落語家が人間国宝になったら、払うのは入場料ではなく拝観料──。かつて、五代目柳家小さんが人間国宝になったとき、そんな冗談が言われていた。 いわゆる人間国宝とは、重要無形文化財の保持者として各個認定された者をいう。あくまで﹁わざ﹂そのものが文化財であり、そのわざを体現できる者を人間国宝と呼ぶ。 古典落語の人間国宝が少ないことは以前より指摘されてきた。表の通り、同じ芸能分野の歌舞伎と比較しても差は歴然だ。文化財政策に詳しいある文化庁職員は、その理由を次のように説明する。 まず、落語はわざの細分化が難しい。歌舞伎の場合、立役、女方など、役柄で分類ができ、流派によっても異なるわざとして説明可能。そのため、同じ歌舞伎という種別でも数多くの認定ができるのだ。一方落語は、せいぜい江戸落語と上方落語の二つ。対象となる分類自体が少ない。 また、落語の歴史も背景にある。人間国宝の認定が始まった1950年代、落
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