弁済(べんさい)とは、債務者(又は第三者)が債務の給付を実現すること。債権(債務)の本来的な消滅原因である。

  • 民法について以下では、条数のみ記載する。

概説

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弁済の提供

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弁済の提供の意義

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弁済の提供とは、債務の履行について債権者の協力が必要で債務者単独では給付行為を完了させることができない性質のものである場合に、債務者が債務の本旨に従って給付の実現のために必要な準備を行い債権者の協力を求めることをいう[1]。債務の内容が一定の場所に建物を建てないといった不作為債務のように債務者の一方的履行行為で足りる場合には弁済の提供は問題とはならない[1]

弁済の提供の要件

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  1. 現実の提供または口頭の提供がなされること
  2. 債務の本旨に従った弁済の提供であること(給付の内容・時期・場所などが問題となる)

弁済の提供の方法

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493


493

弁済の内容

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  • 特定物の引渡し(483条
    債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。2017年の改正前の民法483条は「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。」と定めていたが、債務者が契約時から引渡時まで保存義務を尽くさなかったときでも引渡時の現状で引き渡せば免責されるとの誤解を生む可能性があるなどの問題があり、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき」の文言の追加が行われた[2]

弁済の時期

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弁済すべき時期(履行期)については412条に規定されている。

弁済の場所

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4841






弁済の時間

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48422017202041520[2]520

弁済の費用

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弁済の費用については485条に規定されている。

弁済の提供の効果

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債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる(492条)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で履行遅滞を理由とする損害賠償責任を免れるという弁済の提供の効果が明確化された[2]

弁済の主体

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弁済の主体と第三者弁済

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4741





4742201747322017202041[3][2]

47432017202041[3][2]



4744

20174731[2]

弁済による代位

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499使501

2017202041499500[2]

弁済受領者

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無権限者に対する弁済

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478479

478

2017478使2017202041[2]

20174804782017202041480478[2]

支払の差止めを受けた第三債務者の弁済

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差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる(481条1項)。この場合、第三債務者からその債権者に対して求償権を行使することは可能である(481条2項)。

弁済の効果

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基本的効果

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47320172017202041[3][2]

499使501

受取証書の交付と債権証書の返還

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4861631201632017202041[2]


487

弁済として引き渡した物の取戻し

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475

476

476[2]4762017477

預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済

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債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる(477条)。実務上の運用をもとに2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で新設された[2]

弁済の充当

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(一)
4902017202041[2]

(二)48813488

(三)4884489

489148924892017481 

代物弁済

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債権者との間で債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約することを代物弁済という。この場合には弁済と同一の効力を有し債権は消滅する(482条)。代物弁済は有償契約であるから目的物の瑕疵につき担保責任が問題となり、また、当事者間で目的物に瑕疵がある場合には代物弁済による債務の消滅の効果を否定して本来の債務を復帰させる特約がなされることもある。

弁済供託

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債権者が弁済の受領を拒むとき及び弁済を受領することができないとき、弁済者が過失なく債権者を確知することができないときには、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託所に寄託してその債務を免れることができる(494条)。これを供託(弁済供託)という。

出典

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  1. ^ a b 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、194頁
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響” (PDF). 公益社団法人リース事業協会. 2020年3月17日閲覧。
  3. ^ a b c 改正債権法の要点解説(8)” (PDF). LM法律事務所. 2020年3月17日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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