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そんなことよりも作品にもっと向き合って 「特定班」という言葉があって、これはインターネット上のわずかな情報を頼りに(ときにそれは誤った情報であることもある)、ターゲットにした人物の個人名や住所などの個人情報を特定することに熱中する人々を指します(英語だと「Internet Sleuths」になるかな)。その対象とされる人物は、何かしらの事件などの犯罪を起こした人や、ネット上で炎上したような人だったりします。 もちろん事件性があるゆえに法的な手段に則って警察が捜査の一環で個人情報を特定するのは構いませんし、一般人でも正当なジャーナリズムの範囲内であったり、または法的に訴えるための情報収集として弁護士などの指示のもので行う場合も、それ自体は問題ありません。 問題になるのは、各個人がゲーム感覚で面白半分にこうした行為に手を染める場合です。特定した内容が正確だったかにかぎらず、適切な手順なしでそん
コンビ名はGKです!…映画『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:Godzilla x Kong: The New Empire 製作国:アメリカ(2024年) 日本公開日:2024年4月26日 監督:アダム・ウィンガード
「ニューロダイバージェント」とは? まず「ニューロダイバージェント」という言葉の意味を説明しないといけません。 簡単に羅列して言うと、自閉スペクトラム症(自閉症)、ADHD(注意欠如・多動症)、ディスレクシア、トゥレット症候群、運動障害、共感覚、算数障害、ダウン症候群、てんかん、双極性障害、強迫性障害、境界性パーソナリティ障害、不安症、うつ病などの慢性精神疾患が含まれます(Verywell Mind)。 要するに、脳(神経)に関わってくるいろいろな病気や障害です。これまでは「精神疾患」や「発達障害」などとまとめて呼ばれてきました。 しかし、これらに該当する人たちを雑に病理化するのでは偏見が残るだけだとして、違う言葉で包括的に表現する模索が当事者主導で行われてきました。 例えば、「非定型発達」という用語があります。「非」がついていることから推察できるとおり「定型発達(ニューロタイピカル;ne
MY PRIDE IS POLITICAL 2024年4月19日から21日にかけて「東京レインボープライド」が開催されます。LGBTQ+アジア最大級イベントを謳うこの場には大勢のセクシュアル・マイノリティ当事者が集い、多数のブースも並び、プライド・フラッグを掲げて行進も行われます。 しかし、そんな「東京レインボープライド」自体に抗議するLGBTQ当事者もいます。なぜでしょうか。 その抗議の理由のひとつとしてよく挙げられるのが「イスラエル」の関与です(ハフポスト)。「東京レインボープライド」には以前から駐日イスラエル大使館が参加し、ブースもだしています(実際の様子は駐日イスラエル大使館のウェブサイトでも紹介されています)。 ではイスラエルがいるだけでどうして問題になるのか。 それは「ピンクウォッシング(ピンクウォッシュ)」だからです。 英語では「pinkwashing」といいますが、まずこの
「オンライン・ハラスメント」とは、インターネットやウェブサービス上で起きるイジメや嫌がらせのことで、英語では「cyberbullying」「cyberharassment」「online bullying」と呼んだりもします。 LGBTQの当事者はオンライン・ハラスメントの被害を受けやすく、泣き寝入りする人も多いことが報告されています(The Advocate)。ひとりで悩みを抱え込む人も少なくないでしょう。 私もオンライン・ハラスメントの被害を受けたことがありますが、被害者になってしまうと不安が増し、より脆弱となり、状況が悪循環に陥りやすいです。 そこで少し冷静になれるように、オンライン・ハラスメントに関する手口の特徴と対処を整理しました。ひととおりLGBTQ向けにまとめていますが、LGBTQ関係なく全般的に該当する事項もあります。 被害者として自覚できるように、または加害者にならないた
