April 14, 2024 ヒュームの帰納の問題の再発見 ヒュームの帰納の問題は現代の科学哲学で帰納をめぐる哲学的問題を紹介する際、必ずといっていいほど言及される。このように定番になっていることから、﹁ヒュームの帰納の問題﹂がヒュームが﹃人間本性論﹄を公にして以来一貫して哲学の大問題として論じられてきたような印象を持つ人も多いかもしれない。かく言う私自身も科学哲学の歴史について調べ始めるまで、当然のようにヒュームの帰納の問題が二百数十年来の大問題だったと想定してきた。 しかし、少し調べれば分かるように、19世紀前半から中頃にかけての﹁帰納﹂をめぐる論争︵ハーシェル、ヒューウェル、ミルらによるもの︶では、ヒュームが指摘した論点は全く顧みられていない︵このあたりは﹃科学哲学の源流をたどる﹄でも少し紹介したし、以下でも触れる︶。では、ヒュームの帰納の問題を哲学的問題圏の中央へと押し出したのは誰