年金記録問題(ねんきんきろくもんだい)とは、日本の公的年金記録においてオンラインデータ(社会保険庁職員がコンピュータで入力した年金記録)に誤りや不備が多いこと等が明らかになった問題である[1][2][3][4]「消えた年金」問題とも呼称される[5][6]

概要

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年金手帳。1997年以降からのブルー手帳には基礎年金番号が記載される

199791便31818199810200618

20071921920072006186500040001000

5000[7]5000

[8]



2007196

調10

20071972009213

政界への影響

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2007721200921

1200719216[9][3][10][11]

21[3][4]

45200912[12]

[13]201020[14][15]

[1][16][17][18]1[11]

経緯

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200420042006

200719
216 - 2006186509511036028506022153014調[19][20][21][22]5000[23]

313 - 201022

330 - 3 - 4200113420071926218474

48 - 3000

525 - [24]645000[25]

614 - 調

622 - 8

630 - 

75 - 

720 - 沿西222200921[26]201022216[27]

729 - 21!

83 - 

1031 - 

1212 - 3106.1 %退124024.3 %便110021.6 %244548 %2007192008203

12 - 

200820
1 - 

6 - 

10 - 調調

11 -調1993519957199911200416[28]

12 - 

200921
331 - 

5 - 

6 - 2

918 - 69000

9 - [29]

10 - 

2010221 - 

2012 24- 52

2018303 - 

特例法等の成立

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年金時効特例法

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2007年(平成19年)6月30日、年金時効特例法議員立法で成立。従来の法(国民年金法第102条、厚生年金保険法第92条)では、年金給付を受ける権利は、5年を経過したとき時効によって消滅するとされていた。複数の加入記録がありながら、それを請求していなかった場合は、請求時から5年分しかさかのぼって給付を受けることができなかったが、この法律により受給できるようになった。

厚生年金特例法

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2007年(平成19年)12月、厚生年金特例法が成立。事業主が従業員から保険料を給与天引きしていたにもかかわらず、その事業主が手続きに必要な書類などの届出を行っておらず納付をしていなかった場合に、給与天引きがあったことが第三者委員会で認定されれば、厚生年金の額に反映されることとなった。今までの厚生年金保険法では、保険料の徴収権が時効消滅となる2年を経過している場合は、年金給付に反映されることができなかった[30]

年金遅延加算金法

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2009年(平成21年)5月、年金遅延加算金法成立、2010年(平成22年)4月30日施行。社会保険庁の記録漏れで年金が未払いになっていた場合に、物価上昇分を上乗せして支給する。加算金は過去5年を超す未払い期間が対象で、5年以内の人には支払われない。[31][32]

年金延滞金軽減法

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2009年(平成21年)5月、年金延滞金軽減法が成立し、2010年(平成22年)1月から施行された。企業が厚生年金などの社会保険料を延滞した際の利息を引き下げる。[33][34]

年金記録問題発生の原因と責任

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2007年(平成19年)6月14日、総務省は行政評価・監視機能の一環として、年金記録問題発生の経緯、原因や責任の所在等について調査・検証を行う年金記録問題検証委員会松尾邦弘座長)を発足させ、年金制度や情報システム等に詳しい外部有識者が、年金記録の管理・事務処理に関して、今回問題化した諸事項について、その経緯、原因、責任等の調査や検証を行った。

2007年(平成19年)10月31日、同委員会は検証結果の報告書を公表し、年金記録問題の原因と責任の所在について以下のとおり報告した。[35][36][37]

問題発生の根本にある問題

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報告書では、年金記録問題発生の根本は、社保庁を管理する立ち場である厚生労働省、及び社会保険庁の年金記録管理に関する基本的姿勢にあると結論づけ、その原因として次の要因を挙げている。

厚生労働省及び社会保険庁の年金管理に関する基本的姿勢
国民の大切な年金に関する記録を正確に作成し、保管・管理するという組織全体としての使命感、国民の信任を受けて業務を行うという責任感が、厚生労働省及び社会保険庁に決定的に欠如していた。
年金記録の正確性確保に対する認識の問題
社会保険庁は、年金制度改正・記録管理方式の変更等の際に、年金記録の正確性を確保することの認識が不十分であり、関係する記録・資料を適切に管理していくという組織としての責任を果たしてこなかった。
裁定時主義の問題
社会保険庁は、年金の納付記録は本人がよく知っているはずだから、本人が問い合わせてきた場合のみ、記録を調べて間違いが有れば修正すれば良いという安易な方針(裁定時主義)で業務を行っており、厳密な姿勢を欠いたまま業務を継続した。

