古典ラテン語
インド・ヨーロッパ語族イタリック語派に属するラテン語の古典期における文語
古典ラテン語︵こてんラテンご︶とは、古典期の書き言葉のラテン語を指す。紀元前1世紀頃から紀元2世紀頃までの古代ローマ︵共和政ローマ、ローマ帝国︶で使われ、古典期ラテン語とも言う。古ラテン語の次の時代のラテン語に当たる。
古典ラテン語 | |
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Lingua Latina | |
発音 | IPA: [liŋgwa latiːna] |
話される国 | 古代ローマ帝国 |
消滅時期 | 4世紀までに中世ラテン語が発達 |
言語系統 |
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表記体系 | ラテン文字 |
言語コード | |
ISO 639-1 |
la |
ISO 639-2 |
lat |
ISO 639-3 |
lat |
後の中世、また現代において人々が学ぶラテン語とは、通常この古典ラテン語のことをいう。
概要
編集
古典期のアルファベットは下記の23文字である。なお母音字 Vは後の時代の Uを表している[1]。古ラテン語までは Xまでの21文字だったが、紀元の初めにギリシア語起源の外来語を表記するために Yと Z[2] の2文字が使われるようになった。母音字は、A、I、V、E、O、Y の六つ。C は [k]、G は [g] と発音された。小文字は無く、大文字のみを用いた。
A、B、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、V、X、Y、Z
母音には長音と短音があった。しかし綴りでは、ごく一時期を除き、長短音の表記上の区別はされなかった。
下記の二重母音︵複母音︶は一つの母音と見なされた。しかし綴りでは、﹁二つの母音の連続﹂との表記上の区別はされなかった。
AE、AV、EI、EV、OE、VI、OI、AI
母音字兼半母音字は二つの音価を持った‥
Iは [i] と [j] の音を表す。
Vは [u] と [w] の音を表す。
アクセントは、現代ロマンス諸語に見られるような強勢アクセントだけではなく、古典ギリシア語から伝えられたと思われる、現代日本語のようなピッチアクセント︵高低アクセント︶もあった。
文法面では、古ラテン語の依格︵処格、地格︶は一部の地名などを除いて消滅し、呼格を含めれば六つの格が使用された。また古ラテン語の語尾 -os や -om は、古典期には -us, -um となった。
古典期までは、続け書き︵scriptio continua、スクリプティオー・コンティーヌア︶を用い、分かち書きにする習慣はなかった。碑文などでは、小さな中黒のようなもので単語を区切った事例がある。
当時の代表的な作家としては、ユリウス・カエサル、キケロ、ウェルギリウス、オウィディウス、ホラティウスなどがいる。黄金期、白銀期として扱われている。
ギリシア語由来語
編集ギリシア語由来語の綴りと発音は、
- 母音字 Υ/υ は、ラテン語では Y/y と綴り、発音は /ju/ もしくは /juː/
- 子音字 Ζ/ζ は、ラテン語では Z/z と綴り、発音は /z/
- 有気子音字は(φ、θ、χ)、ラテン語では「無気子音字 + h」と綴り(ph, th, ch)、発音は無気子音(/p/, /t/, /k/)
- 無声子音字 ρ (語頭)は、ラテン語では rh と綴り、発音は有声の /r/
古典期の話し言葉の発音の変化
編集古典期の話し言葉では、以下に関して古ラテン語の綴り通りの発音から変化が生じ、元来の発音が廃れていった。
民衆の話し言葉の発音の変化
編集詳細は「俗ラテン語」を参照
- 文末の -s は後ろに母音が続かない限り発音されない場合があった。
- AV (au) は ō /oː/ と発音した。
後世のロマンス諸語
編集詳細は「ロマンス諸語」を参照
ロマンス諸語では、