女は女である
『女は女である』(おんなはおんなである、仏: Une femme est une femme; 英: A Woman Is a Woman)は、1961年製作・公開の、ジャン=リュック・ゴダール監督によるフランス・イタリア合作の長篇劇映画である。
女は女である | |
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Une femme est une femme | |
監督 | ジャン=リュック・ゴダール |
脚本 | ジャン=リュック・ゴダール |
原案 | ジュヌヴィエーヴ・クリュニー |
製作総指揮 |
ジョルジュ・ド・ボールガール カルロ・ポンティ |
出演者 |
ジャン=クロード・ブリアリ アンナ・カリーナ ジャン=ポール・ベルモンド |
音楽 | ミシェル・ルグラン |
主題歌 |
挿入歌 アンナ・カリーナ 『アンジェラのシャンソン』(Chanson D'Angela) |
撮影 | ラウール・クタール |
編集 |
アニエス・ギュモ リラ・エルマン |
製作会社 |
ローマ=パリ・フィルム ユーロ・インタナショナル・フィルム |
配給 |
ユニデックス 新外映 |
公開 |
1961年9月6日 1961年10月14日 1961年12月23日 |
上映時間 | 85分[1] |
製作国 |
フランス イタリア |
言語 | フランス語 |
製作費 | 16万米ドル |
概要
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ゴダールの長篇劇映画第3作。﹁ミュージカル・コメディ﹂と銘打って製作されたが、登場人物が音楽に合わせて歌い踊るシーンは一つもないうえ︵主人公が伴奏なしで歌うシーンが1度あるのみ︶、ミシェル・ルグランの流れるようなメロディを唐突に断ち切ったり、意図的に無音を作る演出がなされていることから、﹁ミュージカル﹂というジャンルそのものに対する風刺作品とも評されている[2][3]。
アンナ・カリーナが出演したゴダール作品としては﹃小さな兵隊﹄︵1960年︶につぐ2作目となる。撮影はパリ市内のフォブール=サン=ドニ街、サン=ドニ門などで行われた。
劇中にカリーナの﹁コレオグラフはボブ・フォッシー、共演はシド・チャリシーとジーン・ケリー﹂[4]というセリフがあるように、アメリカ映画狂のゴダールがMGMのミュージカル映画から大量の引用を取り込み、イーストマンカラーのシネマスコープ︵フランスコープ︶で撮影されている。
1961年に西ドイツのベルリンで行なわれた第11回ベルリン国際映画祭で、本作は金熊賞にノミネートされ、コンペティションで正式上映された。結果、アンナ・カリーナが銀熊賞最優秀女優賞を、ゴダールが銀熊賞特別賞を、それぞれ獲得した。ゴダールの銀熊賞受賞は、前年の第10回ベルリン国際映画祭での﹃勝手にしやがれ﹄から2年連続の受賞である。
1964年9月18日には、アメリカのニューヨーク映画祭で上映された。
ストーリー
編集エミール(ジャン=クロード・ブリアリ)は、パリの小さな書店に勤める青年である。彼は、コペンハーゲンから来たばかりでフランス語の「R」がうまく発音できないストリップ・ダンサーのアンジェラ(アンナ・カリーナ)といっしょに暮らしている。ある日アンジェラが、突然、赤ちゃんが欲しいと言いだす。それも24時間以内に。ふたりは意見が合わず、アンジェラは、「それならほかの男に頼む」と啖呵を切る。エミールは動揺するが、勝手にしろと答えてしまう。
アンジェラもアンジェラで、彼女の住むアパルトマンの下の階に住む、駐車場のパーキングメーター係のアルフレード(ジャン=ポール・ベルモンド)に頼むと宣言する。アルフレードはなにかとアンジェラにちょっかいを出していた。ある日、アンジェラはついにアルフレードと寝てしまう。
深夜、アンジェラがエミールと住むアパルトマンに帰ってくる。ふたりはベッドで黙り込む。エミールは、試しに自分の子をつくってみようとアンジェラを抱く。フレッド・アステアのダンスミュージカルが幕を閉じて終わるように、アンジェラは寝室のカーテンを閉じてみせる。