「トランスジェンダー」や「ノンバイナリー」など、性同一性(ジェンダー・アイデンティティ)が保守的な社会規範と異なるマイノリティの人たちは、残念なことに日常的に偏見や差別に晒されており、それは暴力や殺人に繋がることがあります。 「National Center for Transgender Equality’s(NCTE)」の2022年11月から1年間を対象にしたアメリカのレポートによれば、暴力による死亡が53人、自殺によって亡くなった人は32人となっています(The Guardian)。「Trans Murder Monitoring」によれば、2022年10月1日から2023年9月30日までに、世界で320人のトランスジェンダーおよびジェンダーダイバースな人々が殺害されたと報告されています(Transgender Europe)。 しかし、これは過小評価とみられ、正確な数字の把握は難し
好きですよね?…映画『アメリカン・フィクション』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:American Fiction 製作国:アメリカ(2023年) 日本では劇場未公開:2024年にAmazonで配信 監督:コード・ジェファーソン 人種差別描写 恋愛描写
今回は、何かと反LGBTQや反トランスジェンダーの界隈で話題に持ち上がりやすい「動物を自認する人」について整理しています。 ※この記事は私が個人用に整理していたメモを多少構成を変えて修正して公開するものです。一部内容の専門的な正確さは掲載している出典に依存します(参考文献リストは最下部に記載)。随時、内容を更新することがあります。 LGBTQは「動物を自認する人間」を生み出す!? 「ジェンダー・アイデンティティ(gender identity)」という言葉があります。日本語では「性同一性」や「性自認」と翻訳されたりもします。 ジェンダー・アイデンティティというのは、出生時に割り当てられた性別や、ジェンダー・ロールとして社会が押し付ける性別らしさは一旦に脇に置いて、「私の性別のアイデンティティはこうなのではないか?」と体感に基づいて自分で熟考し辿り着いた「性別/ジェンダー」のことです。 多く
嘘はバレる。オチはバレない…ドラマシリーズ『ポーカー・フェイス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:Poker Face 製作国:アメリカ(2023年) シーズン1:2024年にU-NEXTで配信(日本) 原案:ライアン・ジョンソン 動物虐待描写(ペット) DV-家庭内暴力-描写 交通事故描写(車) 恋愛描写
今や陰謀論やデマが大量に氾濫し、インターネット上でも酷いことになっています。そうした陰謀論やデマが差別の扇動に使われることも頻繁にあります。 その情報が「陰謀論やデマ」かどうかの判断基準において、よく「科学的」という言葉が持ち出されます。「これは科学的だから正しい」とか「それは科学的と言えないから正しくない」とか…。確かに「科学」は情報の適正さの判断のひとつの目安になるかもしれません。 しかし、そう迂闊に考えてもいられない現状があります。 そこで無視できない用語となってくるのが「ジャンクサイエンス」という概念です。知っていますか? 科学者でも、一般の人でも、もはや「ジャンクサイエンス」を理解せずにこの情報の大氾濫時代を過ごすことはできません。身近な概念であり、知らなくても生活に接してきます。 今回はこの「ジャンクサイエンス」について整理しています。 ※この記事は私が個人用に整理していたメモ
2023年は「サカバンバスピス」から「トコジラミ」、「バーベンハイマー」まで、さまざまなインターネット・ミームが世間を賑わしました。 2024年も始まって早々にさっそく強烈なインターネット・ミームが登場しています。 ここでは日本ではそれほど有名ではない海外のインターネット・ミームをピックアップして紹介しています。 今回、取り上げるのは「五条悟タンポン事変」です。 この記事には、一部のファンにとっては不快と感じかねない「作品やキャラクターの扱い」に関するセンシティブな内容が含まれています。ご注意ください。 『呪術廻戦』とは? まず『呪術廻戦』の話から始めないといけません。もう知っている人は読み飛ばして構いませんが、知らない人はこれを機にぜひ。 『呪術廻戦』は“芥見下々”による日本の漫画で、2018年から「週刊少年ジャンプ」で本格的に連載が開始されました。 物語は、架空の日本を舞台に、人間の負
