ヘブライ語聖書
ヘブライ語で記されたユダヤ教の聖書
(タナハから転送)
概説
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聖書ヘブライ語 で記されるユダヤ教の﹁聖書正典﹂である。
最初の5書[注3][注4]およびタナハ全体[注5][注6]は、文字で記され文書を成すことから成文トーラー[注7]と呼ばれ、これに対する当初口伝のみされた口伝トーラー[注8][注9]と合わせて﹁二重のトーラー﹂[注10]とも呼ばれる[注11][注12]。
また、最初の5書は﹁フンマーシュ﹂[注13]とも呼び慣わされる。キリスト教的な文脈では﹁モーセ五書﹂[注14][注15]と表現される。
タナハは本来、セーフェルー・トーラーとして巻物の形であった。
なお、﹁旧約聖書﹂[注16]というのはキリスト教徒や彼らの影響を受けた異教徒の呼び方、考え方であり、ユダヤ教徒、つまりユダヤ人はキリスト教徒の言う﹁新約聖書﹂を認めず、当然﹁古い契約﹂とも考えないため﹁旧約聖書﹂とは呼ばない[10]。
そもそも日本語訳の﹁聖書﹂[注17]という表現自体がすでにキリスト教的ニュアンスを含んでいる[注18]。
西暦90年頃に現在のイスラエル南西部のヤブネでユダヤ教学者たちによって行われた宗教会議であるヤムニア会議で、エステル記を含む39の書物をユダヤ教の正典と確定した[11][12]。
三大区分
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ユダヤ教においてヘブライ語聖書は大きく以下の3つの区分に分けられる。タナハ︵Tanakh、ヘブライ語: תנ״ך︶とは、この各区分の頭文字に母音を付した頭字語であり、これらの聖典を統べる呼称である。
(一)律法︵トーラー / Torah ヘブライ語: תורה︶5巻。モーセ五書とも。
(一)創世記
(二)出エジプト記
(三)レビ記
(四)民数記
(五)申命記
(二)預言者︵ネビーイーム / Nevi'im ヘブライ語: נביאים︶8巻。
(一)前預言者4巻。ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記
(二)後預言者3巻。イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書。
(三)十二小預言書1巻。︵ホセア書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、ゼパニヤ書、ハガイ書、ゼカリヤ書、マラキ書︶
(三)諸書︵クトビーム, カトビーム / Ketubim ヘブライ語: כתובים︶11巻。
(一)真理︵エメト︶3巻。詩篇、箴言、ヨブ記
(二)巻物︵メギロート︶5巻。雅歌、ルツ記、哀歌、伝道者の書、エステル記
(三)その他3巻。ダニエル書、エズラ記-ネヘミヤ記、歴代誌(I, II)
律法、預言者、諸書の順に5+8+11=24巻[13]、同じく5+21+13=39書と数えることがある[13][14][15]。39を数え上げる場合は、エズラ記とネヘミヤ記は別に、また、サムエル記、列王記、歴代誌はそれぞれ2つの書物からなるとする。
古書・写本
編集ビブリア・ヘブライカ
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ビブリア・ヘブライカ︵Biblia Hebraica︶はヘブライ語聖書を意味するラテン語の熟語。この語は伝統的にタナハの印刷版の表題に用いられた。
現代の学術的な用法では、ルドルフ・キッテルが編纂したヘブライ語聖書の12の版のことを指すことが多い。
脚注
編集注釈
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(一)^ ヘブライ語: מִקְרָא、Miqra’、読誦を意味する[2]。
(二)^ ﹁ヘブライ﹂の表現のゆれからヘブル語聖書[5]、へブル聖書[6]とも。
(三)^ ヘブライ語: חֻמָשׁ、Pentateuch
(四)^ 狭義のトーラー[7][4]
(五)^ ヘブライ語: תּוֹרָה
(六)^ 広義のトーラー。単に﹁トーラー﹂とも[7]。
(七)^ ヘブライ語: תּוֹרָה שֶׁ(־)בִּכְתָב、英: Written Torah, Written Law、成文律法とも。
(八)^ ヘブライ語: תּוֹרָה שֶׁ(־)בְּעַל־פֶּה、英: Oral Law
(九)^ 口伝トーラーは﹁タルムード︵﹁学び﹂︶﹂の代名詞でもある。
(十)^ 英: Dual Torah
(11)^ ﹁トーラー︵ヘブライ語: תּוֹרָה︶﹂は教え、指図、理論、学説の意味であり、算術︵תּוֹרַת הַ(־)חֶשְׁבּוֹן︶、論理学︵תּוֹרַת הַ(־)הִגָּיוֹן︶、認識論︵תּוֹרַת הַ(־)הַכָּרָה︶、のように一般名詞としても使われる。
