先日、緊急事態宣言が延長されるにあたって専門家会議から「新しい生活様式」に関する提言が出ました。 新しい生活様式の実践例(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月4日)より)個人的に驚いたのは「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」と書かれていたことです。 筆者も「症状がない人もマスクをつけるべきか?」で無症状でもマスクを着用することの意義を解説しましたが、専門家会議もかなり思い切った提言を出したと感じました(なおWHOは今も「マスク着用は有症状者のみ」と推奨しています)。 前回に引き続き無症状であってもマスクを着用する意義について、もう少し踏み込んで書きたいと思います。 新型コロナの感染性のピークは「発症2日前」前回からの繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染症は発症前から感染性がありま
新型コロナは発症の2~3日前に感染性のピークがあることが明らかになってきています。 これらのデータを踏まえて、無症状者であってもマスクをつけた方が良いのでしょうか? 濃厚接触者の定義が変更に先日濃厚接触者の定義が変わったことがニュースになりました。 「発症2日前」「1メートル内」「15分以上」=濃厚接触者の定義変更―感染研 これまで濃厚接触者の対象が「発症日以降」だったのが「発症2日前」に変更になっています。 ある人が新型コロナウイルス感染症と診断された場合に「その人が発症した日からさかのぼって2日前までに、目安として1m以内にマスクなしで15分以上会話をするなどの接触をした人」が濃厚接触者と定義されます。 これはつまり、新型コロナは発症する前から人に感染させうることを意味します。 発症前から人にうつすとはどういうことなのか「8割おじさん」こと北海道大学 西浦博先生は、新型コロナの流行早期
楽天よりPCR検査キットが販売開始となりました。 このキットを用いることで、病院を受診することなくPCR検査が施行可能とのことです。 しかし、PCR検査は医療従事者によって正しい方法で検体を採取し、正しく結果を解釈せねばなりません。 筆者は感染症専門医ですが、一般の方がこのPCR検査キットを使用することは推奨しません。 楽天から販売されているPCR検査キットとは4月20日より楽天でPCR検査キットが販売開始になっています。 新型コロナウイルスPCR検査キット COVID-19 PCR 「本検査キットは、ジェネシスヘルスケア株式会社が開発し、楽天株式会社が法人窓口となりサービスを提供しています。」とのことです。 4月21日21時時点でホームページには「現在、大変多くのお申込みをいただいており、順次ご対応をさせていただいております。ご回答にお時間がかかる場合がございますが、何卒ご容赦いただきま
この記事は2020年4月の情報に基づいたものです。 重症化リスクに関する最新の記事はこちらをご参照ください。 新型コロナに感染した人のうち、特にどのような人が重症化しやすいのかが徐々に分かってきました。これまでに分かっている、重症化のリスクについてまとめました。 新型コロナウイルス感染症の典型的な経過新型コロナウイルス感染症の典型的な経過(筆者作成)新型コロナウイルスに感染すると、8割の人は風邪症状がダラダラと続きますが自然に良くなり、2割の人が肺炎症状が重症化して入院が必要となり、そして約5%の人が集中治療を必要とするほど重症になると言われています。 しかし、全ての人がこの確率で重症化するわけではなく、特定の重症化リスク因子を持つ人は、持たない人に比べて重症化しやすいことが分かっています。 年齢が最大の重症化因子中国、イタリアでの年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の致死率新型コロナウイ
(提供:Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAM/CDC/ロイター/アフロ) コロナウイルスとは?コロナウイルスによる感染症の種類と比較(国立感染症研究所「コロナウイルスとは」を参考に筆者作成)これまでにヒトに感染するコロナウイルスは4種類知られており、かぜの原因の10〜15%を占める原因ウイルスとして知られていました。 またイヌやネコ、ブタなど動物に感染するコロナウイルスも存在します。 2002年中国広東省に端を発したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、コウモリ(あるいはハクビシン)のコロナウイルスがヒトに感染し、ヒト-ヒト感染を起こすことで8000人を超える感染者を出しました。 また2012年には中東でMERS(中東呼吸器症候群)が報告され、ヒトコブラクダからヒトに感染する感染症であることが分かりました。 そして2019年12月末から中国の湖北省武漢市で発
