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2019年に「データベース:: 論理の使い所は」という記事を書きました。タイトルに「データベース::」という接頭辞を付けたのは、一連の記事を検索しやすくするためです。一連の記事とは、次の意図で書かれる“はずだった”記事です。 ちゃんと書こうと思うと億劫になるので、ふと思い立ったときに、データベースと論理に関するラフなメモ書きを残すことにします。 ところが、接頭辞「データベース::」が付いた記事は2019年の記事一本だけ。続きはありませんでした。 最近(2023年6月)、「カーディナリティ〈多重度〉の“カラスの足”記法が分からない」という記事を書きました。この記事を書いた後で、「データベースに関連する記事になんか接頭辞を付ける気でいたような?」と思い出しました。“カラスの足”記事のタイトルを変える気はありませんが、この記事には接頭辞「データベース::」を付けました。4年ぶりの2本目の記事とな
証明支援系Lean〈リーン〉は、かなり前(2017年くらい)から注目しているソフトウェアです。注目はしているんですが、ちゃんと調べる機会がなかったので、このブログで触れたことはありませんでした。2022年のうちに紹介したい(今は大晦日の夜)。 Leanは現在、バージョン3系とバージョン4系が混在しています。このため情報が錯綜していて、分かりにくい状況になっています。今はバージョン3系が使われていますが、これからLeanを使い始めるならバージョン4をインストールしてもいいかも知れません(ただし、開発バージョンであることは承知の上で)。 Leanは、CoqやIsabelleと同様、証明支援系〈proof assistant〉として設計開発されました。実際、機械可読な定理記述のために広く使われています。 バージョン4になりLeanは、汎用プログラミング言語としての機能・特性を前面に打ち出してきま
TypeScriptのジェネリック型定義を使って、コンパイル時にフィボナッチ数を計算してみます。面白いだけで、役には立ちません。$`\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1} }`$ 内容: はじめに フィボナッチ数: 数の計算の場合 型の世界の順序・型・関数 型の世界のブーリアンと自然数 ニューメラル・カインド フィボナッチ数: 型の計算の場合 おわりに はじめに TypeScriptコンパイラ〈トランスパイラ〉にフィボナッチ数を計算させたいと思います。計算するのは、JavaScriptエンジンではなくて、TypeScriptコンパイラです*1。fib.ts というファイルを tsc fib.ts というコマンドでコンパイルすると、空っぽのJavaScriptファイルが生成されます。計算はコンパイルの過程で行われるので、出力ファイルに意味はないのです。 なんでまた「
データベース・テーブルのある時点での状態は集合として捉えることができます。しかし、状態の変更である“削除・更新・挿入”を写像としてモデル化するのはうまくいかないようです。写像(集合圏の射)に拘らずに、別な見方をしたほうが良さそうです。 この記事では、変わり者/はぐれ者達に登場してもらって別な見方を提供します。$`\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{\lis}[1]{ \boldsymbol{#1} } \newcommand{\In}{\text{ in } } `$ 内容: テーブルスキーマとテーブル状態 テーブル状態の変更 単射スパン 単射スパンの圏 単射スパンと削除・更新・挿入 テーブル状態と状態変更の圏 テーブルスキーマとテーブル状態 以下、関係データベースを単にデータベースと言います。データベースのテーブルを作るには、事前に
