインだったが、2000年代以降は国内フィクション、そしてここ数年は国内ノンフィクションにも本格進出し、コンセプチュアルな作品を世に送り出し続けている。 出版不況が叫ばれて久しい現代において、早川書房はなぜ話題作を連発できるのか? この謎を解き明かすため、編集統括部長の塩澤快浩と、ノンフィクション部門の責任者を務める一ノ瀬翔太をたずねた。両氏は「書籍」という媒体を通して、読者にいかなる体験を届けようとしているのか。かの大作家にちな
私たちが何かを買うときの判断材料として、当たり前になって久しい、レビューサイトやまとめサイト、SNSの口コミ。とはいえ、ウェブ上の不特定多数の人による評価は、いい意味でも悪い意味でも基準があやふやだったりすることも珍しくないから、本当に信頼できる評価なのか少し分からなくなりがち。 そんなときの拠り所の一つとして、頼りにできるのが「テスト誌」と呼ばれる雑誌である。“消費者視点”を掲げ、あらゆる商品をテストしては評価を繰り返す。戦後の『暮らしの手帖』が日本におけるその分野のパイオニアだった(現在は商品テストは中止)。 現在、そこで独自のポジションを築いているのが晋遊舎だ。1995年に創業し、テスト誌創刊以前はパソコンやソフトの使い方を紹介する雑誌などが主力。創業当時はパソコンやインターネットの世界すべてが発展途上だったため、そうしたハウツー情報を1冊にまとめた雑誌は需要があった。しかし、時代の
「すみません。昨日は北京で、過去10年で最悪規模の黄砂が発生して。今朝は一転、青空が広がったので、その続報を早いうちに公開しようと思ったんです」。北京、福岡、そして東京の3カ所をつないだオンライン取材の冒頭。突然かかってきた電話に応じた様子に、情報の即時性と正確性を重視する報道機関としての矜持を見るとともに、これから“取材のプロ”に取材するのだと背筋が伸びた。 インターネットによって誰もが容易に情報を得られ、また発信できるようにもなった現代社会。あふれる情報のなかで、その立ち位置が問われているのが「マスメディア」だ。「自分たちにしかできない役割は何か」。マスコミ各社の模索が続くなか、読者の困りごとに応える“基本”に、あえて立ち返った媒体があった——九州・福岡を拠点とするブロック紙、西日本新聞だ。 同社が立ち上げた『あなたの特命取材班』(以下、あな特)は、読者の声を起点とし、新聞社が独自の取
「今」と「未来」は二項対立ではない。“コンサマトリー” は、いかにビジネス的価値を産めるか #CXDIVE 2019 AKI 「コンサマトリー」をテーマに、2019年10月に開催された「CX DIVE 2019 AKI」。しかし、この言葉を耳慣れないという人は少なくないだろう。特にビジネスシーンでは、ほとんど用いられることがなかった言葉なのではないだろうか。 電通クリエーティブプランナーの小田健児氏、neurowearプロジェクトco-founderの加賀谷友典氏、そしてナガエプリュス取締役/ブランドプランナーの鶴本晶子氏が登壇したセッション『コンサマトリーの核心は“行動を伴う熱量”の波及にある』では、コンサマトリーの解釈やビジネスにおける可能性が、それぞれの経験から語られた。 コンサマトリーは「現状快楽型」、インストゥルメンタルは「未来志向型」 「コンサマトリー」とはアメリカの社会学者タ
「場によって、インスピレーションの連鎖が生まれる。アートと場は、とても相性がいいんです」 部屋全体をアーティストがデザインし、「作品」の中に泊まれるホテルを展開するBnA。高円寺と秋葉原、京都の3店舗を展開し、日本橋にも近日中にオープン予定。2018年にオープンしたBnA STUDIO Akihabaraは1部屋あたりの平均単価は3万円を超えるにもかかわらず、稼働率は9割近い。宿泊者の実に7〜8割が海外から訪れているという。 すべての部屋は、アーティストがその部屋のために手掛けた作品で、部屋ごと担当するアーティストもコンセプトも異なる。宿泊費の一部は、アーティストに還元され、経済的なメリットも提供しているという。 一般的な宿泊施設が向き合うべきがゲストだとすれば、BnAはゲストとアーティストの双方と向き合う。 「BnAは、ゲストとアーティストの双方によりよい体験を提供するプラットフォームだ
オーディオの電源を入れ、アンテナを立て、周波数を合わせて……。あの頃と比べたら、ずいぶんと手軽にラジオを聴けるようになった。これを可能にしているのが、2010年にスタートしたインターネットラジオサービス『radiko(ラジコ)』だ。 リアルタイムで全国のラジオを聴ける「エリアフリー」や、過去1週間の放送をさかのぼって楽しめる「タイムフリー」など、従来のラジオでは実現できない機能も備える。URLで過去のラジオ番組を共有できる「シェアラジオ」や他番組のレコメンドなど、Webサービスならではの価値も付加している。 ラジコはラジオの楽しみ方をどう変えてきたのか。そして、変えようとしているのか。radiko業務推進室長、坂谷 温氏に話を聞いた。 「届ける」のアップデートが、リスナーの解像度を上げた 「ラジオには元々良質なコンテンツがたくさんある。ラジコが注力するのは、リスナーがラジオをより楽しめるよ
「Smoking Kills」「No Photos」など、風刺の効いたシンプルなメッセージをのせたウェアが、Instagramを中心としたセルフィーによって世界中に広がっている。#FR2のECサイトのデータによれば130カ国以上で売れているそうだ。 石川氏はこのブランド開発において、「生活者のコミュニケーションの中心になること」を目指したという。それはなぜか、そもそも、どのような経緯でブランドを立ち上げたのか。 同氏へのインタビューから浮き彫りになったのは、一貫した顧客視点だった。 自分たちにしかできない方向へ振り切る 石川氏は、2000年代初頭から若者を対象にしたファッション業界に身を置いていた。 90年代のメンズファッションを牽引した裏原文化に根付いたストリートブランド。彼らの高価格帯商品は熱狂的なファンを生んでいった。しかし00年代に入り、ブームはだんだんと下火になる。 その頃のメン
「遊べる本屋」をコンセプトに掲げ、本、CD、雑貨など、サブカル関連グッズを所狭しと並べるヴィレッジヴァンガード。近年は、「イオン」や「ららぽーと」をはじめとするショッピングセンターへの出店を加速し、全国に350店以上を展開している。 「全国チェーン」へと成長したにも関わらず、店員による手書きのポップや雑多な店作り、そして店舗ごとに異なる内装など、小売チェーンの常識にとらわれない独自の運営方針を貫いてきた同社。いったい、その背後にはどんな店舗哲学があるのだろうか? 20年前、アルバイトとしてヴィレッジヴァンガードコーポレーションに入社し、現在は執行役員で経営戦略本部長などを務める大倉丈弥氏に聞いた。 店長に就任するファンたちの店作り ──ヴィレッジヴァンガードの店舗は、各店舗ごとに内装や、取り扱い商品も異なり、他の小売チェーンとは一線を画す店舗運営を行っています。まず、会社としてはどのような
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