加法単位元
任意のxに対しx=x+aとなるようなa
初等的な例
編集厳密な定義
編集N を "+" で表される加法的演算のもとで閉じた集合とする。N における加法単位元とは、N の任意の元 n に対し、
- e + n = n = n + e
を満たす N の元 e のことをいう。
進んだ例
編集
●加法的に書かれた群における加法単位元は、群の中立元︵通常の意味での単位元︶である。群の加法単位元は必ずただひとつ存在︵後述︶し、しばしば 0 で表される。
●任意の環や体はその加法演算に関して加法群と呼ばれる群を成し、したがってただひとつの加法単位元 0 を持つ。考えている環︵や体︶がただひとつの元からなるのではない限り、加法単位元 0 は乗法単位元1とは異なる︵後述︶。
●環 R上の m-行 n-列行列の全体は、成分ごとの和に関して加法群を成す。その加法単位元を Oで表せば、O は全ての成分が Rの加法単位元 0 となるような m-行 n-列零行列である。たとえば、整数係数の 2-次正方行列の成す環 M2(Z) の加法単位元は
で与えられる。
●四元数体においても︵実数などと同じ︶数 0 が加法単位元である。
●R から Rへの︵つまり実変数実数値の︶函数全体の成す環 RRにおいて、加法単位元は全ての実数を 0 に写す函数︵零写像︶
0(x) ≡ 0
である。
●Rn のベクトル全体の成す加法群の加法単位元は、原点︵に対応する零ベクトル︶である。
性質
編集- 群の加法単位元の一意性
- (G, +) が群で、0, 0′ がともに G の加法単位元とすれば、g, h を G の任意の元として0 + g= g+ 0 = gかつ 0′ + h= h+ 0′ = h が満たされるから、g = 0′, h= 0 とすれば 0 + 0′ = 0′ + 0 = 0′ かつ 0′ + 0 = 0 + 0′ = 0 すなわち 0 = 0′ を得る。 加法単位元の零化作用 乗法が加法に対して分配的であるような代数系 Sでは、加法単位元 0 は任意の元を零化する、つまり S の任意の元 sに対して s• 0 = 0 となる という意味で乗法吸収元︵零元︶である。これは s • 0 = s•(0 + 0) = s• 0 + s• 0の両辺から s• 0 を簡約することにより得られる。 零環と加法および乗法の単位元 R を加法単位元 0 と乗法単位元1を持つ環とする。これら二つの単位元が等しい (0 = 1) とすると、R の任意の元 rに対し r= r× 1 = r× 0 = 0 となるから Rは自明な零環 {0} となる。対偶をとれば、R が零環でなければ 0 と1は必ず異なる。
関連項目
編集参考文献
編集- David S. Dummit, Richard M. Foote, Abstract Algebra, Wiley (3d ed.): 2003, ISBN 0-471-43334-9.
外部リンク
編集- uniqueness of additive identity in a ring - PlanetMath.(英語)
- Margherita Barile. "Additive Identity". mathworld.wolfram.com (英語).