亀山薫
亀山 薫(かめやま かおる)は、テレビ朝日系の刑事ドラマ『相棒』の主人公の一人。 杉下右京の初代・五代目相棒。長らく右京と共に数々の事件を解決に導いてきた。[注 1]
演 | 寺脇康文[1][2](PS1〜S7-9 / S16-13〈回想〉 / S17-19〈回想〉 / S21-1〜)[注 2] |
年齢 | 36(S1時点)[3][注 3] |
階級 | 巡査部長[4][注 4]→嘱託職員(S21-2)→巡査部長(S21-12) |
出身地 | 新潟県[注 5] |
経歴 | |
親族 | |
服装 | |
趣味 | ランニング |
好きなもの | |
苦手なもの |
経歴
新潟県立阿賀野東高等学校卒業後、野球でのスポーツ推薦で城東大学法学部法学科に進学し、大学卒業後は警視庁に入庁。所轄勤務を経て警視庁刑事部捜査第一課入りを果たすが、飲食店で遭遇した指名手配犯・阿部貴三郎を捕まえようとして逆に人質にされるという失態を犯し特命係に追いやられた︵PS1︶。
S1では一時的に警察庁長官官房付として警察庁に出向した他、S2では特命係復活までの間に警視庁の運転免許試験場、S3では所轄である麹町東署の刑事課捜査一係︵強行犯係︶に勤務した経歴を持つ。S5-最終話では懲戒免職処分に追い込まれるも地方公務員法を逆手に取った右京の策略[注8]で免れている。大学時代からの交際相手である美和子と同棲しており、一度は美和子の浮気により破局に至ったが、後に復縁して入籍している︵S3〜4︶。
NGOのスタッフだった高校時代の友人・兼高公一が殺害された事件が切っ掛けとなり、兼高の妻に夫の死を知らせに彼が活動していたサルウィン共和国へ渡航︵S7-2︶[5]。そこでの出会いを通じて、兼高の遺志を継ぐと共に腐敗が蔓延しているサルウィンの子供達に正義の精神を教えることを決意する[8]。国立微生物研究所での事件解決後、右京に別れを告げて警視庁を退職し、美和子と共にサルウィンへ旅立った︵S7-9︶[9]。サルウィンでは学校建設などの事業や腐敗政府打倒に携わり、子供たちに正義の精神や日本語などを教え、校長先生の役職も歴任した︵S21-1︶。
サルウィンの腐敗政府を倒した反政府リーダーのアイシャ・ラ・プラント[注9]の訪日に伴い、その恩師である薫もサルウィン親善使節団の一員として国賓の扱いで一時帰国し、使節団の歓迎パーティーに右京を招待して再会を果たした[10]。しかしその直後、薫を含む使節団関係者たちに向けて乗客乗員を人質に取った航空機テロの脅迫事件が起こり、アイシャや妻の美和子が巻き込まれたことで再び右京と捜査に当たった︵S21-1︶。
事件解決後、サルウィン政府より美和子と共にペルソナ・ノン・グラータの指定︵事実上の国外退去処分︶を受け、日本に帰国[11]。伊丹の尽力とそれを受けた峯秋の根回しにより、警視庁に﹁嘱託職員﹂としての籍を得て、再び特命係に勤務することになった︵S21-2︶。その後、ある事件で関わった衆議院議員・袴田茂昭の計らいにより、司法警察職員︵警察官︶として正式に再雇用された︵S21-11︶[注10]。
人物
根が真っ直ぐな熱血漢で[12]、楽天家で﹁腰が重い割に口が軽い﹂と右京に評される。一度気に掛けた相手を放っておけないお人好しな性格や思慮の至らなさが災いしトラブルを引き寄せることが多い。嘘を付くことが苦手で、ごまかそうとしても敬語で話してしまい簡単に見抜かれてしまう。妻の美和子や浅倉禄郎は大学時代の同級生。
一人称は、ほとんどの場合﹁俺﹂。右京のことを﹁右京さん﹂と呼ぶが、第三者との会話では﹁杉下さん﹂と呼んだこともある︵S6-17︶。愛称は﹁亀ちゃん﹂または﹁薫ちゃん﹂。また、伊丹からは﹁亀﹂と呼ばれている。
シリーズ開始当初は捜査一課への復帰を目指しており、手柄に執着する描写も多く、伊丹から﹁特命係の亀山~!﹂と呼ばれることを特に嫌っていた。そのため、犯人逮捕だけに注目するあまり地道な捜査を疎かにして、右京から叱責されることもあった︵PS2など︶。しかし、月日が経つにつれて伊丹への対応に余裕を見せるようになり、数々の事件を通じて右京の正義感に触れるうち、次第に手柄に執着する事もなくなった。
サルウィンからの帰国後に復帰した際は、厳密には警察官ではなかったため捜査権や警察手帳も持たない状態であったが、﹁元々、特命係に捜査権はなかったでしょ?﹂と言って一切意に介さない︵S21-2︶等、以前よりさらに余裕を持った姿勢を見せている。
右京との関係
