ヘーラクレース ︵古希: ῾Ηρακλής, Hēraklēs︶ は、ギリシア神話の英雄。ギリシア神話に登場する多くの半神半人の英雄の中でも最大の存在である。のちにオリュンポスの神に連なったとされる。ペルセウスの子孫であり、ミュケーナイ王家の血を引く。幼名をアルケイデース︵Ἀλκείδης, Alkeidēs︶といい、祖父の名のままアルカイオス︵Ἀλκαῖος, Alkaios︶とも呼ばれていた。後述する12の功業を行う際、ティーリュンスに居住するようになった彼をデルポイの巫女が ﹁ヘーラーの栄光﹂を意味するヘーラクレースと呼んでからそう名乗るようになった。キュノサルゲス等、古代ギリシア各地で神として祀られ、古代ローマに於いても盛んに信仰された。その象徴は弓矢、棍棒、鎌、獅子の毛皮である。
ヘーラクレース Ηρακλής |
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![](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1d/Hercules_Statue.jpg/200px-Hercules_Statue.jpg) |
住処 |
オリュムポス |
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シンボル |
弓矢, 棍棒, 鎌, 獅子の毛皮 |
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配偶神 |
ヘーベー |
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親 |
ゼウス, アルクメーネー |
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子供 |
メガラーとの間:テーリマコス、クレオンティアデース、デーイコオーン オムパレーとの間:アゲラーオス, ラモス, ラーオメドーン デーイアネイラとの間:ヒュロス, グレーノス, クテーシッポス, オネイテース, マカリアー ヘーベーとの間:アレクシアレースとアニーケートス アウゲーとの間:テーレポス アステュオケーとの間:トレーポレモス |
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ローマ神話 |
Hercules |
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ローマ神話︵ラテン語︶名は Hercules ︵ヘルクレース︶で、星座名のヘルクレス座はここから来ている。
英語名はギリシア神話ではHeracles︵ヘラクリーズ︶、ローマ神話ではHercules︵ハーキュリーズ︶。イタリア語名はギリシア神話ではEracle︵エーラクレ︶、ローマ神話では Ercole︵エールコレ︶。フランス語名はギリシア神話では Héraclès ︵エラクレス︶、ローマ神話では Hercule ︵エルキュール︶という。なお、欧米ではローマ神話名の方が一般的に用いられている。
日本語では長母音を省略してヘラクレスとも表記される。
ローマ・カピトリーノ美術館にあるヘーラクレースと二匹の蛇の像。
ティントレットの絵画『天の川の起源』(1575年 - 1580年頃)。ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵。[注 1]
1800年にロンドンで50ギニーで購入された絵画。ジャン=バプティスト・コルベールのコレクションを経てオルレアン・コレクションとなった。
ヘーラクレースはゼウスとアルクメーネー︵ペルセウスの孫に当たる︶の子。アルクメーネーを見初めたゼウスは、様々に言い寄ったが、アルクメーネーはアムピトリュオーンとの結婚の約束を守り、決してなびかなかった。そこでゼウスはアムピトリュオーンが戦いに出かけて不在のおり、アムピトリュオーンの姿をとって遠征から帰ったように見せかけ、ようやく思いを遂げ、1夜を3倍にして楽しんだ。アルクメーネーは次の日に本当の夫を迎え、神の子ヘーラクレースと人の子イーピクレースの双子の母となった。