2023年に映画に舞い戻った「カラーパープル」 ハリウッドではリメイクやリブートは毎年のように何作も製作され観られます。中には「これ、リメイクする必要ある?」という映画もあります。正直、大手映画企業が自社の有するIP(知的財産)を更新したいだけなんだろうなという下心も透けて見えますが…。 ただ、このタイトルはリメイクされる意義が本当に大きい一作になるだろうなと思います。ほんと、いろいろあったから…。 それが2023年にアメリカで公開された本作『カラーパープル』です。 本作はアフリカ系アメリカ人の著名な作家にしてフェミニストとしても活動実績のある“アリス・ウォーカー”が1982年に執筆した「The Color Purple」を原作としていますが、この小説は“スティーヴン・スピルバーグ”監督によって1985年に『カラーパープル』として映画化されました。 この1985年の『カラーパープル』はアカ
キャサリン・クリンチ、堂々のデビュー作 「場面緘黙(ばめんかんもく)」という言葉を知っていますか? 以前は「選択性緘黙」という用語も使われていたのですが、最近は使用されない傾向にあります(精神神経学雑誌)。 これはたいていは子どもが発症する精神疾患のひとつで「特定の対人的状況(典型的には家庭)では十分な言語能力を発揮するが、他の対人的状況(典型的には学校)では一貫して言葉を話さない」という状態が継続するものです。 そんな精神疾患があるのかと初めて知った人もいると思いますが、実のところ私は子どものとき、この「場面緘黙」を経験しており、がっつりその当事者でした。 勘違いされやすいですが、言語発声能力がないわけではありません。わざと喋ろうとしないわけでもありません。なんというか上手く言葉にできませんが、沈黙の魔法にでもかかったように言葉を発することができません。躊躇なのか圧力を感じているのか、そ
ヨルゴス・ランティモス、どこまでいく? さっそくタイトルから入りましょう。 今回紹介する映画は、私が「2023年の映画ベスト10」の第1位に選んだ作品。アメリカでは2023年12月に一般公開で、日本では2024年1月26日に公開でしたが、東京国際映画祭で一足先にお披露目され、それよりもっと前のヴェネツィア国際映画祭ではコンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞しました。 それが本作『哀れなるものたち』です。原題は「Poor Things」。 開口一番で話題にしたいのが本作の監督。ええ、この人です。“ヨルゴス・ランティモス”…(ラスボス風の響きで)。私、たぶん、“ヨルゴス・ランティモス”のこと好きなんだろうな…(突然の乙女ゲーム的な告白の呟き)。 「天才」なのか、「奇才」なのか、「変態」なのか、それはわかりません。でもとにかくヘンテコなクリエイターです。 このギリシャ出身の監督の作る映画は
私はまだなんとか頑張ってます… 2023年も終わり。 今年も映画をいろいろ観ました。ストライキしながら鑑賞するのです。 ということで、私、シネマンドレイクが選んだ2023年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2023年に劇場公開された or 配信スルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です。 さらにドラマシリーズのベスト10も発表しています。 ついでに独自の部門別でも選びました。 私が2023年に鑑賞した新作映画の本数は配信も含めると…と、ここでいつもなら視聴作品数をざっくり書くところなのですが、私は今年夏ごろから体調を大幅に悪化させてしまいまして…。例年よりもかなり鑑賞数が少なくなってしまいました。こちらの感想サイトの更新はなんとか継続はしていたのですが…。 バービーみたいに不健康とは無縁の身体になりたい…。 今回はそんな私の2023年のベ
独りは寂しい? むしろ歓迎? 12月って師走というわりには、忘年会とか、クリスマスとか、年末から正月とか、やたらと複数で集まることが多いイベントが並んでいます。何も最後の月にこんなイベントを偏らせなくていいのに…。ひとりでゆっくりすることを好む人間にはちょっとツラい時期だなと毎回思ってるんですが…。 中には「孤独は嫌だ! 自分はあの大勢に囲まれて過ごしたい!」と感情を煮えたぎらせる人もいるかもしれません。いわゆる「モノフォビア(Monophobia)」ってやつですね。独りになることに極端な恐怖や不安を感じ、孤立を避けるためにあらゆる手段を講じようとしてしまったり…。 今回紹介する映画はそんな心境に陥りやすい人にはツラい作品…になるかな? それが本作『Saltburn』です。 この原題そのままが邦題らしいです。「ソルトバーン」じゃないんですね。日本では劇場未公開で「Amazonプライムビデオ
