トラップ一家物語
1991年に放送された日本のテレビアニメ
『トラップ一家物語』(とらっぷいっかものがたり)は、フジテレビ系列「ハウス世界名作劇場」の枠にて放映されたテレビアニメである。放映期間は1991年1月13日から同年12月22日までの全40話。年末1991年12月28日(AM10:00~PM12:00)に世界名作劇場 初の総集編が放送されている
世界名作劇場 | ||
通番 | 題名 | 放映期間 |
第16作 | 私のあしながおじさん | 1990年01月 ~1990年12月 |
第17作 | トラップ一家物語 | 1991年01月 ~1991年12月 |
第18作 | 大草原の小さな天使 ブッシュベイビー | 1992年01月 ~1992年12月 |
作品紹介
原作はマリア・フォン・トラップの﹃サウンド・オブ・ミュージック﹄︵The Story of the Trapp Family Singers︶。前年の﹃私のあしながおじさん﹄に続いて恋愛がテーマになり、主人公の年齢もシリーズ最高齢になった。
原作を元としており、映画版では描かれることのなかった側面、トラップ家の経済的危機やアンシュルスによるナチスの侵攻などが描かれている。特にナチスについては、エピソードの中に数多く織り込まれ、ナチスの脅威に対する当時のオーストリアの人々の苦悩や様子が色濃く描かれている。
ストーリー
登場人物(声の出演)
マリア・クッチャラ︵声‥勝生真沙子︶
主人公。世界名作劇場シリーズでは最年長の18歳。ウィーン行きの汽車がチロルを通過する時に生まれる。ウィーンの師範学校を卒業後、ノンベルク修道院の見習いシスターになる。ある日、9ヶ月という条件でトラップ家の26人目の家庭教師として派遣される。両親を幼いころに亡くしたため、家族というものに対する思いは強い。天真爛漫な性格でそれまで心を閉ざしていた子供達の心を開き、やがてゲオルクと結ばれることとなる。給料のほとんどをノンベルク修道院に寄付していた。
結婚後は家族に降りかかる様々な危機を乗り切り、良妻賢母ぶりを発揮する。1月25日生まれの山羊座︵但しこの日は本来水瓶座の日である︶。
トラップ一家
ゲオルク・フォン・トラップ︵声‥堀勝之祐︶
トラップ家の当主で男爵。38歳。品格と知性を伴う人物。妻のアガタを亡くしてからは、子供達に対しても心を閉ざしていたが、マリアとの付き合いを通じてかつてのような暖かい性格の持ち主となる。もとが軍人のため、貴族生活が苦手。第一次世界大戦の時にはオーストリア海軍[1]の潜水艦の艦長だった︵階級は大佐︶。それゆえ、愛国心と誇りから後半はナチスと対立し、徴兵を機に国外への脱出を決意する。
ルーペルト・フォン・トラップ︵声‥安達忍︶
トラップ家の長男。14歳。体育以外の勉強はよくでき、しっかり者で真面目。医師を目指し、インスブルックの医科大学予科に進学する。手先が器用。肉を2日連続で食べるとおなかを壊す体質。
ヘートヴィッヒ・フォン・トラップ︵声‥川村万梨阿︶
トラップ家の長女。13歳。気が強く、始めのころはマリアに最も反発していたが、やがて心を開くように。父の結婚にも反対で、婚約解消をしてほしいあまり家出をしたことも。
ヴェルナー・フォン・トラップ︵声‥松岡洋子︶
トラップ家の次男。10歳。元気な腕白少年。貴族の仕来たりを兄弟で1番嫌っている。普段はいたずらっ子だが、動物には優しい。ブルーベリーの食べすぎでおなかを壊したことも。
マリア・フォン・トラップ︵声‥白鳥由里︶
トラップ家の次女。8歳。マリアと区別するために﹁小さいマリア﹂と言われる。2年前に猩紅熱にかかって以来、病弱になり、全く食事に手をつけないなど心を閉ざしていたが、マリアとの出会いでぐんぐん元気になる。あることがきっかけで、母のヴァイオリンを弾くようにもなる。性格は、穏やかで優しい性格だが、マチルダ夫人に反論するなど強気な面も。
ヨハンナ・フォン・トラップ︵声‥石川寛美︶
トラップ家の三女。6歳。やんちゃのおてんば娘で、迷子になったり、化粧をしたり、コインや蚊を飲み込んだり、何かと珍事件を引き起こす。トラップ家のムードメーカー的存在。
マルティナ・フォン・トラップ︵声‥鈴木砂織︶
トラップ家の四女。5歳。頑固で口数は少ないが、驚くべき発言をしたりする。手にはいつもテディベアのニコラを持っており、家族いわく、﹁マルティナは、ニコラの小さなお母さん﹂。
