私たちはとんでもない勘違いをしていたのかもしれません。 米国のニューヨーク大学(NYU)で行われたマウス実験によって、長年アルツハイマー病の原因と考えられてきたアミロイドベータの蓄積は、真の原因が起こした副次的な結果にすぎない可能性が示されました。 研究ではアミロイドベータが蓄積するより「かなり前」の段階で、既にマウスの脳細胞が麻痺状態にあり、「毒の花」と呼ばれる異常な構造が発生している様子が示されています。 アミロイドベータを排除するように設計された薬がどれも効果を発揮できていないのも、真の原因となる「毒の花」を見過ごしていたいたからだと考えられます。 認知能力を蝕む、美しくも恐ろしい「毒の花」の正体とはいったい何なのでしょうか? 研究内容の詳細は2022年6月2日に『Nature Neuroscience』にて公開されました。
2020年に母親のフランシスさんを亡くしたシェリル・セントオンジ氏は、認知症のため記憶と感情が失われていくフランシスさんの姿を写真に残していた。研究者は今、アルツハイマー病の症状と新型コロナウイルスによる認知障害や脳の変化に見られる類似点を研究し、認知症を発症する原因にウイルス感染が関係している可能性についても探っている。(PHOTOGRAPH BY CHERYLE ST. ONGE) 新型コロナウイルス感染症から回復した後も、脳に霧がかかったようになってぼんやりとしてしまい、日常生活に支障をきたす「ブレインフォグ」と呼ばれる症状を訴える人が増えている。まだわかっていないことが多いものの、この後遺症について判明したことのいくつかは、長い間研究者を悩ませてきた別の疾患の研究に新たな洞察をもたらす可能性が出てきた。 現在、600万人近い米国人を苦しめているアルツハイマー病だ。その患者の数は、2
by Samuel Zeller 世界中で3000万人以上が苦しむといわれれるアルツハイマー病は、適切な治療法が見つかっていない認知症のひとつです。そんなアルツハイマー病にヘルペスウイルスが関与しているという研究結果は古くから存在するのですが、新たに、ヘルペスウイルスがアルツハイマー病の原因となっていることを裏付けるような研究結果が公表されています。 Frontiers | Corroboration of a Major Role for Herpes Simplex Virus Type 1 in Alzheimer’s Disease | Frontiers in Aging Neuroscience https://doi.org/10.3389/fnagi.2018.00324 Alzheimer's disease: mounting evidence that herpes
トキソプラズマ症を引き起こす寄生虫トキソプラズマ(緑色)をとらえた透過型電子顕微鏡(TEM)の着色写真。 Image from Moredun Scientific Ltd./Science Source/Photo Researchers チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳を“コントロール”しているというのだ。 トキソプラズマは通常はネコに寄生する。巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。 ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなる、無気力になる、危険を恐れなくなると
SSPEとは SSPE治療研究グループ事務局:福島県立医科大学小児科学教室 細矢光亮 (Tel:024-547-1295、Fax:024-548-6578) 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とは 亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis) は、その頭文字をとってSSPEともいわれています。麻疹(はしか)に感染してから数年の無症状の期間を経て、微細な神経症状が現れます。発病後は数か月から数年の経過(亜急性の経過)で徐々に神経症状は悪化し、数年から十数年で死に至る重篤な疾患です。 通常のウイルス感染が数日から数週の間に発症するのに対し、このように潜伏期間が数年と長く、ゆっくりと進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼びますが、SSPEはその代表的な病気の一つです。 SSPEの発生頻度 麻疹に罹患した人の数万人に1人がSSPEを発症します。現在
間違いを指摘するのは簡単です。はっきりいって、科学的には間違いだらけ。正しいところを見つけるのが難しいほどです。しかも、おなじみのレトリックが並びます。この十数年、何度も「これは間違い」と書き続けてきたものばかり。またか! というのが正直な気持ちです。 この二つの記事の間違いの多さは、SNSでもかなり話題になっています。問題は、トンデモ情報を述べる識者からコメントをかき集め、それが科学的に妥当かどうか、フェイクニュースにならないかを確認せず今、掲載してしまうメディアにあるのです。メディアの責任は非常に大きい。私も、取材するという意味では同業者だから、指摘するのは気が重いです。 しかも全国紙系メディアだから、その情報を「正しい」と思い込む人が多いのかもしれません。朝日新聞さん、どうしちゃったの? 間違いをいくつか指摘して、なぜこのような現象が続くのか、考えてみました。 (1) 電子レンジで、
海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰ネイチャーは日本の状況を、「このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた」と厳しく批判。 ネイチャーは、HPVワクチンについて、「子宮頸がんやその他のがんを防ぐ鍵として、科学界や医療界で認められ、WHO(世界保健機関)に支持されている」と評価。 その上で、 「In Japan the vaccine has been subject to a national misinformation campaign to discredit its benefits,resulting in vaccination rates falling from 70% to less than 1%(日本においては、このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全
神戸CDBの万代さん、高橋さん、そして神戸中央市民病院の栗本さんたちのチームはThe New England Journal of Medicine(NEJM)に、iPS由来の網膜色素細胞移植を行った一人の患者さんの経過報告を発表した。すでにこのサイトで触れた様に、このプロジェクトを最初の段階から見守り、「ゴールは結果にかかわらず正確に経過を記載し、臨床のトップジャーナルに論文を出すことだ」と檄を飛ばしてきた身としては、NEJMに論文が掲載されたことを喜びたい。 このNEJMを手にとって読んだ人は、同じ号のNEJMに、しかも万代さんたちの論文に続いて加齢黄斑変性症に対する脂肪幹細胞移植を受けた3症例の論文(Kuriyan et al, Vision loss after intravitreal injection of autologous “stem ells” for AMD(加齢黄
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