当初、右京とは反りが合わずに彼の辛辣な発言に腹を立てることもあったが[注11]、後に右京の心情や思慮に触れる中で彼を徐々に認めていき、右京からも自身の行動や思慮を認められたことで彼の良き相棒となる。時に右京の強引さや策略に振り回されたり、右京の正義に戸惑うこともあったが、その信頼は揺るがず、右京が捜査に際して法に触れても彼を信じ抜く意思を貫くようになっていった。自身の持っている警察官の仲間意識を﹁諸刃の剣﹂と右京に評される︵S7-7︶こともあったが、人情・優しさによる穏健な行動で右京を支えることも多い。右京が捜査に首を突っ込むようになったのは薫の配属以後であることから、小野田からは﹁薫がいてこそ右京の能力が発揮される﹂とも認識されていた︵S5-最終話︶。 また、プライベートにおいても右京と交流があった。
右京と再会した当初は、以前と異なり右京の推理や正義を信頼しきれていない節があったが︵S21-1︶、その後は国賓の立場を利用して右京の後ろ盾となったり︵S21-2︶、自身が殺人容疑をかけられた際には右京を頼りにしたりと︵S21-3︶、以前と変わらず右京に信頼を置くようになった。さらには右京が謹慎の身となった際は、変装して重要な情報を集める・右京と密に連絡を取り合いながらも周囲には全くそれを悟られないように振舞うなど、策士としての一面も見せ、右京には﹁持つべきものは良き相棒です﹂と評されている︵S22-最終話︶。
能力
運動神経に優れている。スタミナ面でも強靭で、犯人に重傷を負わされたり、長期間監禁された後ても短期間の入院で回復しており、美和子達を感心させている。その一方、頭を使うことがやや苦手で、一般常識や教養に疎い所がある︵S3-14、S4-12、S5-5︶。
人間関係を洞察する能力に優れており、右京を度々感心させている︵PS1、S3-9︶。また、昆虫に関する知識は右京をも凌ぐ程博識であるほか、味覚や嗅覚も非常に鋭く︵S2-3など︶、これらの能力が事件解決の鍵となったこともある。サルウィンからの帰国後は、捜査能力が向上した一方、年相応に体力は落ちている描写がある。
現実世界での扱い
キャラクター造形
寺脇は本作以前に﹃刑事貴族2﹄でも水谷と共演しており、再び共演できる自分は幸せ者であるとスポーツ報知とのインタビューの中で話し、水谷からいろんなことを学んだと振り返っている[13]。
寺脇は薫について、﹁静と動﹂という対比がわかりやすく、情のもろさや勢いなど、右京にはない要素があり、事件に向かう際のバランス感覚は薫が一番合っていると番組のファンだというお笑い芸人・ヒデによるインタビューの中で説明している[2]。
初期は演技プランを立ててから現場入りしたが、シーズン3あたりから、薫が勝手にやってくれているような感覚になったことがきっかけで、現場入り前の準備がセリフと気持ちの流れを覚えるだけになった[13]。また、S21での復帰にあたっては、薫に﹁鍛えてこい﹂と言われたと寺脇は話している[13]。
薫が普段羽織るフライトジャケットは、AVIREXやALPHAといったアメリカのメーカーが多く用いられている[14]。なお、このジャケットは2008年にグッズ化された[15]。
反響・評価
ねとろぼ調査隊が2024年に行った「相棒」の登場人物人気ランキングでは第一位であった[16]。
社会学者の太田省一は、刑事ドラマで演者が降板する際はキャラクターも殉職させることが一般的なのに対して、本作がそれをしなかったことを評価している。行動的な薫と物静かな右京のコンビは、刑事ドラマでは一般的な対比構造でもある[9]。
脚注
注釈
(一)^ なお、出演回数は2021年11月24日放送のS20-7で、亘を演じる反町が、それまでの最多記録だった薫を演じる寺脇の124回を更新し、歴代相棒において最多となり、最終的には2022年3月23日の時点で、138回まで記録を更新したが、2023年2月1日放送のS21-15で寺脇の出演回数が139回に達することになり、反町の最多記録を再び塗り替えることになった[要出典]。
(二)^ ノンクレジットでS10-5、S20-1︵回想︶に登場。
(三)^ PS1劇中で登場した履歴書によれば、1966年7月23日生まれ。
(四)^ PS1で登場した履歴書には﹁巡査長﹂と大きく書かれているが、経歴欄には﹁︵平成︶7年4月 巡査部長昇進﹂と書かれている。
(五)^ 愛媛県松山市とのデータもある。PS1の経歴書では本籍地が愛媛県松山市南清水6丁目31の15、出生地は愛媛県松山市西町9丁目24の16と表記されていた。S21-11で登場した資料では本籍は新潟県阿賀野市富安6-15-2となっている。
(六)^ PS1での彼の経歴書で勇、正枝と名前が記載されている。S3-8ではシルエットのみではあるが薫の母親が登場している。
