バナナ共和国
バナナなどの第一次産品の輸出に頼り、政情不安定な小国を指す政治学用語
概要
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主に中南米の小国に対して使われることが多いが、広義には同様の状況にある他地域の国家に対して使うこともある。侮蔑的な色合いが濃い。典型的な国としては、ホンジュラスやグアテマラ、パナマなど。
2021年1月6日の2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件に関し、第43代大統領ジョージ・W・ブッシュは﹁これはバナナ共和国で起こるような事件で、民主主義国家の姿ではない﹂と非難した[3]。
歴史
編集アメリカ合衆国による支配
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もともとこの言葉が生まれたのは、20世紀初頭の中米で、ユナイテッド・フルーツやドール、デルモンテなどアメリカ合衆国の農業資本企業が、広大なプランテーションを各国に建設し、その資金力で各国の政治を牛耳ったことに由来する。バナナの生産及び輸出には厳密な管理が必要だったため、各社は鉄道や港湾施設など、必要なインフラストラクチャーを自己資金で建設し、さらにバナナビジネスがうまく行くよう、各国の支配者層と結託して自らに有利な状況を維持させ続けた。
また、これらの国々の多くには他にめぼしい産業が育たなかったこともあり、外国の巨大企業に対抗できる勢力はほぼ存在せず、巨大企業、ひいてはそのバックにいるアメリカ合衆国の言いなりになる従属国化の道を歩むこととなった。
最初に﹁バナナ共和国﹂と呼ばれ、実際にそれらの企業の影響が最も大きかったホンジュラスでは、ユナイテッド・フルーツ社の経理部長から大統領になった人物もいる。
功罪
編集もともとバナナプランテーション自体はその作物育成上の観点から、中米各国の政治中心が置かれた山間部や高地ではなく、熱帯気候の海や大河に近い平野部に作られる。さらにバナナは傷みやすいため、農園の最寄の港から直接輸出されることが望まれる作物である。そのため、飛地経済を形成し、首都の人間からみた経済の成長や安定にあまり寄与せず、逆にスペイン統治時代からの中心地とは気候、風土の違う地方の経済的発展を促し、ひいては政治的発言権の増大へと繋がった。ただし、そういった地域では、首都周辺の政治勢力よりも先進国の農業企業が大きな力を持つに至り、搾取の代表例としてみなされることも多かった。
クーデター
編集「アメリカ帝国」も参照
冷戦下において、アメリカ合衆国政府やアメリカ企業は自らに不利な︵左翼の︶政権が出来た場合、時には武力に訴えることもあった。1954年のグアテマラのクーデター︵PBSUCCESS作戦︶は、農地解放を訴える容共的なハコボ・アルベンス・グスマン左翼政権に対し、ユナイテッド・フルーツ社︵UFCO︶とアメリカ中央情報局が組んで起こしている。
出典
編集- ^ Richard Alan White (1984). The Morass. United States Intervention in Central America. New York: Harper & Row. pp. 319 P. 95. ISBN 0-060-91145-X; ISBN 978-0-06091-145-4.
- ^ “Big-business Greed Killing the Banana (p. A19)”. The Independent, via The New Zealand Herald. (Saturday 24 May 2008). オリジナルの2018年11月20日時点におけるアーカイブ。 Sunday 24 June 2012閲覧。.
- ^ “米議会突入「バナナ共和国のよう」 ブッシュ元大統領”. AFP通信. (2021年1月7日) 2021年1月11日閲覧。
関連項目
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●バナナ・リパブリック / アパレルメーカー︵名称の政治的意味合いから批判を浴びた︶。
●モンロー主義
●棍棒外交
●バナナ戦争
●モノカルチャー
●衛星国
●植民地
●ウディ・アレンのバナナ - 中南米の独裁国を舞台にした1971年のアメリカ映画。ウディ・アレンが監督、脚本、主演の三役を務めている。
●フンタ - 架空の国﹁バナナ共和国﹂を舞台としたボードシミュレーションゲーム。
●トロピコ - PC用箱庭ゲームソフト。前述のボードゲーム﹁フンタ﹂の様に、あえて腐敗した独裁者として君臨し、国家を経営可能なシミュレーション・ソフトで、初期の段階では植民地のひとつとして、帝国にバナナやパイナップルなどの輸出を指令される事がある。