私的制裁は惨劇を生む 2023年11月、日本でネットを騒がせていた「私人逮捕系YouTuber」が逮捕されました(朝日新聞)。 私人逮捕などと当人は主張していますが、実際にやっていることは一方的な暴行やストーキングのような行為で、注目を集めて自己中心的な私利私欲を満たすことしか考えておらず、極めて悪質です。無論、そこには公正さも倫理観も欠片もありません。 こういう「私人逮捕だ!」と図に乗る人は基本的に「自分よりも弱い相手」を選別してターゲットにします。暴力団事務所に乗り込んだりはしません。何が弱者かを理解したうえで、どうせろくに反撃もできないだろうと余裕でいられる相手を狙った意図的な攻撃です。用意周到に練られた加害行為です。 こんな事件をお騒がせニュースのネタとして消費しているだけな日本社会ですが、これは些細な話では済みません。なぜなら歴史的に私的制裁というものは差別や迫害と密接に関わる行
対物性愛の世界 「対物性愛」という言葉を知っていますか? 「オブジェクト・セクシュアリティ」や「オブジェクトフィリア」とも呼ばれたりしています。 世の中には性的指向があり、異性愛や同性愛、両性愛、無性愛(アセクシュアル)などがありますが、これらは基本的に人間を相手にする前提の概念です。こうした「対人」ではなく「対物」を前提とするのが対物性愛で、対物性愛者はモノ(object)に対して性的もしくは恋愛的に惹かれています(性愛や恋愛ではなく他の強い感情的結びつきの場合もあり、実際は当事者それぞれです)。 靴や水などに性的興奮を感じるのは従来からフェティシズムとして扱われてきましたが、対物性愛はそうしたフェティシズムとは別の立ち位置・歴史的経緯でアイデンティティ化したものと言えます。 対物性愛という言葉は1970年代に当事者によって作られた造語であり、1990年代以降にはインターネット上でのコミ
それはこれからわかる…映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:Killers of the Flower Moon 製作国:アメリカ(2023年) 日本公開日:2023年10月20日 監督:マーティン・スコセッシ 人種差別描写 恋愛描写
和風「シンデレラ・ストーリー」 親や家庭が子どもの人生を抑圧して縛り上げ支配する…そんなことは昔の慣習のように思えますが、今もそんな状況はあちこちにあるようです。 とくにここ最近は「親の権利(parental rights)」なるものを主張する大人が出現しています。 近年急速に湧いている「親の権利」支持者の源流にあるのは、もともとは「反ワクチン」で、たとえ子ども自身が健康のためにワクチンを打つことを望んでいようとも、反ワクチンの親がそうさせないという問題があり、その反ワクチンの親が「子どもにワクチンを打たせないのは親の権利だ!」と言い切っているわけです。コロナ禍が収束し始めるとターゲットを変え、今度はLGBTQや人種差別歴史教育に反発するようになり、「子どもにLGBTQを教えたくない! これは親の権利です!」と学校教育に介入することで、今、アメリカでは大問題になっています(Xtra Mag
ケネス・ブラナーのポアロ映画第3弾…映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
LGBTQ(セクシュアル・マイノリティ)は映画にはどれくらい描かれてきたのか? それに関心がある人にとって、必見のレポートが毎年公開されています。「GLAAD」による「Studio Responsibility Index(SRI)」です。 しかし、英語で公表されている90ページ近い大ボリュームのレポートで、かつ日本のメディアはあまり報道しないので、映画ファンの間でも認知度は低いです。 そこで今回はこの「GLAAD」による「Studio Responsibility Index」について、2022年の概要を日本語で私なりにまとめて紹介することにします。あくまで概要なので詳細は実際の「Studio Responsibility Index」を確認してください(ネット上で公表されています)。 「GLAAD」とは? まず「GLAAD」が何なのか知らない人のために簡単に説明します。 「GLAAD」
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