アルクメーネーが産気づいたとき、ゼウスは﹁今日生まれる最初のペルセウスの子孫が全アルゴスの支配者となる﹂と宣言した。それを知ったゼウスの妻ヘーラーは、出産を司る女神エイレイテュイアを遣わして双子の誕生を遅らせ、もう一人のペルセウスの子孫でまだ7か月のエウリュステウスを先に世に出した。こうしてヘーラクレースは誕生以前からヘーラーの憎しみを買うことになった。
ヘーラクレースの誕生後、ゼウスはヘーラクレースに不死の力を与えようとして、眠っているヘーラーの乳を吸わせた。ヘーラクレースが乳を吸う力が強く、痛みに目覚めたヘーラーは赤ん坊を突き放した。このとき飛び散った乳が天の川︵galaxyは﹁乳のサイクル﹂Milky Wayは﹁乳の道﹂︶になったという。一説にはアルクメーネーはヘーラーの迫害を恐れて赤ん坊のヘーラクレースを城外の野原に捨てた。ゼウスがアテーナーに命じて、ヘーラーを赤ん坊の捨てられた野原に連れて行くと、アテーナーは赤ん坊を拾い、赤ん坊に母乳を与えるように勧めた。赤ん坊の来歴が知らされていないヘーラーは哀れに思い、母乳を与えた。最後にアテーナーは不死の力を得た赤ん坊をアルクメーネーの元へ返し大切に育てるよう告げる。
これを恨んだヘーラーは密かに二匹の蛇を双子が寝ている揺り籠に放ったが、赤ん坊のヘーラクレースは素手でこれを絞め殺した。
ヘーラクレースはアムピトリュオーンから戦車の扱いを、アウトリュコスからレスリングを、エウリュトスから弓術、カストールから武器の扱いを、リノスから竪琴の扱いを学んだ。しかしリノスに殴られた際ヘーラクレースは激怒し、リノスを竪琴で殴り殺してしまう。そしてケンタウロス族のケイローンに武術を師事して、剛勇無双となった。キタイローン山のライオンを退治し、以後ライオンの頭と皮を兜・鎧のように身につけて戦うようになる。
ヘーラクレースは義父アムピトリュオーンが属するテーバイを助けてオルコメノスの軍と戦い、これを倒した。クレオーン王は娘メガラーを妻としてヘーラクレースに与え、二人の間には3人の子供が生まれた。しかし、ヘーラーがヘーラクレースに狂気を吹き込み、ヘーラクレースは我が子とイーピクレースの子を炎に投げ込んで殺してしまった。正気に戻ったヘーラクレースは、罪を償うためにデルポイに赴き、アポローンの神託を伺った。神託は﹁ミュケーナイ王エウリュステウスに仕え、10の勤めを果たせ﹂というものだった。ヘーラクレースはこれに従い、本来なら自分がなっているはずのミュケーナイ王に仕えることになった。﹁ヘラクレスの選択﹂といえば、敢えて苦難の道を歩んで行くことをいう。
ヘーラクレースの柱。ジブラルタル(手前の岩山)とセウタ(海の向こう側の岩山)の間がヘーラクレースによって砕かれて海になった。
ヘーラクレースは十二の功業の一つであるゲーリュオーンの牛を取りに行く途中に、巨大な山脈を登らねばならなかったが、それは非常に面倒なことであったので、近道をしようと考えた。山脈さえ無くなれば道のりを短縮できると考えたヘーラクレースは、巨大な山脈をその怪力で砕くことにした。ヘーラクレースは棍棒で山脈を叩き、その圧倒的な怪力で山脈を真っ二つにした。それだけではなく、山脈の下に横たわる大地もヘーラクレースの怪力に耐え切れずに吹き飛んだ。その結果、大西洋と地中海がジブラルタル海峡で繋がった。以降、分かれた2つの山脈をひとまとめにして、ヘーラクレースの柱と呼ぶようになった[6]。
また、元々ジブラルタル海峡があったが、あまりにも幅が広く、このままでは海の怪物たちが地中海に押し寄せてきてしまうため、ヘーラクレースが大陸そのものを動かしてこの海峡を狭くしたとする説もある[7]。
十二の功業の他にも、ヘーラクレースは壮大な冒険を繰り広げた。