アガーテ・フォン・トラップ︵声‥渡辺菜生子︶
トラップ家の五女。3歳。末っ子だけあって、性格は甘えん坊でいたずら好き。おねしょを5日連続やっている記録を持つ。ナチス党員にも無邪気に接する。
アガタ・フォン・トラップ
7人の子どもたちの母で、ゲオルクの妻。2年前に猩紅熱で亡くなった。旧姓ホワイトヘッド。
使用人
マチルダ夫人︵声‥藤田淑子︶
トラップ家の家政婦長。貴族の仕来たりにとても厳しく、そのためにマリアの存在を苦々しく思っていたが、徐々に彼女の存在を認め始め、マリアの結婚を機に引退し、ウィーンへ戻る。よく尻もちをつく。意外に足が速い。トランプ占いが得意。
ハンス︵声‥平野正人︶
トラップ家の執事。生真面目で誠実な性格で、子供達だけではなく、マリアに対しても色々とサポートした。聖ニコラウスに化けるなど家族の一員として親しみを得ていた。しかし、その性格が仇となり、ナチスの信仰者となり、ゲオルクと対立する。
ミミー︵声‥萩森順子︶
トラップ家のメイド。アガーテの生まれたころから勤めているらしい。チロル出身のため、チロル訛がある。終盤で結婚してトラップ家を去る。
クラリーネ︵声‥色川京子︶
トラップ家のメイドだが、厳密に言うとマチルダ夫人専用メイド。イヤミ口調で、ミミーとはよく喧嘩する。終盤、マチルダ夫人と共にウィーンへ戻る。
ローズィ︵声‥遠藤晴︶
トラップ家の調理師。威勢のいいおばちゃんで、何かとマリアの味方になってくれる。昔、豪華客船に乗って七つの海を渡り歩いていたらしい。
フランツ︵声‥大山高男︶
トラップ家の庭師。ゲオルクとは第一次世界大戦の頃からの付き合い。今でも彼を﹁艦長殿﹂と呼び、慕っている。破産したトラップ一家を援助し、一家の亡命を手助けする。
その他
ヴァスナー︵声‥森功至︶
トラップ家の下宿屋に最初に宿泊した神父。その後一家と一緒に住むことになり、一家の合唱団の指揮者を担当するようになる。終盤、トラップ一家と共に亡命する。
イヴォンヌ・ベルベデーレ︵声‥山田栄子︶
ゲオルクの婚約者。アガタとははとこである。子どもが苦手なため、子どもたちの母としてではなく、ゲオルクの妻になることを望んでいる。
実話との違い
ここでは、マリアの現実の物語とアニメの違いを簡単に述べる。
●マリアがトラップ家に派遣された時の年齢は、原作では21歳。
●ゲオルクとマリアの年齢差は、25歳︵アニメでは20歳︶。
●子どもたちの順番も、少し異なる。アニメでは、上の順番になるが、実話では、
ルーペルト→アガーテ→マリア→ヴェルナー→ヘートヴィッヒ→ヨハンナ→マルティナ
の順である。また、母の名前も、原作ではアガーテである︵これはややこしさ回避のため、敢えて変更したものとの解釈が多い︶。
●実話では、アメリカ亡命までの間、マリアとゲオルクの間に、ローズマリーとエレオノーレという、2人の娘が生まれている。但し、マリアが亡命の間妊娠していたというのは本当の話︵実話では、末子のヨハネスが生まれる︶。
●執事のハンス・シュヴァイガー(Hans Schweiger)は、史実ではナチ党員であり監視していることを告白した後も、﹁︵上部に報告せざるを得なくなる為、︶自分の前で政治の話はしないように﹂と語ったり、アメリカからのコンサート出演依頼に乗じて一家に亡命を進言するなど、一家には協力的だった。
この他にも違いはあるが、基本的には映画﹁サウンド・オブ・ミュージック﹂よりは実話に忠実に作られている。
サブタイトル
- 私、修道女志願です
- シスターとしての未来
- 艦長と7人の子供たち
- 26人目の家庭教師
- マリアは騒ぎの張本人
- 迷子とはらぺこ騒動
- 大人は信じられない
- 礼儀作法が大事です!?
- トラップ男爵の婚約者?
- ミシンとヴァイオリン
- どろんこ遊びは最高!
- マリア風チョコレートケーキ
- ドン・キホーテの初恋
- オルゴールの秘密
- マルティナと熊のニコラ
- マリア先生がいない家
- 傷ついた子鹿
- 生きとし生けるもの
- イヴォンヌ姫のお土産
- それぞれの人生
- トラップ男爵の決断
- 1人で生きてゆける?
- 天使への願い事
- クリスマス・キャロル
- 白銀のアルプスにて
- オレンジと花の苗
- 昨日・今日・明日
- いたずらアガーテ
- 妻になる人、母になる人
- 結婚してくれますね!?