問題発生の直接的要因

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5000














問題発生の間接的要因

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[38]

[1]A41052005[3]

501975-1984[1]1979542002504515115000[2][3]

172005



IIIIIIIIIII[3]



22[3]

問題発生の責任の所在

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今後の教訓

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報告書の最後では今回の調査・検証を踏まえた上で、今後の主な教訓を次のように述べている。

社会保険庁のガバナンスの確立
意識改革などによって事務処理の誤りを是正する仕組み、被保険者の協力を確保する仕組みの構築などの改革を推進する。
システムの刷新
委員会の検証結果を踏まえ、第三者機関による点検・評価を受けつつ、システムの刷新を推進する。
横領等から得られた教訓
防止策の検討・改善など、内部事務管理態勢の構築に努める。
国民の監視と協力
国民も自身の年金記録に関心を持ち、疑問が生じた場合は社会保険事務所にて国が保有する記録を確認するなど国民の側の監視と協力も重要である。

年金記録問題への取組

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20071975[39]200921331[40]

便

1900794375 %750694 %

2010223[41]

5095140327.5 %退157931 %便61112 %調50710 %99519.5 %



3



調2009213調

便

70002009214



2010201122232

関連項目

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年金記録確認第三者委員会

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200719622[42]



850

2007196257



200921627調2[43]

200921122520092132008202009213545135427︿99.9 %124446101022 (81 %) [44]

年金記録確認第三者委員会報告書

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27調2009︿216



200719620092132591131410795468595 (67 %) 40 %

1200719575220082099.95 %



調

 



86

14








(一)

(二)








(一)

(二)


(一)

(二)

(三)







調

年金記録の管理

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[45]195833195025195732[46]19744919892

19979111
  • 1974年(昭和49年)- オンラインシステムの導入開始。
  • 1986年(昭和61年)- 基礎年金制度の導入。
  • 1989年(平成元年)2月 - オンラインシステム全体が完成。
  • 1997年(平成9年)1月 - 基礎年金番号の導入。
  • 1998年(平成10年)- 基礎年金番号への国民年金番号・厚生年金番号の統合を開始。
  • 2004年(平成16年)- 毎年、同一人調査を行い、基礎年金番号の重複を解消。年金個人情報提供の充実により、事前に記録を確認する機会を拡大。
  • 2006年(平成18年)- 年金記録相談の強化体制

基礎年金番号導入前

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簿簿簿





簿簿

調183528415 %簿



19744919892

基礎年金番号導入

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目的と経緯
日本の年金制度は、民間サラリーマン対象の厚生年金保険、公務員対象の各種共済組合自営業者等対象の国民年金に分かれていたが、1986年(昭和61年)に全国民共通の基礎年金が導入された。また、各年金制度を通じた記録を把握し、効率化やサービスの向上を図る必要があり、1997年(平成9年)1月に各年金制度共通の基礎年金番号が導入された。
この基礎年金番号は、1997年(平成9年)1月1日現在で加入していた年金制度の年金番号が使われている。従って、1997年(平成9年)1月1日現在、国民年金に加入していた人は国民年金番号が、厚生年金に加入していた人は厚生年金番号がそのまま基礎年金番号になった。また、各共済組合の加入者には新しく10桁の基礎年金番号が付番された。
年金記録の整理・統合
過去の年金番号の基礎年金番号への統合
基礎年金番号導入前に加入していた過去の年金記録(国民年金、厚生年金等の年金番号)を基礎年金番号に統合するため、基礎年金番号を郵送で本人に通知した時に複数の年金番号を持つ人は迅速に折り返し申し出ることとされた。申し出のあった人(約916万人)及び名寄せ処理(基礎年金番号と国民年金及び厚生年金保険の情報(氏名・性別・生年月日の3項目一致者))により複数の年金番号を持つと思われる人(約902万人)の計1818万人に対して、1998年(平成10年)度から2006年(平成18年)度までに照会を行い、1147万人から回答を受け記録の統合処理を進めた。
基礎年金番号の重複
基礎年金番号の重複を避けるため、氏名・性別・生年月日で確認しているが、婚姻等で氏名を変更した場合等に重複するケースがあるため、2004年(平成16年)度以降は毎年、同一人調査(氏名、性別、生年月日、住所の4項目一致者)を行い、重複解消の処理を行っている。
20歳到達者で国民年金の加入届が提出されなかった場合は職権による適用が行われるが、20歳以前にアルバイトなどで働いたことによる厚生年金の記録があったり、遺族年金を受給していた場合は既に基礎年金番号を保有しているため、基礎年金番号が重複する場合がある。

