ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (3)
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未来経過観測員 (角川書店単行本) 作者:田中 空KADOKAWAAmazonこの﹃未来経過観測員﹄は、縦読みならではの物語を構築し次々と明らかになる世界の真の姿、無限構造の物語を描きだしてみせた漫画﹃タテの国﹄や宇宙をさまよい、偶然出会った無人の宇宙船同士で元素を奪い合う闘争を描いた短篇﹃さいごの宇宙船﹄など本格的なSF漫画を次々と発表してきた田中空のはじめての小説作品だ。 もともと表題作の﹃未来経過観測員﹄がカクヨムにて掲載され人気となっていた。本書はそこに短篇﹁ボディーアーマーと夏目漱石﹂が書き下ろし&追加された一冊になる。もともと﹃タテの国﹄などの作品を読んで今どき珍しいぐらいにド直球に﹁世界の真の姿﹂﹁宇宙の果ての果て﹂、﹁世界の終わり﹂に挑みかかるような作家で(そういう意味でいうと、タイプとしては劉慈欣やステープルドンを彷彿とさせる作風ではある)どの漫画もたいへん楽しく読んでい
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ここはすべての夜明けまえ 作者:間宮 改衣早川書房Amazonこの﹃ここはすべての夜明けまえ﹄は、第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞したSF中篇(もしくは短めの長篇といえるかぐらい)だ。特別賞は長さが短めだったり一点突破の魅力があったりで受賞する作品が多いが(たとえば過去事例で代表的なのといえば草野原々の﹁最後にして最初のアイドル﹂など)、本作も﹁刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる﹂、2100年代を舞台にした、問題まみれの家族の物語だ。 とある理由からひらがなだらけの文章で物語が始まるので面食らうのだが、設定開示の順番は心地よく、すぐに作中世界へと入り込んでいくことができる。単行本になる前からゲラが配られたりSFマガジンに全文掲載されたりしていたのでエモいエモいと評判だけは聞いていたのだけど、実際に読んでみたらたしかにこれはエモーショナルな物語だ。しかし、ただ感動させよう、感動さ
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第八の探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:アレックス パヴェージ発売日: 2021/04/14メディア: Kindle版この﹃第八の探偵﹄は、7つもの作中作が入り乱れるイギリス作家による本格ミステリである。著者アレックス・パヴェージは本書がデビュー作となるが、異様に凝った作りの作品であり、こんな才能がどうやったら突然出てくるんだ、と驚いてしまった。 殺人ミステリを数学的に定義する 本書の中で展開される作中作はすべてグラント・マカリスターという作家が書いた作品なのだけれども、グラントによればこの短篇はすべて、彼が1937年に書いた研究論文に沿って生まれた作品なのだという。論文のタイトルは﹃探偵小説の順列﹄といい、その目的は﹁殺人ミステリを数学的に定義することだった﹂と語られている。 ﹁でも、どうやってです? 文学の概念を定義するのに、数学をどう使うんです?﹂ ﹁もっともな疑問だな。では、
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