リビアに住んでいたアンタイオスは、ポセイドーンとガイアの息子であり、大地に触れている間は無敵の力を得ることができた。彼は通りかかる旅人に戦いを挑んでは殺し、その髑髏や持っていた宝物を父ポセイドーンの神殿に飾っていた。彼は通りかかったヘーラクレースにも戦いを挑んだ。ヘーラクレースは何度もアンタイオスを打ち倒すが、その度に復活し、力が無限に増すアンタイオスに苦戦を強いられた。最終的に、ヘーラクレースは大地に触れていなければ無限の力が得られないという彼の弱点に気付き、ヘーラクレースはアンタイオスを持ち上げ、そのまま彼を絞め殺した。
ペライの王であるアドメートスに死期が迫った時、その妻のアルケースティスは、死に瀕した夫のために命を投げ出した。アドメートスが死ぬ時、家族の誰かが身代わりになって命を落とせば、彼は死なずに済むという約束を運命の女神モイライと交わしていたからである。この時、ヘーラクレースが通りかかり、事の次第を聞いて、正義感からアルケースティスを死なせてはならないとして彼女の霊魂を追った。アルケースティスは死の神タナトスによって冥界に送られるところだったが、ヘーラクレースはその腕力で死の神を打ち倒し、彼女の魂を奪い取った。ヘーラクレースのおかげでアルケースティスは生き返り、運命の女神との約束によってアドメートスも生き長らえることができた。
また、アルケースティスの霊魂を追って冥界にまで行き、ハーデースと格闘して奪い取ったとする説もある。
ヘーラクレースがカリュドーン王オイネウスの娘デーイアネイラに求婚していた時、河の神アケローオスもデーイアネイラに求婚をしていた。両者はデーイアネイラを巡って激しい戦いを繰り広げた。アケローオスは濁流を打ち付け、様々な姿に変身してヘーラクレースを翻弄したが、雄牛の姿になったとき、片方の角をヘーラクレースに折られてしまった。アケローオスはその腕力に降参し、その後はアケロースの川底で傷口を癒した。
河の神に勝利したヘーラクレースはデーイアネイラと結婚することになり、彼女との間に子供をもうけた。河の神アケローオスは大人しくなったが、毎年春になると傷跡からこの戦いでの敗北を思い出し、怒りのあまり洪水を引き起こすという。
ヘーラクレースは狂気によって親友イピトスを殺してしまい、そのせいで病に取り憑かれていた。治癒のためにデルポイを訪れるが、巫女は彼に会ってすらくれなかった。これに腹を立てたヘーラクレースは、デルポイの宝でもあり、神託に必要不可欠な道具でもある三脚の鼎を奪おうとした。デルポイの守護神であるアポローンはこれに立腹して自ら姿を現し、ヘーラクレースと闘った。これを見たゼウスは、双方の間に落雷を投じて引き分けにさせた。その時アポローンは、﹁お前の病は、殺人の償いとして、丸三年の間︵一説には一年間︶奴隷として仕えれば回復するであろう﹂と予言した。これを受けてヘーラクレースは、ヘルメースに連れられてリューディアの女主人オムパレーの元へと赴き、病回復のために奴隷として彼女に仕えることとなった。
エジプト(アイギュプトス)では、ブーシーリス王のもと、豊作を願って異邦人を捕まえては生け贄に捧げるという風習が行われていた。近くを旅していたヘーラクレースはエジプト人に捕まり、生け贄の祭壇に連れて来られた。そこでヘーラクレースは彼らの思惑を知り、その怪力で大暴れした。エジプト軍は彼によって尽く殺戮され、エジプトは壊滅状態になってしまった。
ヘーラクレースがトロイアを訪れた時、トロイア王ラーオメドーンは高潮と共に現れる強大な海の怪物に悩まされていた。この怪物は、奴隷に扮したポセイドーンがトロイアの城壁を築いた折、ラーオメドーンが約束の報酬を支払わなかったため、ポセイドーンが罰としてトロイアに送り込んだ怪物であった。この怪物を鎮めるために、ラーオメドーンの娘であるヘーシオネーが岩に縛り付けられ、生け贄に捧げられるところであった。
ヘーラクレースはガニュメーデースの代償にゼウスがトロイアに送った神馬が欲しいと思っていたので、この神馬と引き換えに海の怪物を討伐することを約束した。ヘーラクレースは巨大な怪物の腹の中に入り込み、三日も胃袋に居座って暴れ続けた。内臓を滅茶苦茶にされた怪物は死んだが、胃酸によってヘーラクレースの毛髪が溶け、禿げてしまった。ヘーラクレースは報酬の神馬を貰いに行ったが、ラーオメドーンは約束を反故にして拒絶した。当時はまだ十二の功業の最中であり、時間があまり残されていなかったため、ヘーラクレースは必ず復讐すると言い残してトロイアを去った。
