前回は、会議の終わりに次回会議の議事録を書き始めることが重要で、﹁会議終了のホイッスルは次の会議の始まりだ﹂という話をしました。これにて、会議の仕方に関する一連のプラクティスは終わりになります。
しかし、人は会議のために仕事をしているわけではありません。会議で決まったことがきちんと実行されなくてはプロジェクト全体の成功につながりません。今回は、会議の視点ではなく、プロジェクトの視点に立って、会議で決まったことをどのようにして実行させるかについてお話します。
会議では、さまざまなことが決まったことでしょう。特に﹁誰が﹂﹁いつまでに﹂﹁何を﹂するのかを決めたToDoがたくさん発生したはずです。
﹁3週間前の会議で田中さんの担当に決まったあのToDo、今どうなってるんだっけ?﹂
なんてことが、また会議でぶり返すことはありませんか?
﹁すみません、忘れてました﹂で済む場合と済まない場合があります。これを担当者だけの責任にするわけにはいきません。組織全体でこのような事態を防がねばならないのです。なぜこうしたことが起きたかというと、ToDoの進捗状況を確認する人が割り当てられていないからです。
そこでToDoには確認者を必ず割り当て、担当者は確認者に報告をするというルールにします。さらにスケジュールが遅れたToDoを催促するのは確認者の責任にするのです。このようなチェックシステムを用いるとToDoのロストはかなり減ります。また、担当者本人と確認者の2人のチェックが入りますので、ToDoのアウトプットの品質も向上するのです。
ひとつひとつのToDoがその後どうなったのか、報告はすべてログとして残すようにしましょう。すると、そのToDoがどういう経緯で進んでいって、今どのような状態にあるのかを、誰でもいつでも完全に理解することができるようになります。これをトラッキングといいます。ToDoはトラックされ、確認者が確認をして初めて終了となるのです。
ToDoの進捗確認のすべてを会議中にやろうとすると、会議のほとんどが報告時間になってしまいます。報告会議はだめな会議の典型です。確認者が会議時間外に確認作業をすれば、そこで解決しない問題だけが会議に上がってくるようになるので、会議中のToDoの見直し作業は、会議時間全体の10%ほどで済むようになります。
こうしたToDoの管理には、ToDo管理ツールが利用できます。担当者と確認者の両方を設定できるToDo管理ツールを導入しておくことは、会議時間を劇的に減らすことにつながります。
ToDoは仕事の単位が比較的小さいものに使われる言葉です。プロジェクトの最終的なゴールは、1年後や2年後かもしれません。しかし長期のことを考えていては、かえって何から始めてよいか分からず、一歩も前に進めないのも事実です。プロジェクトのゴールとToDoの間を補完する中間的なアウトプットのことをマイルストーンといいます。
マイルストーンを設定することは、会議を成功させる上でも、プロジェクトを成功させる上でも必要なことです。マイルストーン︵一里塚︶は、42.195キロメートルという長いマラソンにおける5キロ地点のようなものです。1カ月や2カ月単位で、有効なマイルストーンを置くことによって、プロジェクトが確かに進んでいることを確認できます。
プロジェクトが長期にわたる場合は、マイルストーンの設定によって、会議の議論の質は劇的に向上します。会議の最初にマイルストーンの確認を必ず行いましょう。
﹁2週間後の開発マイルストーンがこれこれだけど、大丈夫かな﹂
﹁3週間後に展示会という大きなイベントがあるけど、その準備はどこまでできているかな﹂
マイルストーンを参加者全員で確認すると、トピックの優先順位に変化が見られたり、会議に臨む参加者の態度に緊張感が生まれたりするなど、よい効果が見られます。
今回は、マイルストーンの設定とToDo管理について説明しましたが、これは会議の最初に行う作業に関係するものでした。プロジェクトの状況を正確に設定し続けることによって、初めて会議も成功するのです。
プロジェクト、マイルストーン、会議、ToDoは、以下のように入れ子になっています。
会議とは、このToDo担当者から上がってくるボトムアップと、プロジェクトのマイルストーンから落ちてくるトップダウンがぶつかる場所です。これは悪い意味ではなく、この2つがよいリズムでぶつかることによって、プロジェクトは成功に導かれるのです。
次回は、議事録とToDoを共有するメリットについて紹介します。
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