ウラン238
ウランの同位体
ウラン238︵uranium-238、238U︶とはウランの同位体の一つ。ウラン238は中性子が衝突するとウラン239となる。ウラン239は不安定でβ-崩壊しネプツニウム239になり、さらにβ-崩壊︵半減期2.355日︶しプルトニウム239となる。
ウラン238 | |
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概要 | |
名称、記号 | ウラン238,238U |
中性子 | 146 |
陽子 | 92 |
核種情報 | |
天然存在比 | 99.284% |
半減期 | 44億6800万年 |
親核種 |
242Pu (α) 238Pa (β−) |
崩壊生成物 | 234Th |
同位体質量 | 238.0507826 u |
アルファ崩壊 | 4.267 MeV |
核兵器との関係
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通常、ウラン238は、中性子の捕獲率が高く、それは結果としてウラン235の核分裂反応を妨げる。そのため、兵器級(Weapon-Grade)濃縮ウランを製造する際には、ウラン238の割合が低くなるように配慮される。広島に投下された原子爆弾ではウラン235が80%、ウラン238が20%であった。
ただし、ウラン238も高速中性子にさらされると核分裂反応が起こる。そのため、水素爆弾やその派生である3F爆弾では、核融合反応を発生させるためのX線の反射材として、また核融合で発生する高速中性子と反応させるブースターとして使用される。
1958年1月から2月にかけて、東京都内において放射性物質を含む雨が観測され、この中からウラン238が日本で初めて検出された。ソビエト連邦が行った水爆実験の影響と見られている[1]。
原子力発電との関係
編集軽水炉による原子力発電においては低濃縮ウランが用いられるが、ウラン238が中性子照射によって核種変換されて生じるプルトニウムはそのまま核分裂してエネルギー生成に寄与する。高速増殖炉においてはウラン238はブランケット燃料として炉心に装荷されプルトニウムを生成するのに使われる。
対称核分裂
編集ウラン238を冠した玩具
編集1950年、アメリカ合衆国で子供向け玩具「ギルバートのU-238原子力研究室」が発売された。実際に放射性物質が使われていたため後日回収、シカゴ科学産業博物館に展示された[6]。
脚注
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(一)^ 日外アソシエーツ編集部編 編﹃日本災害史事典 1868-2009﹄日外アソシエーツ、2010年、125-126頁。ISBN 9784816922749。
(二)^
“Fission Chain Reaction_Trends of Fission Products_Symmetric Fission Products”. The LibreTexts libraries. 2018年2月23日閲覧。
(三)^
“ウラン-237と対称核分裂の発見”. 仁科芳雄博士生誕120周年記念講演会 日本現代物理学の父 仁科芳雄博士の輝かしき業績. 仁科記念財団. pp. 45-46 (2010年12月6日). 2021年3月24日閲覧。
(四)^
“核分裂理論入門”. 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構︵JAEA︶. 2018年2月24日閲覧。
(五)^
“Fission Chain Reaction_Trends of Fission Products_Symmetric Fission Products”. The LibreTexts libraries. 2018年2月24日閲覧。
(六)^ Scarlet (2019年8月24日). parumo: “1950年にアメリカで発売された世界一危険なおもちゃ。A.Cギルバート社の﹁子供用原子力研究セット﹂”. カラパイア. 2023年9月7日閲覧。