時が経ち、ヘーラクレースは仲間たちと共にトロイアへと攻め入った。ラーオメドーンは大軍勢でそれに応えたが、ヘーラクレースの怪力には敵わなかった。ヘーラクレース軍は城壁を包囲し、それを乗り越えてトロイアを攻略した。ラーオメドーンは射殺され、ヘーラクレースの復讐は遂げられた。
オリュンピア遺跡の列柱。
十二の功業中にエーリス王アウゲイアースに報酬を踏み倒されたことの復讐として、後にヘーラクレースはエーリスに攻め入った。エーリス軍にはモリオネという双子︵一説には結合双生児︶の英雄がおり、彼らはポセイドーンの息子でカリュドーンの猪狩りに参加するほど武勇に優れ、怪力も有していた。双子であるが故に二対一の戦いとなり、剛勇無双のヘーラクレースといえども苦戦を強いられた。攻防戦の最中にヘーラクレースは病にかかり、休戦協定を結んだが、モリオネはそれを破って攻撃を止めず、ヘーラクレースは撤退せざるを得なくなった。その後、ヘーラクレースはモリオネがイストミア大祭に参加するという報せを聞き、その道中に待ち伏せしてモリオネを毒矢で射殺した。ヘーラクレースは強力な英雄を失ったエーリスを攻略し、この勝利を記念してオリュンピアにゼウス神殿を建て、その地で競技会を行った。以後、この競技会は4年に1度開催されるようになり、やがて古代オリンピックになった。
後世の古代オリンピックではヘーラクレースの末裔と信じられたテオゲネースが華々しい結果を残した。テオゲネースは記録に残っているだけでもボクシングなどの種目で1,300戦全勝し、古代オリンピックだけではなくあらゆる競技会で優勝を繰り返し、生涯無敗であった。ちなみに、この人物は神話上の存在ではなく実在した人物である。
コルキスの金羊の毛皮を求めるイアーソーンの呼びかけに応じて、ヘーラクレースも数多の英雄と共にアルゴー船に乗り込んだ。レームノス島の女たちの誘惑にも打ち勝ち、快楽に耽っていた他の英雄たちを叱咤して再び出航させるなど、ヘーラクレースはアルゴナウタイの中でも抜きん出た存在であった。しかし、ミューシアーにおいてヘーラクレースの愛していたヒュラースが水のニュンペーに攫われてしまい、ヒュラースを探している内にアルゴー船は出航してしまった。置き去りにされたヘーラクレースは、アルゴー船を追うのを止め、アルゴスへと帰還した。ヘーラクレースは最強の存在でありながら、アルゴナウタイから脱落してしまったのである。
一説には、このとき一部の乗組員はヘーラクレースを乗船させるためにティーピスに船を戻させようとしたが、カライスとゼーテースがこれを妨害した。このことを恨んだヘーラクレースは、後に二人をテーノス島で殺したという。
全宇宙を揺るがす大戦争に、ヘーラクレースは神々と共に参戦した。ガイアはゼウスたちオリュンポスの神々から宇宙の支配権を奪い取るために、ギガースという山よりも巨大な怪力の巨人たちを送り、ギガントマキアーと呼ばれる大戦を勃発させた。ギガースたちは神々には殺されないという不思議な力を有していたため、ゼウスは半神半人であるヘーラクレースをオリュンポス側として参戦させた。
ギガースはあらゆる地形を引き裂いて突き進み、大岩や山脈、島を投げ飛ばして攻撃した。神々もそれに応戦し、戦闘の衝撃によって天地は轟き、全宇宙が震えた。凄まじい戦いが繰り広げられたが、神々の方が優勢であり、ギガースは次々に敗北していった。弱ったギガースをヘーラクレースの毒矢が襲い、ヘーラクレースにとどめを刺されたギガースは絶命した。パレーネーの地に触れている限り無敵の力を得る最強の巨人もいたが、ヘーラクレースの圧倒的な怪力によってその地から引き剥がされ、彼の剛腕によって殺された。
ヘーラクレースの活躍もあり、ギガントマキアーは神々の圧勝に終わった。
ルカ・ジョルダーノの1697-1700年頃の絵画『ヘーラクレースの火葬』。カシータ・デル・プリンシペ(英語版)所蔵。
ノエル・コワペルの1700年頃の絵画『神格化されたヘーラクレース』。ベルサイユ宮殿所蔵。
