確認しておきたいが、︿一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安﹀を示したのは日本国政府だ。寡聞にして国民の中から澎湃として﹁漢字の混乱が極まっているので標準を示してくれ﹂との声が沸き上がった、などという話は聞いたことがない。つまり言い出したのは日本国政府の側のはずだ。 制限でも目安でもどちらでもいい。そんなのは、きついか緩いかの差にすぎない。要するにこれは、国民一般が生活の中で使う字種・音訓・字体の範囲をさだめたものと理解している。同時に﹁公文書作成の要領﹂︵1952年︶により、日本国政府は公文書を常用漢字表にもとづき作成すると、自分で決めたはずだ。 時あたかも﹁﹁新常用漢字表︵仮称︶﹂に関する試案﹂のパブリックコメント募集が開始されているが、ここでも︿コミュニケーションの手段としての漢字使用﹀が高々と謳い上げられている。そのうえで191字を増やしたいとのご意向だ。