(12)^ 最も広い捉え方として、狭義のトーラーを含むヘブライ語聖書︵成文トーラー︶に口伝トーラー︵タルムード︶を加えた全体をトーラー︵律法︶とする考え方もある[8][7][4]。
(13)^ ヘブライ語: חֻמָשׁ、英: Chumash、humash[9]
(14)^ 英: Five Books of Moses、ヘブライ語: חֲמִשָּׁה חֻמְשֵׁי תוֹרה
(15)^ あるいは単に﹁五書︵Pentateuch︶﹂とも。
(16)^ 希: Παλαιά Διαθήκη、ヘブライ語: הברית הישנה、英: Old Testament
(17)^ ヘブライ語: ביבליה
(18)^ ヘブライ語で﹁聖︵ヘブライ語: קֹדֶשׁ, קָדוֹשׁ, קִדּוּשׁ︶﹂とは、﹁特別な、特殊な、他と違う、献呈された、献納された、捧げられた、費やされた﹂といった意味になる。
出典
編集- ^ 『タナハ』 - コトバンク
- ^ 『ミクラー』 - コトバンク
- ^ 渡辺和子 2010, p. 164(Google Books)
- ^ a b c torahの意味・使い方|英辞郎 on the WEB
- ^ 小田賢二 2010.
- ^ 日本聖書協会 1955, p. 9.
- ^ a b c Torahの意味 - goo辞書 英和和英(小学館 プログレッシブ英和中辞典)
- ^ 『律法』 - コトバンク
- ^ humashの意味・使い方|英辞郎 on the WEB
- ^ アリスター・マクグラス 2002.
- ^ 手島勲矢 2002.
- ^ 『ヤムニア』 - コトバンク
- ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『旧約聖書』 - コトバンク
- ^ 学習研究社 1995, p. 92.
- ^ 中見利男 2000, p. 14.
- ^ 『アレッポ写本』 - コトバンク
- ^ “世界最古のヘブライ語聖書「サスーン写本」40年ぶり公開、5月に競売へ 史上最高額か”. christiantoday (2023年2月21日). 2023年5月23日閲覧。
- ^ “世界最古のヘブライ語聖書、52億円で落札 写本では史上最高額”. AFP (2023年5月18日). 2023年5月23日閲覧。
参考文献
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●日本聖書協会 編﹃口語旧約聖書について﹄日本聖書協会、1955年。CRID 1130000796625541504。
●Kuntz, John Kenneth (1974) (英語). The People of Ancient Israel: an introduction to Old Testament Literature, History, and Thought. Harper and Row. ISBN 0-06-043822-3
●Johnson, Paul (1987) (英語). A History of the Jews (First, hardback ed.). London: Weidenfeld and Nicolson. ISBN 0-297-79091-9
●学習研究社 編﹃ユダヤ教の本—旧約聖書が告げるメシア登場の日﹄学習研究社︿ブックス・エソテリカ﹀、1995年。ISBN 4-05-600925-2。
●中見利男﹃面白いほどよくわかる聖書のすべて—天地創造からイエスの教え・復活の謎まで﹄ひろさちや監修、日本文芸社︿学校では教えない教科書﹀、2000年。ISBN 4-537-25021-6。
●アリスター・マクグラス 著、神代真砂実 訳﹃キリスト教神学入門﹄教文館、2002年2月、851頁。ISBN 4764272032。
●手島勲矢﹃わかるユダヤ学﹄日本実業出版社、2002年9月。ISBN 4534034490。
●小田賢二﹁ヘブル語聖書写本について﹂﹃ぱるらんど﹄第266号、国立音楽大学附属図書館、2010年4月。
●﹃図解 世界の宗教﹄渡辺和子監修、西東社、2010年5月。ISBN 978-4791617227。
関連項目
編集外部リンク
編集- Tanakh(英語) < Sefaria: a Living Library of Jewish Texts Online
- Searching for the Better Text: How errors crept into the Bible and what can be done to correct them(英語) - Biblical Archaeology Society