エキシビション
ボクシング
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ボクシングのエキシビションは、明確な定義はないが、競技の一部ではない、選手がスキルを披露するために行われる非公式試合とされており、日本では﹁公開スパーリング﹂とも呼ばれる。ボクシングのエキシビションは、プロレスやバスケットボールのハーレム・グローブトロッターズのように事前に勝敗が決められているものではないが、扱いは公式試合ではない。そのため公式試合への参加資格を満たさない選手も出場可能であり、プロのライセンスを持たない選手でもプロの興行中に試合を行う機会でもある。﹁セレブリティ・ボクシング﹂として行われる場合も多い。
選手は通常、大きなボクシンググローブやヘッドギアを着用する場合が多い。ラウンド数は試合によって異なるが、通常3ラウンドから8ラウンドで行われる。通常は勝敗は付けないか、KO決着のみとなるが、判定で勝敗を付ける場合もある。勝敗が付いた場合でも通算戦績には加わらない︵無効試合扱いとして加える場合もある︶。
20世紀初頭、ボクシングのエキシビションは全米で人気を博し、ジャック・デンプシーやジャック・ジョンソンといったスターボクサーが数々のエキシビションを行った。その後エキシビションの人気は衰退するが、モハメド・アリが現役中にマイケル・ドークス、NFL選手のライル・アルゼイド、NHL選手のデイブ・セメンコらとボクシングのエキシビションで対戦し、ジョージ・フォアマンも公式試合でモハメド・アリと対戦し敗れ世界ヘビー級統一王座から陥落した6か月後に、一晩に5人のプロボクサーと対戦するエキシビションを行った。
2006年、現役を引退していたマイク・タイソンがエキシビションでワールドツアーを行うと発表するが、実際にエキシビションを行ったのは元スパーリングパートナーのコーリー・サンダースとの1試合だけであった。
2009年、現役を引退した直後のオスカー・デ・ラ・ホーヤがNBA選手のシャキール・オニールとABCのテレビ番組﹁Shaq Vs.﹂の中でエキシビションで対戦した。
2014年、フリオ・セサール・チャベスがリングに復帰し、貧しい子供たちや麻薬更生施設のチャリティーとしてエキシビションを行った。
2018年12月31日、現役を引退していたフロイド・メイウェザーが日本のRIZIN.14でキックボクサーの那須川天心とエキシビションで対戦し[2]、メイウェザーはこれを皮切りに朝倉未来や、YouTuberのローガン・ポールやデジ・オラトゥンジらとエキシビションを行った。またこのメイウェザーのエキシビションが興行的に成功した影響で、人気YouTuberや人気TikTokerなどのインフルエンサーやインターネットセレブリティ、NFLやNBAの元スター選手などが数々のエキシビションを行った。
2020年11月28日、マイク・タイソンとロイ・ジョーンズ・ジュニアがエキシビションで対戦し判定で引き分けとなった。
2021年9月11日、イベンダー・ホリフィールドと元総合格闘家のビクトー・ベウフォートがエキシビションで対戦し、ベウフォートが1回KO勝ちを収めた。
日本では現役王者の顔見せやデビュー前の選手のお披露目、引退試合として通常の興行内で行うことが多いが、2005年1月25日には﹁新潟県中越地震チャリティーボクシング﹂、2021年2月11日には井上尚弥vs比嘉大吾や京口紘人vs八重樫東が行われた他、内山高志や武居由樹、岡澤セオンらが出場した﹁LEGEND﹂と題したエキシビションイベントがそれぞれ開催された[3][4]。また、2007年には女子の解禁へ向けて男子の興行でエキシビションも行われている。一方で事情により公式戦が不可能になった際に代替としてエキシビションとなる場合もある︵一例として亀田興毅の引退試合。亀田は試合に向けてJBCボクサーライセンスを再取得したが、対戦相手に予定していたポンサクレック・ウォンジョンカムがJBCの定める年齢制限に抵触していたため、エキシビションに変更された︶。その他、総合格闘技DEEPにおいてボクシングルールのエキシビションも組まれている。
JBCの規定
編集- エキシビションとしてのスパーリングは原則として6回戦までと定められている。
- JBCライセンスを持つ者がJBC管轄外でスパーリング(ボクシングに関連するエキシビション)を行う場合は、JBCの許可が必要となる。
国際ボクシング協会 (AIBA)の規定
編集アマチュアの選手はプロのエキシビションに参加すると、アマチュア規定に触れる場合もある。。
サッカー
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サッカーにおいては、非公式戦︵エキシビションマッチ︶を﹁親善試合﹂︵英: friendly︶と称し、特に他国の代表・クラブとの試合を﹁国際親善試合﹂︵英: international friendly︶と称する。
W杯前等の大会前に代表チーム強化の為に行う試合を﹁強化試合﹂︵英: warm-up game︶と称する。
サッカーの草創期には元々公式戦が存在せず、各チームは親善試合を繰り返して経験を積んだ。しかし、1888年に世界で初めてのサッカーリーグであるフットボールリーグが誕生すると、以降世界各地でサッカーの全国リーグが創設され、その重要度は低下傾向にある。
クラブチーム
編集「プレシーズンマッチ」も参照
現在のクラブチームにおいては、シーズンの始まる前に親善試合︵プレシーズンマッチ︶を行い、新たなシーズンに向けてのチーム作りの一環として実施される。このため、公式戦とは異なるルール︵選手交代枠の拡大もしくは無制限、カードの累積の無視など︶が導入されることも少なくない。多くの場合は近隣の大規模クラブと小規模クラブの間︵例えばイングランドにおけるニューカッスル・ユナイテッドFCとゲーツヘッドFCの間など︶で実施されることが多い。
エミレーツ・カップやトロフェオ・テレサ・エレーラ、インターナショナル・チャンピオンズ・カップのように、スポンサーが賞金を拠出して実施される国際的なプレシーズンマッチも存在するが、これらは多くのクラブにおいて公式な戦績として記録されない。