ストリング図とテンソル計算に関して僕が言えること、言いたいことは「やってみてください」です。ある意味“機械的な作業”なので、やれば出来ます。ボブ・クック教授に言わせれば「幼稚園児でも出来る」(「幼稚園児のための量子力学とその周辺」参照)。もっとも、この記事では、字を知らない園児ではとうてい出来そうにない作業も扱いますが。 内容: 例題:行列の転置 特別なテンソル、象形文字と成分表示 ワイヤーベンディング・オペレーター 転置行列の構成 成分表示と計算 関連する記事: ストリング図計算のコツと小技 マルコフ圏におけるテンソル計算の手順とコツ 続きの記事: ストリング図と相性が良いテンソル計算 2/2 ストリング図と相性が良いテンソル計算 1/2 例題:行列の転置 行列のインデックスが無限集合になると厄介なので、インデックスの集合 は有限集合だとします。例えば、 とかだと思ってかまいません。 行
一年ほど前に「「アドホック多相 vs パラメトリック多相」をマジメに考えてはいけない」という記事を書きました。多相性を二種類に分類できるわけではなくて、パラメトリック性(あるいはアドホック性)はしょせん程度問題だ、という話です。「関数定義がひとつで済む多相はパラメトリック多相」なんていう曖昧な定義はあまり意味がありません。 しょせん程度問題だとすると、その“程度”を測って比較したいとは思います。「「アドホック多相 vs パラメトリック多相」をマジメに考えてはいけない // それでもマジメに考えたいのなら」に次のように書きました。 多相関数を自然変換として定式化して、自然変換のあいだの関係をアドホック性を計る尺度に用います。実際、いくつかの方法で自然変換のあいだの順序を定義できます。その順序は、アドホック性の程度とみなせます。 上記の方法でパラメトリック性(アドホック性)を実際に測って比較し
テキストエディタをEmacsからVSCodeに切り替えました。僕は、EmacsマニアでもなければEmacs LOVEでもない、単に長期間普通に使ってきたユーザーです。なので、Emacsを捨てることに心情的な抵抗はないです。が、長い期間で身体に染み付いたEmacs脊髄反射はなかなかに抜けません。無意識の指の動きに予想外の反応をされると、舌打ちをしたくなります -- 「チッ、こいつぅ」。 内容: ウインドウ・アプリケーションとコンソール・アプリケーション ダイアログとツーストロークキー IMEを監視・制御できないこと 万能強烈キャンセル C-g はもはや無い dired生活から離れて ではどうする ウインドウ・アプリケーションとコンソール・アプリケーション VSCodeは、Chromium/Electron上に実装されています。これにより、クロスプラットフォーム性を確保しています。UIに関して
「Google日本語入力のコマンドと状態遷移を解明する」にて: 色々と事情がありまして、Google日本語入力のキーバインドを変更しようと思いました。...[snip]... その事情は別なブログ記事に書くかも知れません。 ...[snip]... 今まで[変換キーを]トグル方式で便利に使っていたのですが、とある事情(今日は割愛)でトグルがとても使いにくくなってしまいました。それが、今回キー設定をやり直すことになった事情です。 ここで言っている「事情」とは、エディタをEmacsからVSCodeに切り替えたことです。Emacsのなかに籠もっていて、久しく忘れていた日本語入力との相性とか、文字コード〈character encoding〉問題とかに、またぶち当たることになりました。 内容: Emacsはもうやめよう Awesome Emacs Keymapはダメだった IME状態がわからない
色々と事情がありまして*1、Google日本語入力のキーバインドを変更しようと思いました。付属ツール〈Google日本語入力のプロパティ〉のGUIからも変更できますが、テキストエディタを使ったほうが楽なので、タブ区切り形式のテキストファイルとしてキー設定をエクスポートして、それを編集しました。 この設定変更の過程で、Google日本語入力のコマンドと状態遷移について調査と実験をしたので、それについて記します。 内容: キー設定ファイルとコマンド 役割としてのキーと実物としてのキー 使わないコマンド Conversion状態とConvertコマンド Suggestion状態とPrediction状態 状態遷移図 檜山のキー設定の方針 全般的な方針 状態遷移 カーソル/フォーカスの移動と文字削除 キー設定ファイル オマケ 1:コマンド名とその日本語表示名 オマケ 2:コマンド一覧の作り方 キー
