おとり捜査(囮捜査、おとりそうさ)とは、対象者に犯罪の実行を働きかけ、犯罪が実行されるのを待って対象者を検挙する捜査手法。

概説

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令状による通常逮捕など他の捜査手法によっては検挙するのが難しい犯罪(薬物犯罪、買春など)について、おとり捜査が用いられることがある(この場合のおとりは、アジャン・プロボカトゥールagent provocateurとも称される)。知的財産権を侵害すると思われる偽ブランド商品や海賊版ソフト、児童ポルノなどの猥褻物、麻薬などの薬物などが、路上やインターネットオークションなどで販売されている場合、覆面捜査で商品を購入し捜査、摘発する買い受け捜査もある。

アメリカ合衆国におけるおとり捜査

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おとり捜査の意義

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わなの抗弁

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entrapment defense


おとり捜査の例

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2019250[2]

日本におけるおとり捜査

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おとり捜査の定義

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日本判例において、おとり捜査は捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に隠して犯罪を実行するように働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕などにより検挙するもの、と定義される(最高裁判所平成16年7月12日決定刑集58巻5号333頁)。

日本においてはおとり捜査の適法性についていくつかの裁判所判断において肯定されているものの「グレーな扱い」となっており、特別な必要性がない限りはおとり捜査を避ける傾向にある。

おとり捜査に関する法令

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5845

273

292541358



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おとり捜査の類型

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19902000[3]

おとり捜査に関する判例

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おとり捜査をめぐる学説

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フィクションにおける「おとり捜査」

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小説

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  • おとり捜査官』(山田正紀) - 推理小説のシリーズ。『女囮捜査官』『五巻推理シリーズ』『囮捜査官・北見志穂』とも。
  • 道警シリーズ』(佐々木譲) - 推理小説のシリーズ。中心テーマではないが、主要人物が過去におとり捜査に携わった結果PTSDに陥るなどしている。

テレビドラマ

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漫画

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参考文献

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  • 河上和雄・中山善房・古田佑紀・原田國男・河村博・渡辺咲子 編『大コンメンタール 刑事訴訟法 第二版 第4巻(第189条〜第246条)』青林書院、2012年

脚注

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  1. ^ 河上和雄 & 河村博 2012, p. 28.
  2. ^ 250人逮捕…きっかけの大学、実は偽物 米政府が設立”. 朝日新聞 (2019年11月28日). 2019年11月28日閲覧。
  3. ^ a b c 山上佳子「おとり捜査」『新実例刑事訴訟法I』5頁以下
  4. ^ 団藤重光『新刑事訴訟法要綱』159頁、鈴木茂嗣『刑事訴訟法』63頁など
  5. ^ 甲斐行夫「判批」刑事訴訟法判例百選(第八版)26頁
  6. ^ 東京高判昭和57年10月15日判時1095号155頁など。
  7. ^ 事件番号平成7年(あ)第548号、判例集未搭載。尾崎久仁子「判批」法律のひろば50巻7号71頁参照。
  8. ^ a b 三井誠『刑事手続(1)』89頁
  9. ^ 長沼範良ほか『演習刑事訴訟法』180頁(大澤裕執筆部分)
  10. ^ 佐藤隆之「判批」『刑事訴訟法判例百選(第七版)』26頁以下、酒巻匡「おとり捜査」法学教室260号106頁

関連項目

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