エピソード
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●赤を基調としたセットのデザイン[4]を手がけたのは、本作の2年後の1963年に製作されたジャック・ドゥミ監督の﹃シェルブールの雨傘﹄で部屋ごとに色彩を変えてみせるベルナール・エヴァンである。
●バーの場面にカメオ出演する女優ジャンヌ・モローに、フランソワ・トリュフォーと撮影中の﹃突然炎のごとく﹄について、アルフレードを演じるジャン=ポール・ベルモンドが尋ねるシーンが存在する。
●モローとベルモンドが主演したマルグリット・デュラス原作の﹃雨のしのび逢い﹄、トリュフォー監督の﹃ピアニストを撃て﹄に言及するセリフがあり、﹁早くしてくれ、テレビで﹃勝手にしやがれ﹄が見たいんだ﹂とのセリフも存在する[4]。
●喫茶店のシーンでベルモンドがカリーナに聞かせる女性と手紙の話は、1965年公開のオムニバス作品﹃パリところどころ﹄の一篇﹃モンパルナスとルヴァロア﹄のストーリーにそのまま使われている。
●アルフレードのフルネーム﹁アルフレード・リュビーシュ Alfred Lubitsch﹂は、映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの名と、同じく映画監督のエルンスト・ルビッチの姓を合わせたものである。
●前年の1960年に公開されたルイ・マル監督の﹃地下鉄のザジ﹄に主演したカトリーヌ・ドモンジョは、﹁ザジ﹂のまま出演している。
●モローが登場するバーのオーナー役で出演しているエルネスト・メンツェルは、本作でスクリーンに登場以来、ゴダールの﹁ジガ・ヴェルトフ集団﹂時代の﹃ウラジミールとローザ﹄︵1970年︶に至るまで、ゴダール作品の常連となる。
スタッフ
編集- 監督・脚本 : ジャン=リュック・ゴダール
- 原案 : ジュヌヴィエーヴ・クリュニー
- 撮影監督 : ラウル・クタール
- 美術 : ベルナール・エヴァン
- 録音 : ギ・ヴィレット
- 編集 : アニェス・ギユモ、リラ・エルマン
- 音楽 : ミシェル・ルグラン
- 挿入歌 :
『のらくらもの』 Tu t'laisses aller (作・歌:シャルル・アズナヴール、編曲・演奏:ポール・モーリア、1960年発売)
『アンジェラのシャンソン』 Chanson d'Angela (歌:アンナ・カリーナ) - スクリプター : シュザンヌ・シフマン
- スチル写真 : レイモン・コシュティエ
- 助監督 : フランシス・コニャニー
- 製作主任 : フィリップ・デュサール
- プロデューサー : ジョルジュ・ド・ボールガール、カルロ・ポンティ
- 製作 : ローマ=パリ・フィルム、ユーロ・インタナショナル・フィルム
キャスト
編集- ジャン=クロード・ブリアリ (エミール・レカミエ)
- アンナ・カリーナ (アンジェラ)
- ジャン=ポール・ベルモンド (アルフレード・リュビーシュ)
- ノンクレジット
脚注
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(一)^ “Une femme est une femme”. IMDb. 2022年9月14日閲覧。
(二)^ Hoberman, J.. “A Woman Is a Woman” (英語). The Criterion Collection. 2020年7月11日閲覧。
(三)^ “MoMA | Jean-Luc Godard’s A Woman Is a Woman”. www.moma.org. 2020年7月11日閲覧。
(四)^ abcDVDシネフィル・イマジカサイト内の小沼純一のコラム﹁第22回 ルグランそしてゴダール﹂の記述を参照。
関連項目
編集外部リンク
編集- Une femme est une femme - BiFi (フランス語)
- 女は女である - allcinema
- 女は女である - KINENOTE
- Une femme est une femme - IMDb(英語)