AutoHotKeyは、ユーザーがホットキー(OSやバックグラウンドプロセスが処理する特殊なキーコンビネーション)を自由に設定できるWindowsソフトウェアです。スクリプト言語としても使用できます。が、スクリプト言語としての使用はおすすめはできません。ホットキー設定をする上でスクリプティングが必要になったときだけスクリプト言語機能を使うのが吉です。その場合でも、かなり癖の強い言語なので注意が必要です。 内容: プログラミング初心者はやめとけ 概要:檜山が想定している歴史的経緯 ホットキー設定 プログラムと記述ファイル ディレクティブ コマンドライン 制御構造:GotoとGosub ベタースタイルのスクリプト言語 常駐モードと非常駐モード ホットキー設定とスクリプトとの関係 おわりに プログラミング初心者はやめとけ AutoHotKeyのWikipedia項目によると、 構文は簡易であり初
ん? あれ? ひょっとして … 一昨日書いた記事「なぜにテンソル記法は意味不明なのか」を読み直していて、気付いたことがあります。テンソル記法の「意味不明問題」は、解決できるようです。 思いついたときに書いておかないと、二度と書かない(書けない)ことがあるので、ふんばって必要なことは全部書いておきました。 内容: テンソル記法の「意味不明問題」とは アイディアと方法 インデックスからマーカーへ テンソル空間 テンソルとプロファイル プロファイル注釈 テンソルのテンソル積 双対空間に対するマーカー テンソルの縮約 置換と置換が定めるテンソル テンソルの置換同値 もうひとつの縮約 ネーム化とコネーム化 インデックスとしての添字 テンソル記法の「意味不明問題」とは テンソルの書き方〈記法〉としては、伝統的記法をそのまま採用します。「 はテンソルである」のような言い方を許容します。書き方・言い方にお
「アドホック多相」、「パラメトリック多相」という言葉は、覚えておけば便利に使えます。が、これらの言葉は、軽率に気分的・雰囲気的に使うものであり、違いや定義をマジメに議論すべきものではありません。 内容: nLabを見てもモンヤリ オーバーロード、多相、総称 多義的名前と識別インデックス アドホック多相は複数の関数定義(なの?) それでもマジメに考えたいのなら nLabを見てもモンヤリ nLab(https://ncatlab.org/nlab/show/HomePage)は、数理科学*1の概念・用語に、できるかぎり圏論的な、できるかぎり厳密な定義を与えようとしているサイトです。そのnLabでも、「多相〈polymorphism〉」のエントリーには、よくある説明しか載ってません。 https://ncatlab.org/nlab/show/polymorphism 多相〈polymorphi
「掛け算の順序問題: 檜山の地雷を踏まないで」において、掛け算の順序を区別することに反対するエモーショナルな理由を説明しました。ここでは、長時間労働に反対するエモーショナルな理由を説明します。 内容: 僕はムカついた 疲労による効率低下は当たり前 非効率的だからマズイのではない 僕はムカついた 人が何かをする動機って、けっこう感情的ですよね。僕も、「カッとなってやった」がたまにあります。次の2つの記事を書いたのも、カッとなって、です。 説得的非論理文を使うのは好ましくない 不適切なアナロジーと反駁の失敗 実はね、米村さんの発言(下のツイート)を見た瞬間にムカッとしたのね。 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長(@yonemura2006) 100mを12秒で走れる人が1000mを120秒で走れるわけではないという事実は誰でも理解できるのに、1日16時間働いても8時間働く場合の2倍の成果に
コケット/クラットウェル達のCADGやマリオス達の抽象微分幾何のように、ちょっと変わった“微分幾何”に関しては、インターネットを探してもあまり資料が出てきません。それらの情報を探す過程で、通常の(オーソドックスな)微分幾何の論文や教科書が大量に引っかかります。驚くほど多いですね。 微分幾何の資料が特に豊富なのか、他の分野でもそういうものなのか? ちょっと分かりませんが、英語のPDFでいいなら、微分幾何の無料教科書は有り余るほど見つかります。 内容: はじめに INTRODUCTION TO DIFFERENTIAL GEOMETRY (313p) DIFFERENTIAL GEOMETRY (354p) Topics in Differential Geometry (504p) Lectures on the Geometry of Manifolds (585p) Notes on D
