昨年、十二月二十一日のことである。 森見登美彦氏は、万城目学氏と、ヨーロッパ企画の上田誠氏との忘年会に参加した。年末の京都に清らかなおっさんたちが集う忘年会も、すでに六回目を数える。 ﹁六回目といえば﹂ ということで、万城目氏が新作﹃八月の御所グラウンド﹄で六回目の直木賞候補になっているという話になった。 しかし万城目氏の顔つきは暗かった。 ﹁どうせあかんねん﹂ ﹁待ち会はしないんですか?﹂ ﹁そんなもんせえへんわ。いつもどおりにしてる﹂ それはいかん、と登美彦氏は思った。度重なる落選にウンザリする気持ちはよく分かるが、直木賞はようするに﹁お祭り﹂なのであって、盛りあがらなければ損である。﹁待ち会﹂は落ちてからが本番なのだ。落選したってええじゃないか! ﹁何をいじけてるんです。待ち会やりましょう!﹂ ﹁なんでやねん!﹂ ﹁やるなら東京まで行きますって﹂ ﹁あ、それなら僕も行きます﹂と上田氏
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