宇野常寛﹃ゼロ年代の想像力﹄︵早川書房、2008年︶を読んで私が感じた最大の不満は、同著が90年代後半以降のサブカルチャー作品を多数採り上げ、漫画﹃DEATH NOTE﹄を新時代の﹁決断主義﹂を象徴的に描いた作品として詳しく取り扱いながら、同時期に漫画界のトップランナーであり続けた作品であり、﹃DEATH NOTE﹄と同じ﹃週刊少年ジャンプ﹄に連載されている﹃ONE PIECE﹄への言及を全くと言っていいほど含んでいないことであった。 当ブログではこれまで﹃DEATH NOTE﹄と﹃20世紀少年﹄を採り上げ、ともに正義にまつわる問題との関連で論じたことがある。両作品を比すと、前者よりも後者の方が思想的な重要性が大きく、内容もより複雑であったが、﹃ONE PIECE﹄は内容において両作品よりも遥かに明快でありながら、思想的には最も尖鋭な領域にまで踏み込んでおり、三作の中で最重要の作品と言って