先週土曜日(2019年4月20日)、タケヲさん(id:bonotake)から古い記事にコメントをいただきました。 朗報です! Spivakのオンラインコースが無料で公開されました! https://ocw.mit.edu/courses/mathematics/18-s097-applied-category-theory-january-iap-2019/index.htm とのことです。 コメントが付けられた古い記事は: 2013-05-24 デイヴィッド・スピヴァックを紹介する2つのニュース デイヴィッド・スピヴァック〈David I. Spivak〉は、関手データモデル/応用圏論で有名なMITの先生です。スピヴァックに関連する記事を幾つか挙げると: 2013-01-28 デイヴィッド・スピヴァックはデータベース界の革命児か -- 関手的データモデル 2013-03-04 スピヴァッ
確率・統計に出てくる「よく分からない言葉」を、多少は「分かる言葉」にしようと詮索した記事を、過去に幾つか書きました。そのリストはこの記事の最後に載せることにして、扱った「よく分からない言葉」は: 確率変数 分布 母集団 標本 これらは「意味不明な用語の四天王」と言えます(「超曖昧語「母集団」「標本」にケリをつける」)。 四天王の2つを含むフレーズに「確率変数が分布に従う」という言い回しがあります。これはどんな意味なのでしょう? 内容: 復習:確率変数と確率分布 「従う」とは 関連する過去記事 実例は: 「従う」の使用例:正規分布とカイ二乗分布 復習:確率変数と確率分布 過去記事を参照しなくて済むように、手みじかに復習します。確率測度、可測写像、確率空間の定義はハッキリしているので、これらをもとにして、意味不明な用語を解釈することにします。目的は意味をハッキリさせることで、教育的配慮とかは無
バート・ジェイコブスとコラボレーター達は、現状のベイズ確率論で使われている概念・用語・記法とは異なる、完全に新しい概念・用語・記法を提案しています。悪しき風習やしがらみを断ち切って、理論をリフォーミュレートしたのです。 従来のやり方に慣れている方は、彼らのスタイルに強い違和感を持つかもしれません。しかし、白紙で考えれば、とても使いやすいものです。僕は、ジェイコブス・スタイルを若干アレンジして使っているのですが、ほんとに気持ちよくて、従来方式に戻る気にはなれません。 今日は、その内容の詳細までは解説しませんが、基本概念だけに絞って雰囲気を紹介します(それでもけっこうな長さになりました)。 内容: ベイズ確率論を整理して再構成する 状態変換子と述語変換子 確率的状態 確率的状態変換子とチャンネル チャンネルについてもう少し 状態とチャンネルの実例 ファジー述語 ベイズ論理/ベイズ計算に向けて
「統計的独立性と線形独立性を共通に語ることは出来るのか?」では、シンプソン〈Alex Simpson〉による独立性構造を紹介しました。シンプソンの独立性は、かなり広い範囲の“独立性”概念をカバーするものです。もうひとつの独立性であるフランツ〈Uwe Franz〉による独立性は、モノイド積を持つ圏をベースに統計的独立性を定式化したものです。この記事では、フランツの独立性をザッと紹介します。 内容: 確率変数の独立性 確率空間のテンソル積 射影付きモノイド圏とフランツ独立性 フランツ独立性に関する注意 統計的独立性とフランツ独立性 おわりに 確率変数の独立性 確率空間を A = (ΩA, ΣA, μA) のように書きます。ΩAは台集合、ΣAはΩA上のσ代数、μAは確率測度です。記号の乱用で ΩA = A として、A = (A, ΣA, μA) とも書きます。 (A, ΣA, μA) が確率空間
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