声道
動物体内の音の発生器より発せられた音が、体外に放出されるまでの間に通過してくる体内の空洞
声道︵せいどう︶︵英: Vocal tract︶とは、動物体内の音の発生器より発せられた音が、体外に放出されるまでの間に通過してくる、動物の体内の空洞のことである。なお、ここで言う音の発生器というのは、鳥類の鳴管や、哺乳類の喉の辺りにある音の発生器︵ヒトで言う声帯︶を指す。
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声道の構成器官
編集声道を構成している器官は、生物の種類によって異なっているが、概ね次のようなものである。
鳥類の場合
編集哺乳類の場合
編集声道と音色
編集「発声」も参照
声道は、管楽器の管の部分︵リードの部分ではない︶や、シンセサイザーに喩えられることがある。事実、声道はシンセサイザーの一部のような役割を果たしており、たとえ音の発生器で作られている元々の音が全く同じであっても、声道の形状によって、体外に発せられる音の音色は変化する。これは、声道の形状によって共鳴する音の周波数が変わることなどが原因である。よって、ヒトなどはこの部分の形状を変化させることも利用して、会話や歌唱などを行っている。︵無論、声帯の振動数を変えるなど、声道の形状以外のパラメータも関係する。あくまで﹁この部分の形状を変化させること”も”利用して﹂となっている点に注意。︶
ともあれ、ヒトのように複雑な発声を行うためには、この声道の形状などをかなり自由にコントロールすることが必須となる。︵もちろん、ヒトは声道の形状のコントロールだけで言葉を話しているわけではないが、声道の形状を変えるという点に着目すると、特に舌の動かし方など、声道の中でも口腔の部分が大きな要素となっている。︶例えば、ヒトの幼児の発する言葉が不明瞭となるのは、この声道の形状を上手くコントロールできないことも一因である。他にも、いわゆる早口言葉が言いにくいのは、あまり意味の無い言葉だからなどと言った別な理由もあるが、やはり声道の形状をコントロールしにくい言葉だからということも一因となっている。さらに、母語は簡単に発音できても、それ以外の言語では発音に苦労することがある理由の1つに、母語を発音するための声道の形状のコントロールは幼い頃から日常的に訓練が続けられているのに対し、それ以外の言語ではそうではないことが挙げられる。つまり、母語以外の言語を発音するために必要な声道の形状のコントロールについて、十分習熟していないことが一因なのである。
また、個体によって声が異なっているのは、声道の形状が個体によって違うことが一因である。︵ヒトの場合、声紋が個体によって異なっていることが知られているが、この声紋を決める要素の1つが、声道の形状だと言い換えることもできる。︶これは、ヒトの声道の形状のコントロール能力には限界があり、どうしても個体による声道の形状の違いが残ってしまうためだ。したがって、例えば、ある人が﹁あ﹂と発音している時の声道の形状をMRIなどを使って正確に測定し、その形状をヒトの身体と似た柔らかさを持つ樹脂などを使って、正確に再現した模型を作ったとする。それと同時に、その人の﹁あ﹂と発音する時に声帯が振動している周波数を正確に測定し、その周波数の音を出す装置を作り、そこに樹脂などを使って再現した声道の模型を被せてみると、その声道の持ち主が﹁あ﹂と発音しているのと似た音が出るわけである︵無論、声道の形状以外にも音色に変化を与える要素があるので、全く同じ音にはならない︶。
なお、ヒトは成長に伴って声が変わってゆくが、その理由の1つとして、身長の伸びと共に声道が長くなってゆくことも挙げることができる︵ただし、男性の声変わりで顕著なように、声帯の形状が変わることなど、成長に伴って声が変わる要素は、声道の形状の変化以外にもあるので、あくまで理由の1つである︶。
関連項目
編集出典
編集- ^ Goldstein, U.G. (1980) An articulatory model for the vocal tracts of growing children. Ph.D. dissertation, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA