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前作「風立ちぬ」から10年の時を経て、宮崎駿監督の12本目の劇場用長編映画、「君たちはどう生きるか」が封切られた。内容を事前に明かさないという、大胆な広報戦略で世間を驚かせたが、公開から4日間で観客動員135万人、興行収入21.4億円を記録するなど、好調な成績を示している。 本作に対する批評として多数派を占めるのは、その物語が難解であるということだ。ほとんど場合、それは批判的に語られている。本作を評価する者であっても、物語そのものよりも、それを構成する個別の表現手法に焦点を定めるものがほとんどである。 しかし、あえてこう言いたい。本作の最大の魅力は、何よりもまず物語にある。たしかにそれは混沌としている。だがその混沌こそが、その物語を成り立たせているのだ。それを味わうことなく、安易に非難したり絶賛したりすることは、もったない。 このような観点からこの記事では、本作の物語を読み解きつつ、それに
「アクセシビリティ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。身近な例としては、スマートフォンの設定にある「アクセシビリティ」の項目があるだろう。ただ、多くの人にとってそれはおまけの機能に過ぎず、自分とは関係のないものだと思っているかもしれない。 しかし、高齢者や障害者などの当事者にとっては必要な情報にアクセスするために不可欠な機能であり、アクセシビリティは死活問題や人権問題とも言える重要な問題になり得る。そのため、ウェブ業界ではWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)というガイドラインがある。 ただし、その項目は膨大で目を通すのも一苦労という代物。重要な問題にもかかわらず取り組みづらいというのが、ウェブにおけるアクセシビリティの現状だ。 アクセシビリティという人権問題に挑む「LIFULLアクセシビリティガイドライン」 この現状を打破すべく、株式会社LI
1995年のテレビアニメ放映以降、日本カルチャー史に鮮烈な印象と議論を与え続けてきたエヴァンゲリオン。2007年に始まったリメイク「新劇場版」の第3作「Q」から9年、ついにシリーズ完結作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が公開された。 テレビアニメ〜旧劇場版の「旧シリーズ」、そして今回完結した「新劇場版」の両者で物語の軸になっていたのが「自己」と「他者」。この描かれ方はリメイクを通してどのように変わったのか? 原子力からポップカルチャーまで広大なテーマを扱う気鋭の哲学者・戸谷洋志が「責任」をキーワードにその変化と意味を論じる。 2021年3月『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(以下、「シンエヴァ」)が公開され、大きな話題を集めている。四半世紀にわたるエヴァンゲリオン・シリーズの完結編である本作は、公開初日の興行収入は8億277万4200円、観客動員数53万9623人を記録した。 作
UNLEASH×ANONによるSFプロトタイピング特集第二回。今回は、SF研究者・分析美学者であり、最近は座談会「SFプロトタイピング未来学会議」を企画した【難波優輝氏】に寄稿いただいた。「SFは未来なんか知らない」、ただ「多岐する世界を言いまくる」のだと喝破するアツい論考を、心してお読みいただき、あなたもぜひともアツくなっていただきたい。 ─SFプロトタイピング特集編集長・樋口恭介(SF作家) SFは未来を「予測」するのに役に立つ文学なのだ、と科学的技法による未来予測の分析と評価を身上とする未来学(Futurology)は言った。なるほど、SFが描く未来にわたしたちは間違いなく魅惑されてきた。東京の都市のビル群を計算資源として活用される青々とした植物たちが覆い繁茂する。植物たちと人間が言葉の向こうでコミュニケーションを交わそうとする津久井五月『コルヌトピア』(2017年)。資本主義の加速
新海誠監督の新作アニメ映画『天気の子』は公開と同時に大きな反響を呼び、すぐさま賛否様々な議論が交わされるようになった。「天気」をキーワードとした本作からは強い物語と批評性を読み取れ、そこには個人と社会との現代の構造を垣間見ることが可能だ。 この記事は、新たな「自然」の概念を浮かび上がらせる、哲学者・戸谷洋志による新機軸の『天気の子』批評である。 新海誠監督の最新作『天気の子』が話題を呼んでいる。2016年に公開された同監督の『君の名は。』が大ヒットになり、社会現象を巻き起こしたことは記憶に新しい。そうした事情も手伝って、すでに『天気の子』には賛否両論を含めて様々な批評が交わされている。 『君の名は。』と同様に、本作にもたくさんの魅力が詰まっている。気象を表現する圧倒的な映像美、新宿・池袋・代々木といった東京の都市景観のディティール、「Yahoo!」や「マクドナルド」などの実在するサービス・
クリエイティブ集団NEWPEACEの新規事業として展開していたカレーブランド「6curry」が法人化。SNSで仲間を集め、ゴーストレストランとしてオープンした後、クラウドファンディングを通じて、実空間へと展開していった同プロジェクトの軌跡を振り返り、現代の新規事業立ち上げにおける仮説検証を学ぶ。 2016年頃からスタートアップの時代が終わり、「プロジェクトの時代」へと移行すると言われるようになった。いきなり会社化することで様々な制限が生まれてしまい、クレイジーなアイデアを実行できなくなってしまう。まずはプロジェクトとしてスタートさせ、必要なタイミングで会社化していくという考え方だ。 事業を立ち上げていく上で必要以上に初期からコストをかける必要はない。いきなり会社化する必要はないが、スタートアップに蓄積されてきた事業開発ノウハウは様々な新規事業に活きる。それを教えてくれるのが「6curry」
「今働いているオフィスは、思考やイノベーションを刺激する空間ですか?」 これを読んでいるあなたならどう答えるだろう。2016年の調査によると「はい」と答えた人の割合はたったの5%だった。 また「会社の提供する職場で効率的に働けていますか?」という質問に対しても、「はい」と回答した人の割合は他国の平均が52%だったのに対し、日本は37%にとどまっている。 どうやら日本で働く人にとって、オフィスはクリエイティビティを発揮する上でも、効率的に仕事をする上でも、優れた環境とは言い難いようだ。日本人の働き方を改善するならば、私たちは長時間労働だけでなく、働く環境についても考えなければいけない。 日本の働き方やワークプレイス変革に向けた知見を共有するフォーラム『WORKTECH19 Tokyo – Unwired Ventures』では、オランダのワークプレイス戦略コンサルティング企業『Veldhoe
NPO法人D×P代表理事の今井紀明氏を中心に、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、リブセンス共同創業者の桂大介氏らが、カテゴリで寄付先が選べるプラットフォーム「SOLIO」を立ち上げた。 日本人にはまだ馴染みの薄い寄付。彼らの目指す「寄付によるなめらかな社会」とはどんな社会なのだろうか。 139ヶ国中111位。イギリスのチャリティ団体Charities Aid Foundationが、毎年発表している「世界寄付指数ランキング」における、2017年度時点での日本の順位だ。3つの質問の中でも、「見知らぬ他人を手助けしたか?」に対する順位は135位とかなり低い。 データが表すように、日本人が極端に他人に対して冷たいかというと、そうではないだろう。昨年の東日本大震災の時、一時的に日本全体で寄付について考える機運も高まっていた。しかし、日常的に寄付をする文化かというと、そうとも言いにくい。 なぜ
ヴィラ鴨川滞在中は、伝統的な箒などの道具やその製作過程についてリサーチし、日本の職人と共に新しいデザインを制作することを目指した。その過程で、日本の掃除文化全般に関わる歴史や伝統、精神的な意味を深く探求することになったという。 「掃除という行為は人間の生活にとって非常に重要な意味を持ちます。忙しい現代人では、掃除は汚いものを効率的に綺麗にするという単なる義務になってしまいがちです。しかし、自身の環境との関わりのなかで行われる掃除という行為には、それ以上の意味があると気づいたのです」 と彼らは語る。 日本の掃除の歴史を辿っていくと、仏教、神道などの宗教にルーツがあることに気が付いた。 「神道は『清め』に密接に関わっています。神社に入る前に手を洗ったり、お清めの一環として火を焚いたりしますよね。仏教では、掃除は一種の瞑想としても説かれています。宗派を超えた共通の美意識があり、それが現代の日本人
──書物が数学的構造物であるために、私たちは書物よりも高次元の宇宙から、低次元の宇宙において実際に発生した実在として、書物の世界のできごとを認識することができる(本文より) SF小説では、テクスト論的な立場から「なぜここに今小説があるのか」を問うような作品が多く見られ、SF作家・樋口恭介もまたそのような問題意識を内に秘めた作品『構造素子』でデビューした。 宇宙と文章。抽象的な次元で両者に見られる構造、そしてそれを記述する「数学」という言語。 連載7回目となる今回は、マックス・テグマーク『数学的な宇宙』を取り上げる。 故郷の宇宙で送った人生のほかのあらゆる部分は、とてつもないスケールの旅の中に拡散して意味を失っていたけれど、時間を超越したこの世界は、いまも完璧に意味のあるものだった。つまるところ、すべては数学なのだ。 ──グレッグ・イーガン『ディアスポラ』 0.すべての可能な宇宙 宇宙は一つ
大阪を拠点としてホームレス支援を行う認定NPO法人Homedoorが、ストックフォトを活用した新たな支援の仕組み「Snapshot taken by Homeless.」をスタートした。 1991年、ロンドンで『ビッグイシュー』の第1号が発行された。 「問題」と「出版物の発行」の二つの意味がある「イシュー (issue)」を冠したこの発行物は、チャリティではなく、ホームレスの人に仕事を提供し自立を応援する事業として生まれている。日本には2003年に上陸。今では日本のあちこちで変えるようになった。 チャリティではなく、自立を促す。こうしたアプローチはビッグイシュー以外にも広がっている。 ストックフォトを活用した新たなホームレス支援の仕組み 大阪を拠点としてホームレス支援を行う認定NPO法人Homedoorが、ストックフォトを活用した新たな支援の仕組み「Snapshot taken by Ho
「ぼくたちは、過去や未来について考える『想像力』を、もっと高めなければいけません」——デザインをめぐる往復書簡 #5 「山本郁也 → 川地真史」 デザインはビジネスを越えられるのか、わかりやすく言えば、これがこの企画の中心を貫くテーマである。 デザインが本当に成し遂げたいことは何なのか。デザインがビジネスに取り込まれようとしている今だからこそ、我々は、デザインの持つ大きな可能性について考えなくてはならない。 同時期に東京から脱出した、──つまり、ビジネスの中心から距離を置いた──2人のデザイナーのやり取りを通じて、デザインの「夢」について考える試みを始めてみようと思う。 川地真史様 長野ではこの時期には珍しく、雨がしんしんと降っております。 東京で暮らしていたときは、雨について前向きに捉えることがなかなかできませんでしたが、自然の中にいると、水によって山や木々が喜んでいるようにも見え、雨も
情報管理と創造性は関係する。だから、人は昔から知的生産に熱心に取り組んできた。 情報が膨大になった現代において、私たちの創造性を引き出してくれる救世主「Notion」を紹介したい。 ジェームズ・W・ヤングは著書『アイデアのつくり方』で、「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」だと語った。1940年のことだ。 ヤングの言葉を信じるなら、現代は最も創造的な時代を迎えている。変化が激しく、情報が溢れている現在は、これまで以上にアイデアの元となる要素に溢れているはずだからだ。 現代人を悩ます「情報の散らかり」が私たちの時間を奪う 「そういえば、あの情報ってどこに残しておいたんだっけ?」 通勤途中に読んだWebの記事や、仕事中に思いついたアイディアのメモ、友人から聞いた美味しいレストランの名前。どこかに記録したはずなのに、見つからないことがよくある。 メモアプリに書いたのか、写真で撮っておいたのか
給水・配管を必要としない自動食洗機「Tetra(テトラ)」を開発したことで一躍脚光を浴びたHeatworks社が、キッチンに新たな革命を起こそうとしている。注ぐ瞬間にお湯を沸かす電気ケトル「DUO Carafe(ドゥオ・カラフェ)」を開発したのだ。 待ち時間は一度短くなると、長かったころにはもう戻れない。 お湯を沸かす時間もそうだ。 1分14秒。 朝起きて紅茶を飲もうと思った私が、電気ケトルのスイッチを入れ、150mlのお湯を沸かすのにかかった時間。 国内において業界最速の沸騰スピードを誇る電気ケトルは、カップ一杯分のお湯(140ml)を約45秒で沸かす。電気ケトルや電気ポットなどの湯沸かし器が主流である今、1分あれば温かい紅茶を入れるだけの、5分あればカップ麺を入れるだけのお湯を用意することができる。 この便利さを知ってしまった以上、やかんでお湯を沸かす生活に戻るのは難しい。 だが、これ
毎日、私たちは凄まじい数のメールやチャットを書いている。ライターでありながら、ビジネスにおける「書く」に苦手意識をもっていた筆者が、読みづらいチャットを卒業するために意識したことを紹介してみたい。 ビジネスにおいて良い文章を書くためのコツがわからなかった 新卒1年目の頃、メールやチャットのやりとりがとにかく苦手だった。 担当するプロジェクトチームのチャットでは、先輩から次々に新しいメッセージが飛んでくる。それに対し、「どう返事しよう」と考えるだけで15分経過。考えがまとまっていないので、書いては消しを繰り返して更に15分。 最終的には、長文かつ、何が言いたいかわからない文章が仕上がった。これでいいのか確証はないままに送る。その後、「先ほどチャットした件ですが、」と言っても、先輩からは「あれ?何だっけ」という言葉が返ってきた。恐らく、あまりちゃんと読まれていなかったのだと思う。 あれから2年
「コワーキング」という言葉が日本に輸入されて、数年が経過した。コワーキングスペースのパイオニアとなり、言葉を流通させた存在が「co-ba shibuya」だった。 こちらも輸入されたばかりのクラウドファンディングという新しい手法を用いて資金を集めて、コワーキングスペースという新しい価値観を渋谷の街に持ち込んだ。 時が経ち、「コワーキング」の潮流は新しい局面を迎えようとしている。 神南に生まれたスタートアップに特化したワークプレイス 10月11日(木)、渋谷・神南エリアにスタートアップに特化したコワーキングスペース「co-ba jinnan」がオープン。オープニングイベントには、大勢の人が詰めかけた。 co-ba jinnanは、ツクルバが展開する全国に広がるワーキングコミュニティ「co-ba NETWORK」の一員だ。co-ba jinnanには、個人から使えるフリー席、3人〜10人までの
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