2022年には、ワールドカップが11月から12月に開催されることもあり、各国のリーグの中断期間、あるいは前倒しによる終了間もない期間︵ポストシーズンマッチとして開催︶において、エキシビションマッチが各地で開催された。
ナショナルチーム
編集「国際Aマッチ」および「FIFAインターナショナルマッチカレンダー」も参照
サッカー日本代表などのナショナルチーム︵代表チーム︶における国際親善試合は、主要な国際大会︵FIFAワールドカップやUEFA EURO・AFCアジアカップなどの大陸選手権︶の準備の一環として行われる。ナショナルチームは大会ごとにクラブチームからメンバーを招集されるため、戦術面や連携面などでチーム強化の期間が限られており、国際親善試合はチーム力強化のために不可欠な存在となっている。一方で、国内リーグのシーズン中に期間を定めて行われることの多い国際親善試合はクラブチームにとって選手の怪我や疲労のリスクが大きく、利害の対立する存在となっている。
クラブチームの︵国際︶親善試合と異なり、ナショナルチームの国際親善試合の多くは国際サッカー連盟 (FIFA) によってFIFAランキングを算出する際の対象となる公式戦となり、個人記録においても代表戦への出場回数並びに得点数としてカウントされる。但し、選手にキャリアを積ませる目的で︵或いはFIFAランキングを上げるために︶選手交代を11回も行うという事例が生じたことにより、FIFAが国際親善試合を公式記録として認定するためには、選手交代枠を最大6人までとする︵それ以上の交代枠を認めた場合、代表戦への記録として含めない︶ルールが2004年に導入されている[5][6]。
国際親善試合の多くはFIFAの定めた年5回の代表戦開催期間︵FIFAインターナショナルマッチカレンダー︶に行われる。この間に開催された国際親善試合に選手が招集された場合、クラブは原則としてこれに応じなければならないという取り決めがある。逆にこの期間以外に開催される国際親善試合へは、クラブは選手の招集を拒否することが出来るとされている[7]。
各国のサッカー協会が主催し複数の代表チームが参加する国際親善試合として、キングスカップ︵タイサッカー協会主催︶、キリンカップサッカー、キリンチャレンジカップ︵共に日本サッカー協会主催︶、チャイナ・カップ︵中国サッカー協会主催︶、アルガルヴェ・カップ︵女子代表の国際親善試合、ポルトガルサッカー連盟主催︶などがある。
フィギュアスケート
編集体操競技
編集バスケットボール
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バスケットボールの場合、非公式戦をエキシビションと呼ぶが、エキシビションのみを行うチームも存在する。
エキシビションでは勝利よりも華麗なプレーに重点が置かれ、これらのチームによるものをショーバスケと呼ぶ場合もある。
特にハーレム・グローブトロッターズが有名。
プロレス
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プロレスのエキシビションは通常の興行の中で﹁エキシビションマッチ﹂として行われることが多く、往年の名レスラーが同世代のレスラーか若手を相手に顔見せ的な試合を行うものである。プロレスは他のスポーツに比して比較的高齢まで現役続行が可能なので︵ルー・テーズは59歳でアントニオ猪木のNWF王座に挑戦した︶、わざわざエキシビションと銘打って試合を行う場合、﹁往年のクオリティーを期待しないで下さい﹂という予防線の意味があることもある。
これから転じて、井上義啓がジャイアント馬場&アンドレ・ザ・ジャイアント組︵大巨人コンビ︶の試合を﹁エキシビション的﹂と書いたことがあった。
一方でこのエキシビション・マッチは、デビュー前の練習生同士もしくは練習生対選手の形で行われ、試合経験を積ませると共に紹介の意味合いを併せ持ち、WNCなど一部団体では公開プロテストを兼ねる場合もある。大抵の場合は3分から5分間でのスパーリングのような形となり、勝敗は付けないのが原則だが、団体などによっては、一定時間内︵3分から5分︶にピンフォール・タップアウトを奪った回数で勝敗を付けたり、通常の試合と同様に勝敗を付ける場合もある。
その他、別名称で呼ばれるもの
編集- ガーラ - フィギュア-スケートなど順位が決まった後に披露する演技のことをガーラと言う場合がある。
- オナーダンス - 競技ダンスで順位が決まった後に上位の組が披露するダンス。
脚注
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(一)^ ﹁観戦必携/すぐわかる スポーツ用語辞典﹂1998年1月20日発行、発行人・中山俊介、48頁。
(二)^ メイウェザー狂想曲は何を残した? 那須川天心TKO劇の衝撃と“謎”。 Number 2019年1月7日
(三)^ “LEGEND 井上尚弥がメインイベントで貫禄 比嘉大吾と真剣度100%”. ボクシングニュース (2021年2月11日). 2022年11月29日閲覧。
(四)^ “LEGEND開催 プロ王者・アマ五輪代表対決で白熱 岡澤セオン 4月から“プロ”のアマチュア選手に”. ボクシングニュース (2021年2月11日). 2022年11月29日閲覧。
(五)^ “Fifa limits substitutions”. BBC Sport (2004年2月28日). 2022年5月5日閲覧。
(六)^ “Adnan Januzaj's Belgium debut wiped from record books”. BBC Sport (2014年7月4日). 2022年5月5日閲覧。
(七)^ “Release of players for national association representative matches in accordance with the Coordinated International Match Calendar”. FIFA.com. 2022年5月7日閲覧。
関連項目
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