4月7日に安倍内閣総理大臣から緊急事態宣言が出されました。 私たちは今まさにオーバーシュートの瀬戸際にいます。 この緊急事態宣言を受けて私たちにできることは何でしょうか? 国内、特に都市部で症例が増加している累積感染者数の国別推移(「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日))この図を見ると、これまで日本では新型コロナの症例数の増加はある程度抑えられていたように見えます。 少なくともオーバーシュートを起こしているイタリア、スペイン、アメリカなどと比べるとこれまで日本は「4日で患者数が倍増」という状況ではなかったと言えます。 日本国内の新型コロナ患者の日別増加数(都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ(ジャッグジャパン株式会社提供))しかし、日本国内でもいよいよ患者数が急激に増加してきています。 特に3月下旬からは増加が著しく、東京、大阪、神奈川、千葉、愛知、
2020年4月1日の専門家会議で「医療崩壊といわれる現象は、オーバーシュートが起こる前に起きる」ということが強調されました。 新型コロナウイルスの対策を検討する政府の専門家会議は1日、「都市部を中心に感染者が急増している」との現状分析を公表した。患者の爆発的増加「オーバーシュート」は見られないが、特に東京都や大阪府で患者が増え、感染源が分からない例も増加していると指摘。東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5都府県は医療提供体制が既に切迫しているとして、抜本的な対策を講じるよう求めた。 出典:新型コロナ感染爆発前に医療崩壊も 5都府県で体制切迫―早急対策要求・専門家会議 筆者は都内の感染症指定医療機関に感染症専門医として勤務していますが、新型コロナの流行が始まってからというもの現場の医療従事者には大きな負荷がかかり続けており皆疲弊しています。 筆者は先週、「都内の感染症指定医療機関で何が起こって
先週、私のトラベルクリニックの外来にもアメリカ赴任前にBCGワクチンを接種したいという受診者が訪れました。 BCGワクチンが新型コロナの予防に有効ではないか、という話を聞いて受診したそうです。 果たして本当にBCGワクチンは新型コロナの予防に有効なのでしょうか? BCGを定期接種している国では新型コロナ感染者と死亡者が少ない?medRxivという査読前の論文を掲載するサイトに、BCGワクチンを定期接種にしている国と、新型コロナの症例数と死亡数が少ない国との間に相関関係が見られる、という論文が掲載されました。 Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study BCGワクチン定期接種と各国の
感染症指定医療機関という最前線で治療に当たる専門医は今、どんな風景を見ているのか。忽那さんにお話を伺った。 ※インタビューは4月3日夜に行われ、その時点の情報に基づいている。 回復者の血液を取って患者に投与する臨床試験を開始ーー新型コロナウイルスの治療法がない中、国際医療研究センターでは、レムデシビルという抗ウイルス薬の臨床試験が始まっていますが、また新しい治療法の試験に取りかかるそうですね。 回復者の血液を採って、その血しょうを患者に投与する「回復者血しょう投与」を今月中にも始める予定です。 輸血のような形で献血をしていただいて、血しょうをそのまま患者に投与することで、血しょうの中に含まれる抗体が患者の体内のウイルスをやっつけるという治療法です。かなり原始的な理論ですが、期待できそうです。 中国で5例報告が出ており、5例とも劇的に回復しています。まだ5例に過ぎませんが、理論的には効くはず
