そもそも最中には初め、あんこは入っていませんでした。 皮の部分だけで、煎餅のような餅菓子として食べられていたのです。 あんこを挟むようになったのは、江戸時代以降のことです。 “モナカ”という言葉が出てくる最も古い文献として現在確認されているものが、平安時代の﹁拾遺和歌集︵しゅういわかしゅう︶﹂です。 この中で、源順︵みなもとのしたごう︶という歌人がこんな句を詠んでいます。 水の面に 照る月なみを かぞふれば 今宵ぞ秋の 最中なりける みのおもに てるつきなみを かずふれば こよいぞあきの もなかなりける 宮中で開催された月見の宴で、丸くて白い餅菓子︵※煎餅のようなもの︶が出され、それを見た公家たちが、﹁もなかの月﹂と名付けたと伝えられています。 ﹁最中の月﹂とは、まさに真ん中の月、つまり﹁十五夜の月﹂のことを言っています。 時は流れ、江戸時代中期。 江戸吉原の煎餅屋﹁竹村伊勢﹂が、もち粉を