ブックマーク / scienceportal.jst.go.jp (7)
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今世紀に入り、生物の﹁ゲノム﹂が次々に解読されている。2018年8月には、コムギのゲノム解読が完了した。国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)の研究チームが、13年も尽力した大プロジェクトの成果である。地球で人類に最も貢献する食物といっても過言ではないコムギ。ゲノムの解読により新品種の開発が加速し、心配される将来の食料危機への重要な一手になると期待されている。 巨大ゲノムの実体とは ﹁ゲノム﹂は生物の遺伝情報で、その実体は、DNA(デオキシリボ核酸)という細長い分子の上に並んでいるA(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)という4種類の物質の羅列だ。いずれも﹁塩基﹂と呼ばれる物質だ。﹁物語﹂という情報を﹁文字﹂の並びで表現したり、﹁曲﹂を﹁音楽データ﹂に変換してCDに書き込んだりするように、﹁ゲノム﹂という見えない情報を実体のある﹁塩基﹂で表現する。これらの塩基
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サイエンスクリップ 水中に眠る文化遺産から歴史の謎を解き明かす﹁海に沈んだ歴史と宝物−水中考古学の魅力﹂講演会より 2016.12.19 2016年11月10日(木)、千代田区立日比谷図書文化館の日比谷カレッジで﹁海に沈んだ歴史と宝物—水中考古学の魅力﹂が開催され、水中考古学の歴史や取り巻く環境の変化、そして最新の研究成果が紹介された。講師は、東アジア海域で唯一のユネスコ水中考古学大学連携ネットワークのメンバー校である東京海洋大学大学院の岩淵聡文(いわぶちあきふみ)教授。岩淵教授は、UNESCOの諮問機関であるICOMOS(International Council on Monuments and Sites。国際記念物遺跡会議)において国際水中文化遺産委員会の日本代表も務める、水中考古学研究の第一人者だ。 ﹁水中考古学﹂と聞くと、沈没船や海底遺跡など、海の奥深くに眠る、かつての人類が遺
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台風シーズンの台風予報では、﹁最大風速﹂や﹁中心気圧﹂といったキーワードをよく耳にしたことだろう。実はほとんどの場合、これらの数値が推定値であることをご存知だろうか。推定値の誤差は、その後の台風の進路や強度予測を狂わせる。大きな災害をもたらす台風の正確な予測を誰もが望んでいるだろう。そんな中、航空機を使った台風の直接観測プロジェクトが動き始めた。名古屋大学宇宙地球環境研究所附属飛翔体観測推進センターを中心に、今年(2016年)から5年に渡り行われるという。今後強大化が懸念される台風の解明と予測に、科学技術はどう貢献できるのか。 台風の上から機器を落として直接観測 観測方法は非常に大胆だ。発生後、発達している台風に向けて航空機を飛ばし、上空から﹁ドロップゾンデ﹂と呼ばれる観測機器を落とす。ドロップゾンデは、直径7センチメートル、長さ30センチメートル、重さ100グラム程の円柱型の機器で、高度
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9月中旬に関東、東北地方を中心に襲った豪雨被害で、流出されそうな家屋の屋根などからヘリコプターで救助される被災者のテレビ映像に見入った人も多かったに違いない。大きな河川の堤防が決壊するという事態を日ごろ全く想像もしなかった人もいたのではないだろうか。河川工学者として現場を観察することの重要性を指摘し、かつ長年、実践し続けてこられた高橋裕(たかはし ゆたか)東京大学名誉教授(今年の日本国際賞受賞者)に、多くの日本人が忘れていることは何か、日本の技術者教育のあるべき姿などについて、聞いた。 - 台風18号の影響による﹁平成27年9月関東・東北豪雨﹂水害で日本中が驚いている観がします。行政、河川技術者、一般の人たちにとっての教訓を端的に言っていただくとどういうことになるでしょうか。 まあ、古い言葉になりますが、﹁備えあれば憂いなし﹂ということでしょうか。備えが十分でなかったということです。水害に
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欧米先進国に比べ、数学で博士号を取得する人間が少ない。長期的に見て日本の数学研究力は低下している、と海外のトップクラスの数学研究者からも心配されている−。科学技術政策研究所(現 科学技術・学術政策研究所)の報告書﹁忘れられた科学−数学﹂が、科学技術・学術関係者に少なからぬ反響を呼んで10年になる。報告書の本来の狙いは、産業界でも数学研究者が活躍している米国の例などを挙げ、数学への公的支援や数学と産業、数学と他分野との共同研究を促すことにあったのだが、その後、数学を取り巻く状況に変化はあったのだろうか。15日に科学技術・学術政策研究所が公表した講演録﹁数学は世界を変えられるか?〜﹃忘れられた科学−数学﹄から10年 数学イノベーションの現状と未来﹂に、他分野との共同研究で成果を挙げている数学者たちの興味深い言葉や指摘がある。 ﹁数学は﹃数を扱っていない﹄ことが多い﹂。﹁﹃具体化する﹄(物事を
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光る生物の発光の仕組みは、いまだにその多くが謎のままだ。そんな中、キノコが緑色に発光するための原因物質を、大場裕一(おおば ゆういち) 名古屋大学大学院助教らのチームが、ロシア科学アカデミーのヨーゼフ・ギテルソン教授、イリヤ・ヤンポルスキー博士らのチームと共同で特定した。多くのキノコに含まれる﹁ヒスピジン﹂という物質と、光るキノコだけが持つ酵素が反応することで発光するという。 光るキノコは日本に10種類以上見つかっており、そのうちの8種類以上が、発光生物の宝庫として知られる八丈島で確認されている。名古屋大を拠点とする大場氏らのチームは2005年から八丈島に通い続け研究を進めてきた。そしてこの島に生息する﹁ヤコウタケ﹂を大学でも栽培し、すりつぶしてさまざまなキノコから採取した物質を混ぜる実験を3~4年繰り返し行い、ヒスピジンとヤコウタケの酵素が反応して光ることを突き止めた。今回の成果は、これ
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科学をめぐるさまざまな不正が相次ぐなか、研究倫理プログラムの基軸となる待望の本がまとまった。日本学術振興会﹁科学の健全な発展のために﹂編集委員会(委員長・浅島誠東京大学名誉教授)が作成し、その暫定版を11月28日に公表した。実験ノートの付け方や、研究費の適正な使い方などのエッセンスを書いており、科学者が心得ておくべき基本を示した。規定集とは異なる﹁研究のバイブル﹂のような内容である。来年3月には、研究現場で活用できるよう出版する。また、英語版も出して、研究不正を繰り返さない姿勢を世界に発信する。 編集委員会は、研究倫理の専門家や法学者らも含め13人が加わり、日本学術会議や科学技術振興機構、各大学の有識者らが協力し、文部科学省が助言した。海外での共同シンポジウムの議論や各国の取り組みも参考にした。日本のアカデミアが挙げて作成した形になった。﹁科学の発展には研究の自由が大切﹂の視点を貫きつつ、
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