国内でも、経路のわからない感染が増え続け、感染者が爆発的に増加する「オーバーシュート」が懸念される現在。わたしたち国民にも、政府やメディアからの情報を適切に受け取り、冷静に理解し、賢明な行動をすることが求められている。 新型コロナウイルス感染症に関して、政府やメディアの出している情報は適切なのか、感染症専門医に話を聞いた。協力いただいたのは、第一線で新型コロナウイルス感染者の治療に携わっている、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医師だ。(前後編の後編/前編を読む) ※インタビューは3月21日(日)に行われました。掲載時の情報は25日(木)のものです。 ◆◆◆ 感染症専門医が警鐘を鳴らす、不正確な報道 ──先生は、ヤフー個人などのメディアでも精力的に発信されていますね。そのモチベーションは、どこからくるのでしょうか。 忽那医師(以下、忽那)メディアは、今回の新型コロナウイル
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省や首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。 2020年3月8日 国立国際医療研究センター 国際感染症センター 忽那賢志 感染症総合情報誌J-IDEOでは、本誌号外として国立国際医療研究センターの忽那賢志先生による「総説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を先行公開致します。忽那先生に現時点における最新知見をまとめて頂きました。 【3月10日更新】 本文中および文献リストの文献番号をクリックすることで、PubMed等の原著論文情報にアクセス出来るようになりました(一部文献は非対応)。 ポイント ・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はSARS-CoV-2による呼吸器感
1月28日、奈良県で海外渡航歴のない新型コロナウイルス感染症の症例が厚生労働省より発表されました。 この症例の発生の持つ意味を感染症医の視点で分析しました。 厚生労働省より発表された情報は以下の通りです。 概要 (1)年代: 60代 (2)性別: 男性 (3)居住地: 奈良県 (4)症状、経過: 1月14日 悪寒、咳、関節痛あり。 1月17日に奈良県内の医療機関を受診し、各種検査異常なく経過観察。保健所に連絡。 1月22日関節痛あり、咳症状増悪。 1月25日に再度受診し、医療機関から保健所に相談し、胸部レントゲン検査により両側下肺野に所見を認めたため、調整の上、奈良県内の医療機関に入院。 1月26日に検体を送付。 (5)行動歴: 1月8-11日に武漢からのツアー客を、運転手としてバスに乗せた。 1月12-16日に別の武漢からのツアー客を、運転手としてバスに乗せた。 出典:厚生労働省. 新型
この数日で一気に学術誌に新型コロナウイルス感染症に関する論文が掲載され始めました。 感染症のアウトブレイクの際の論文化のスピードは年々早くなっていますが、ついにここまで来たかと思うほどのスピードとクオリティです。 その中で臨床症状について詳細が記載されたものがありました。 これまでに明らかになっていなかった情報もいくつかありますのでご紹介します。 やや専門的な内容も含まれますが、できるだけ分かりやすく記載しました。 患者の特徴 2020年1月2日までに新型コロナウイルス感染症と診断された41人に関して、 ・73%が男性 ・32%が何らかの持病がある(糖尿病20%、高血圧15%、心血管疾患15%など) ・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲 41-58歳) ・66%に華南海鮮市場への何らかの接触があった ・41人全員に肺炎あり ・合併症として急性呼吸促迫症候群29%、ウイルス血症15%、急性
''最新情報はこちらに整理しています''' {{{: 新型コロナウイルス感染症の現状と評価(2020年1月21日現在)}}} 以下は1月4日以降アップデートされていない情報ですのでご注意ください! ----- 中国の武漢で原因不明のウイルス性肺炎の報道中国の湖北省武漢市で原因不明のウイルス性肺炎による患者が発生しているニュースが連日流れています。 中国で原因不明の肺炎患者相次ぐ 武漢で27人発症、政府が調査(2019/12/31 ) 中国で謎の肺炎拡大、患者44人に SARS懸念する声も(2020/1/3) これまでの情報を整理しますと、 ・1月3日の時点で症例は44例、そのうち11例が重症で残りの患者の状態は落ち着いている ・症状は発熱、呼吸困難などで、胸部レントゲン上両側の肺炎像がみられる患者もいる ・ウイルス分離やPCR(遺伝子検査)でインフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス
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