記録の確認

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  • ねんきん特別便[47]:2007年(平成19年)12月 - 2008年(平成20年)10月まで
  • ねんきん定期便:2009年(平成21年)4月 -
  • インターネットによる記録照会サービス:2006年(平成18年)3月 -
  • 58歳到達者に対する年金加入記録のお知らせ及び年金見込額の提供:2004年(平成16年)3月 -
  • 裁定請求書の事前送付:2005年(平成17年)10月 -
  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の活用:2005年(平成17年)11月 -

関連項目

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社会保険庁改革と年金記録問題

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社会保険庁改革関連法

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[48]200719630201022

[49][50]

[51][52][53][54]

[55]

200820729[56]退[57]

[58]2009211228251525[59]19961231退[60]

自治労国費協議会と社会保険庁との「覚書」「確認事項」について

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5000454515

200719616

1

使

200719616



200719611[61]



使



2004162005171



451515000197954使VDT[62]




外国での年金記録問題

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日本で起きた年金記録問題は外国でも発生している。アメリカでは年金財源を集める内国歳入庁と、年金を給付する社会保障庁との間に、米企業従業員の給与記録の不一致が10兆円以上に上ることが明らかになった。両者の記録の整合性をあわせるのに8年間要した[要出典]

脚注

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注釈

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  1. ^ 民主党の前身である、左派第一野党であり続けた日本社会党は国民識別番号制度反対、民主党時代も政権交代で国家運営を経験するまでは反対してきた。しかし、2011年7月に菅直人首相と与党民主党の社会保障改革検討本部は、社会保障と税の共通番号大綱を決定した。共通番号の名称を「マイナンバー」とすることと関連法案提出も決めた。

出典

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(一)^ abcasahi.com  - . www.asahi.com. 2023622

(二)^ ab  

(三)^ abcdefg -   . suematsu.org (200776). 2023622

(四)^ abmain. www.jfss.gr.jp. . 2023622

(五)^  . . 20231226

(六)^  .  (201924). 20231226

(七)^ 16 []

(八)^ ASCII.jp (1/5)

(九)^  |  |  imidas - .  imidas. 2023622

(十)^ PIN 4使,2007 11

(11)^ ab: - Fujitsu  

(12)^ 2009.12.25

(13)^ 320

(14)^ JILPT. www.jil.go.jp. 2023622

(15)^ asahi.com  - . www.asahi.com. 2023622

(16)^  | Powered by Ameba. gamp.ameblo.jp. 202068   

(17)^ .  (201171). 202068

(18)^  . . 202068

(19)^ 調

(20)^ 調

(21)^ 調

(22)^ 166  1

(23)^ 5000調  200719217

(24)^ 

(25)^ 

(26)^ 2009211218

(27)^ 

(28)^ 調

(29)^ 20092193

(30)^  - e-Gov

(31)^ 

(32)^  - e-Gov

(33)^ 

(34)^ 

(35)^ . . 20111262009817

(36)^ 

(37)^ 

(38)^ 調

(39)^ 

(40)^ 

(41)^ 5095

(42)^ 

(43)^ 

(44)^ 

(45)^ 166   23 192007529

(46)^ 50 

(47)^ 便 Q&A

(48)^ 

(49)^ 20071959

(50)^ 16619

(51)^ 200719425

(52)^ 1901

(53)^ 2008520

(54)^ 231031

(55)^ 2007196282008520.

(56)^ 調200921430

(57)^  []

(58)^ 200921427

(59)^ 

(60)^ 退   20102215 

(61)^ 

(62)^ VDT

参考文献

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  • 野村修也 『年金被害者を救え』 岩波書店、2009年、ISBN 978-4-00-024302-5

関連文献

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  • 「年金記録問題に寄せて(編集委員会より)」『レコード・マネジメント』第54巻、記録管理学会、2007年、66-90頁、doi:10.20704/rmsj.54.0_66 

関連項目

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外部リンク

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