ヤバい思想、と言われると皆さんが思い浮かべるのはなんでしょうか。ファシズムや全体主義?差別主義?優性思想?それとも宗教的原理主義? この世に数多ある危険思想のなかで、ユダヤ人哲学者・思想家のハンナ・アーレントが最も重大視したのは﹁無思想﹂でした。 無思想、ノンポリ、無宗教…という﹁無属性﹂なステータスを自認していることは私たちの国では取り立てて珍しいものではありません。実際、多くの人は自分は﹁偏った考え方﹂に染まっておらず、﹁普通の感覚を持った/普通の日本人﹂であるというふうに考えています。よく異文化から揶揄されるように私たちは、﹁他の人と違う﹂ことに漠然とした恐怖を持っており、﹁普通であること﹂、そして﹁特定の立場や意見を主張しないこと﹂によって他の人たちとの温かい連帯関係の中に存在できます。 しかし実のところ、この﹁自分は普通の感覚を持っている﹂という自認こそが危険な状態だ、というのが