(七)^ 薫が自宅を訪問した角田に対して﹁うち、禁煙になったもんで﹂と述べている︵S6-17︶。また、﹃相棒検定﹄P13の﹁寺脇出題クイズ内﹂でもS6でタバコをやめた旨の記載がある。
(八)^ 薫が警視庁に籍を置く地方公務員である点に着目し、地方公務員法の﹁不利益処分に関する不服申立て﹂︵第49条と第50条︶制度を利用した。懲戒免職処分に薫が不服を申し立てれば、その審理を通して事件を巡る警察内部の不祥事も公になることを警察上層部に思い至らせ、処分を撤回させた。
(九)^ 薫が建設に携わった学校の卒業生。
(十)^ 退職後10年以上を経過した薫は本来なら再雇用の資格を持たないが、袴田は﹁神奈川県警は退職から15年以内であれば再雇用の受験資格がある﹂ことを引き合いに出し、﹁警視庁が頑なに10年以内としているのは、時代の要請に逆らっているのではないか﹂﹁まずは亀山薫君を特例としてみてはどうか﹂と衣笠を説得した。
(11)^ 特に、PS1での右京はかなり辛辣な物言いをしており、特命係への左遷のきっかけとなった失態ぶりを﹁無様﹂と容赦なく言い放っていた。
出典
(一)^ ““初代相棒”寺脇康文が再登板で五代目に14年ぶりタッグに“右京さん”水谷豊も喜び﹁亀山くんが帰ってくる﹂”. ORICON NEWS. (2022年6月23日) 2023年2月23日閲覧。
(二)^ ab寺脇康文︵インタビュアー‥ヒデ︶﹁水谷豊﹁﹃相棒﹄で終わってほしくなかった﹂ 初代・寺脇康文卒業の真相 シリーズ400回記念インタビュー﹂﹃ORICON NEWS﹄、2023年2月23日。 オリジナルの2023年3月19日時点におけるアーカイブ。2023年2月23日閲覧。
(三)^ “相棒season1 ﹁キャスト﹂”. テレビ朝日. 2007年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月7日閲覧。
(四)^ キャスト|相棒 season5 - テレビ朝日︵アーカイブ︶
(五)^ ab“水谷豊主演﹁相棒21﹂ 寺脇康文“相棒”復帰で初回17・3%の好スタート 前作超&今年民放ドラマ最高”. スポニチ Sponichi Annex. (2022年10月13日) 2023年2月23日閲覧。
(六)^ “﹃相棒﹄亀山薫、激レアなお洒落スーツ姿!寺脇康文﹁また一段と薫ちゃんらしからぬ格好に﹂”. テレ朝POST (2024年3月7日). 2024年3月12日閲覧。
(七)^ 相棒DSノベルモード﹁仮面の告白﹂48P
(八)^ “鈴木砂羽、14年ぶり﹃相棒﹄に帰還﹁シン亀山夫妻です!﹂ “寺脇康文”薫の妻・美和子再び﹁まるでタイムスリップしたかのよう﹂”. ORICON NEWS. (2022年8月2日) 2023年2月23日閲覧。
(九)^ ab太田省一 (2022-07‐02). “出会いから振り返る﹁相棒・亀山﹂復帰の真の狙い 1代目から4代目﹁相棒﹂を振り返ってみると…”. 東洋経済. 2022年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月22日閲覧。
(十)^ “相棒season21‥右京&薫 開始5分、意外すぎる﹁初代特命係﹂再会に﹁亀山っぽくて笑う﹂﹁劇的でも何でもない﹂︵ネタバレあり︶”. MANTANWEB (2022年10月12日). 2023年2月23日閲覧。
(11)^ “﹃相棒season21﹄亀山薫が特命係へついに復帰 出戻りの経緯にファン歓喜﹁アツすぎる!﹂”. ORICON NEWS. (2022年10月19日) 2023年2月24日閲覧。
(12)^ “﹃相棒﹄歴代の相方キャストと女将を紹介、最長出演者は誰?”. マイナビニュース. (2022年11月21日) 2023年2月23日閲覧。
(13)^ abc“寺脇康文﹁かなりの幸せ者です﹂大恩人・水谷豊と﹁相棒﹂再タッグ 大親友・岸谷五朗と出会い﹁人生、大成功﹂”. スポーツ報知 (2023年11月11日). 2024年3月12日閲覧。
(14)^ “相棒 Season IV”. www.tv-asahi.co.jp (2005年1月6日). 2024年3月12日閲覧。
(15)^ “[102] 35分で完売!御礼!︵薫ちゃんフライトジャケット︶”. 相棒 スタッフブログ (2008年6月25日). 2024年3月12日閲覧。
(16)^ “﹁相棒﹂の登場人物人気ランキング! 第2位は﹁神戸尊﹂、1位は? | ドラマ ねとらぼ調査隊”. ねとらぼ調査隊 (2024年3月13日). 2024年3月22日閲覧。