ブックマーク / book.asahi.com (3)
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第128回文學界新人賞 受賞作品﹁ハンチバック﹂ 親が遺したグループホームで裕福に暮らす重度障害者の井沢釈華。Webライター・Buddhaとして風俗体験記を書いては、その収益を恵まれない家庭へ寄付し、Twitterの裏垢では﹁普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢﹂と吐きだす。ある日、ヘルパーの田中に裏垢を特定された釈華は、1億5500万円で彼との性交によって妊娠する契約を結ぶ――。 療養生活という名の引きこもり 取材は市川さんが両親と暮らす自宅で行われた。お母さんに案内された部屋で、市川さんと目が合った瞬間、その射貫くような眼差しに気圧された。市川さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病により、人工呼吸器を使用しているため、発話に大変な体力を使い、リスクもある。そのため取材も、あらかじめメールで回答をもらい、補足のみ、最小限お話いただく形をとった。 目力の強さはそれが市川さ
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﹁ウォー・ギルト・︵インフォメーション・︶プログラム﹂という言葉が保守論壇で流行している。第2次世界大戦後の占領軍の計画で、日本人は洗脳され、自虐史観に塗り替えられたというのだ。その全体像を膨大な史料から探った著作が公刊された。本当に日本人は洗脳されたのか。研究の結果から著者は﹁洗脳されたとは思えない﹂という。 ﹁体系的な施策ではなかった﹂ 著作は﹃ウォー・ギルト・プログラム――GHQ情報教育政策の実像﹄︵法政大学出版局︶。著者は賀茂道子・名城大学非常勤講師︵日本政治外交史︶だ。 この言葉は、文芸評論家の故・江藤淳氏が1989年の﹃閉︵とざ︶された言語空間﹄︵現在は文春文庫︶で紹介した。GHQ︵連合国軍総司令部︶の文書から見つけた江藤氏は、﹁ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム﹂と表記した。現在の保守論壇はWGIPと略す。 ◇ 代表的な施策が二つあったとされる。GHQの一部門CI
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■どんな場合に使えないのか 統計は今、何度目かのブームにある。﹁最強﹂と謳︵うた︶う本が30万部も売れ、一般の人向けのセミナーも好評のようだ。私も大学では1・2年生向けの統計を担当しているが、4、5年前から学生の数が急増して、教室と教員の手当てに毎年汗をかく。 ﹁統計﹂の2文字には神秘的な魔力があるらしい。よく知らない人も、いやむしろ知らない人ほど変に持ち上げたりする。 ■ブームの切実さ しかし、今回のブームはもっと切実な中身があるようだ。今の私たちは、良い意味でも悪い意味でも、リスクとつきあって生きていかざるをえない。この数年で、そのことを痛いくらい経験させられた。 金融や市場の開拓だけでない。例えば﹁原発は絶対安全だ﹂と信じようとしたり、﹁減災よりも防災、防災よりも地震予知﹂と、リスクをリスクとして見ないようにしてきた。それがかえって大きな被害をうむことがある、と気づかされたのだ。そう
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