ブックマーク / note.com/onoholiday (2)
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ヤバい思想、と言われると皆さんが思い浮かべるのはなんでしょうか。ファシズムや全体主義?差別主義?優性思想?それとも宗教的原理主義? この世に数多ある危険思想のなかで、ユダヤ人哲学者・思想家のハンナ・アーレントが最も重大視したのは﹁無思想﹂でした。 無思想、ノンポリ、無宗教…という﹁無属性﹂なステータスを自認していることは私たちの国では取り立てて珍しいものではありません。実際、多くの人は自分は﹁偏った考え方﹂に染まっておらず、﹁普通の感覚を持った/普通の日本人﹂であるというふうに考えています。よく異文化から揶揄されるように私たちは、﹁他の人と違う﹂ことに漠然とした恐怖を持っており、﹁普通であること﹂、そして﹁特定の立場や意見を主張しないこと﹂によって他の人たちとの温かい連帯関係の中に存在できます。 しかし実のところ、この﹁自分は普通の感覚を持っている﹂という自認こそが危険な状態だ、というのが
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人間が備えている認知バイアスのうちもっとも凶悪なものは、自分の経験した苦労はそれがどれほど無意味なものであろうと有益だったと考えたがる傾向だろう。生が本質的に不合理なものである以上、僕たちは不可避的に全く無意味な労苦や不幸に見舞われる―――しかもこれといった理由もなく。人は、そういった不合理が耐えがたいために、自分の経験した不幸や労苦には何らかの意味があったと正当化することで精神の平衡を保とうとするのだ。 たとえば、ある会社の新入社員は毎年全く根拠のない精神論的訓練で構成された研修で人格否定を受けるのが習わしになっているとしよう。罵倒されたり大声を出したり走り回ったりわけのわからない文言を復唱させられたりする。これらの経験はその時ばかりは耐えがたい屈辱、無意味な苦行に過ぎないが、時間を経るほどに記憶に対してはこの経験を正当化しなければならないという力がはたらく。すると、これらの苦痛の経験が
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