- 神様の思し召し
- 七月の花嫁
- 本当の家族
- ファミリー合唱団誕生
- 歌声は風にのって
- ナチス侵攻
- あたらしいご挨拶
- ハンスの秘密
- 誇りと信念
- さようならわが祖国
年末スペシャル:総集編
スタッフ
●製作‥本橋浩一
●製作管理‥高桑充、中島順三
●企画‥清水賢治︵フジテレビ︶、大橋益之助︵電通大阪支社︶、佐藤昭司︵日本アニメーション︶
●企画協力‥ヨハネス・フォン・トラップ、ハンス・ウィルヘルム
●音楽‥風戸慎介
●キャラクターデザイン‥関修一
●美術設定‥伊藤主計
●美術監督‥森元茂
●編集‥西山茂
●色彩設定‥小山明子、小酒井久代、諸澤千恵子
●音響監督‥藤野貞義
●撮影監督‥森田俊昭
●プロデューサー‥立川善久、和田実︵フジテレビ︶、松土隆二︵日本アニメーション︶
●監督‥楠葉宏三
●脚本‥しろやあよ
●コンテ‥楠葉宏三、中西伸彰、関戸始、斉藤次郎、加賀剛、佐土原武之、則座誠
●演出‥楠葉宏三、斉藤次郎、加賀剛、中西伸彰、佐土原武之、則座誠
●作画監督‥入江篤、加藤裕美、大城勝、田中穣、遠井和也、細井信宏、伊武菜鳥、伊藤広治
●原画‥動画工房、OH!プロダクション、T.Tプロ、スタジオ雲雀、GINAX、虫プロダクション
●動画‥動画工房、スタジオジャム、プロジェクト4、スタジオ雲雀、じゃんぐるじむ
●動画チェック‥前田英美、佐藤耕、小沼宏太、小沼克介、長谷部忠信、野田泰宏
●オープニング作画‥入江篤
●エンディング作画‥関修一
●協力‥KLMオランダ航空
●背景‥アトリエローク、スタジオアクア
●彩画‥スタジオロビン
●特殊効果‥義山正夫
●撮影‥トランスアーツ
●現像‥IMAGICA
●編集‥西出栄子、目黒広志
●ネガ編集‥上遠野英俊
●録音制作‥小野哲男
●録音‥佐藤千明
●録音スタジオ‥アバコスタジオ、タクトスタジオ
●制作デスク‥小林正彦、佐藤賢一
●制作進行‥佐藤賢一、吉岡靖博、小林正彦、小林克則、田中伸明、原田清、岩崎良明、林強、大島清孝、小串卓生、吉田英一
●演出助手‥加賀剛、中西伸彰、佐土原武之
●仕上検査‥唐沢伸彦、大平敬志
●タイトル‥道川昭
●制作‥日本アニメーション、フジテレビ
●©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1991
主題歌
●OP
●ドレミの歌︵本放送、再放送時︶
︵歌‥伊東恵里、森の木児童合唱団/作詞‥オスカー・ハマースタイン2世/日本語詞‥ペギー葉山/作曲‥リチャード・ロジャース/編曲‥風戸慎介︶
●ほほえみの魔法︵ビデオ、DVDなど2次使用音源︶
︵歌‥伊東恵里/作詞‥いしいめぐみ/作曲‥岸正之/編曲‥風戸慎介︶
●ED
●両手を広げて
︵歌‥伊東恵里/作詞‥いしいめぐみ/作曲・編曲‥風戸慎介︶
主題歌差し替えについて
●主題歌﹁ドレミの歌﹂は、本放送時に限って使用を許可されていた。契約金も高額だった為にビデオソフト,DVDなど商売に利用される場合は︵著作権︶2次使用の関係で再契約が必要になる。その為、主題歌を差し替えてある。これは本放送時から決まっていた事ですでに当時﹁ほほえみの魔法﹂のTVサイズが録音されている。︵当時のアニメ情報誌では途中から主題歌変更の噂の記事もあった︶
●契約金があまりにも高額だった為にOP,ED映像に予算が使えずセル画の枚数を使わない演出で構成されている。︵ほとんどキャラクターが動いていない︶
●現在の再放送ではOPは本放送時と同じく﹁ドレミの歌﹂が流される。︵これは著作権の1次利用にあたる為だと思われる︶
但、有料ネット配信などの全話放送ではDVDと同じ内容で配信されている。
●ビデオソフト、DVDの場合は主題歌変更に伴いエンディングのクレジットの一部に修正が加えられている。
●DVD第10巻︵最終巻︶の映像特典には東映が制作したカラオケ映像が収録されているが、他の名作劇場劇場DVDシリーズがOPテーマを収録しているのに対してEDテーマの﹁両手を広げて﹂が収録されている。
●世界名作劇場のOP映像を集めたビデオソフト等でもOP映像に音声のみEDテーマの曲に差し替えられている。他、東映ビデオから発売されている日本アニメーション主題歌大全集DVDソフトでは、OP映像は未収録になっている。但、映像特典してノンテロップ映像にて﹁ほほえみの魔法﹂が収録されている。ジャケット表記に再放送用と明記されている、本来の契約が初回放送のみだった為に誤表記されている。
補足
『サウンド・オブ・ミュージック』はミュージカル作品としても有名だが、それとは別に、このアニメ版『トラップ一家物語』の方を元にしたファミリーミュージカルも上演されている(イマジンミュージカル)。
注釈
- ^ 正確にはオーストリア=ハンガリー帝国海軍の軍人で1918年にオーストリア=ハンガリー帝国の解体に伴い海軍そのものが消滅しているのでオーストリア海軍は存在しない。そのため彼は1919年に海軍を退役している。