ヘーラクレースとその妻デーイアネイラは、彼らの子供であるヒュロスを連れて旅をしていた。ある日、ヘーラクレースは川を渡ろうとしたが、家族と共に渡るにはあまりにも流れが激しすぎた。ちょうどそのとき川辺にいたケンタウロスのネッソスがデーイアネイラを担ぐと申し出たので、ヘーラクレースがヒュロスを担ぎ、ネッソスがデーイアネイラを担いで激流の川を渡った。しかし、早く向こう岸に着いたネッソスがデーイアネイラを犯そうとしたためにヘーラクレースはヒュドラーの毒矢でこれを射殺した。ネッソスはいまわの際に、﹁自分の血は媚薬になるので、ヘーラクレースの愛が減じたときに衣服をこれに浸して着せれば効果がある﹂と言い残した。デーイアネイラはその言葉を信じ、ネッソスの血を採っておいた。
後にヘーラクレースがオイカリアの王女イオレーを手に入れようとしているのを察したデーイアネイラは、ネッソスの血に浸した服をリカースに渡してヘーラクレースに送った。ヘーラクレースがこれを身につけたところ、たちまちヒュドラーの猛毒が回って体が焼けただれ始めて苦しみ、怒って無実のリカースを海に投げて殺した。ヒュドラーの毒矢で死んだネッソスの血は、ヒュドラーの毒と同じ効果を示したのだった。あまりの苦痛に耐えかねたヘーラクレースは薪を積み上げてその上に身を横たえ、ポイアースに弓を与え︵後にこの弓はポイアースの息子ピロクテーテースのものになる︶、火を点けるように頼んだ︵火を点けたのはピロクテーテースだともいわれる︶。こうしてヘーラクレースは生きながら火葬されて死んだ。これを知ったデーイアネイラは自殺した。
ヘーラクレースは死後、神の座に上った。このときに至ってようやくヘーラーもヘーラクレースを許し、娘のヘーベーを妻に与えたという。そしてヘーベーとの間にアレクシアレースとアニーケートスという二柱の息子を儲けた。
ヘーラクレースの子孫たちは、ヘーラクレイダイと呼ばれた。
ヘーラクレースの死後、その子供たちがミュケーナイの王位を望むことを恐れたエウリュステウスは、ヒュロスらを殺そうとして追い回した。アルクメーネーとヒュロスらは、アテーナイのデーモポーンに助けられた。エウリュステウスはヒュロスらの身の受け渡しを要求し、それに応じないアテーナイと戦った。この戦争の中でヒュロスはエウリュステウスの子をすべて討ち取り、エウリュステウスは捕らわれて殺された。
ヒュロスたちはエウリュステウスとの戦争に勝ったが、故郷であるペロポンネーソス半島に未だに戻れずにいた。しかし、ヒュロスの孫たちはミケーネやアルゴスを打ち破り、遂にペロポンネーソス半島へと帰還することができた。その際、テーメノスがアルゴスを、アリストデーモスがスパルタを、クレスポンテースがメッセニアを支配することになった。この内、テーメノスの子供であるペルディッカスは、アルゴスの王位継承争いに敗れて追放され、ギリシア北方の地にマケドニア王国を建国した。したがって、アルゴス人やスパルタ人、マケドニア人はヘーラクレースの子孫とされた。また、彼らは皆ドーリス系ギリシア人であったので、ヘーラクレイダイの帰還はドーリス人のギリシア侵入と関連付けられている。
- ^ ヘーラーを表すクジャクを伴うヘーラーの母乳が天に飛び、銀河となる。鷲はゼウスを表し、サソリのような雷電を掴む。わが子を餓死させまいと必死に母乳に向ける。
(一)^ シケリアのディオドーロス、4巻15・3。
(二)^ アポロドーロス、2巻5・8。
(三)^ ストラボーン、7巻8・43。
(四)^ “ピロストラトス﹃エイコネス﹄2巻25・1”. ToposText. 2022年5月12日閲覧。
(五)^ “ツェツェース﹃キリアデス﹄2巻304行-306行”. Theoi Project. 2022年5月12日閲覧。
(六)^ Seneca, Hercules Furens 235ff.; Seneca, Hercules Oetaeus 1240; Pliny, Nat. Hist. iii.4.
(七)^ シケリアのディオドーロス、4巻18・5。
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