共生
複数種の生物が相互関係を持ちつつ同所的に生活する現象
共生(共棲、きょうせい、symbiosis)とは、複数種の生物が相互関係を持ちながら同所的に生活する現象である。
名称 編集
日本語には共棲と共生の二通りの表記がある。共生は1888年︵明治21年︶に、三好学︵植物学者・理学博士︶の論文で用いられていることが確認されており[1]、共棲の用例より早い。
利害による共生の分類
双方の生物の利害に基づくと、以下の六通りに分類できる[2]。
●相利共生 (そうりきょうせい、mutualism)
●双方が利益を得る共生。
●片利共生 (へんりきょうせい、commensalism)
●片方のみが利益を得る共生。
●中立 (ちゅうりつ、neutrarlism)
●双方が利益を得ず、害も被らない共生。
●寄生 (きせい、parasitism)、捕食-被食関係 (ほしょく-ひしょくかんけい)
●片方のみが利益を得、片方が害を被る共生。
●片害共生 (へんがいきょうせい、amensalism)
●片方のみが害を被る共生。
●競争 (きょうそう、competition)
●双方が害を被る共生。
これら相互の間には明確な境界はない。同じ生物の組み合わせでも時間的に利害関係が変化したり、環境要因の影響を受けて関係が変わったりすることもある。また、同一の現象であっても着目する時間や空間のスケールによって害とも益とも見なされる場合がある。共生は利害関係によって単純に分類できるものではない。
相利共生だけが共生ではない。利害関係は可変的であったり観察困難だったりするため、利害関係は考慮せず、複数種の生物が相互関係を持ちつつ同所的に生活している状態がすべて共生と呼ばれている。
カクレクマノミとイソギンチャク
●魚類であるクマノミと、刺胞動物であるイソギンチャクの共生関係は有名である。イソギンチャクの触手には、異物に触れると毒針を発射する﹁刺胞﹂という細胞が無数にあり、これで魚などを麻痺させて捕食している。ところがクマノミの体表には特殊な粘液が分泌され、イソギンチャクの刺胞は反応しない。このためクマノミは大型イソギンチャクの周囲を棲みかにして外敵から身を守ることができる。一方、イソギンチャクがこの関係からどの様な利益を得ているかはっきりせず、この関係は片利共生とみられる。一説には、イソギンチャクの触手の間のゴミをクマノミが食べる、またクマノミの食べ残しをイソギンチャクが得る、イソギンチャクの天敵チョウチョウウオをクマノミが追い払うといった相利共生とされることもある。また一説には、イソギンチャクの触手の中に藻類が共生しており、クマノミが近くにいることによって触手が伸び、藻類の光合成が盛んになるという3種間による壮大な共生を説明しているものもある。クマノミのほかにもイソギンチャクカクレエビなど、イソギンチャクと共生する生物は多い。
●ヤドカリやカニの中には、小型のイソギンチャクをはさみや貝殻につけて身を守る種類がある。ヤドカリは自分の体が大きくなると貝殻を替えなければならないが、そのときイソギンチャクは自ら移動したり、ヤドカリがはさみで剥がして移し替えたりする。お互いに食物のやりとりもしているとみられる。