日本手話

手話言語のひとつ
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JSL: Japanese sign language1[1][2][3][4] [5]
日本手話
使われる国 日本の旗 日本
使用者数
言語系統

日本手話語族韓国手話台湾手話と系統関係あり)

言語コード
ISO 639-3 jsl
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歴史的な記述

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187811[6]31

使[6][2]

192312使[6][7]140

[8][9][10]

言語学的な概観

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[11]

(2017)(p.260)[2]

[12]OK140[6]

[13]

使NMM[14]NMs[7], NM[4]

SOV[7][4][15][4]

[7][4]

CLCL[16](2005)CL[17]

[4]

[7]3[4]

語彙のタイプ

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CL

(一)CL

(二)

(三)

(四)

(五)CL

(六)

(七)

(八)

(九)[18][19][20][21][22]

(十)CL

画像を用いた具体例

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表したい物(道具,食材,物体など)を取り扱っている様子(CL表現)が関連しているもの

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人や動物の動きと関連しているもの

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表したい物の形が関連しているもの(CL表現含む)

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指さし・手で触れる動作が関連しているもの

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手指を何かに見たてたもの(CL表現含む)。

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指文字が関連しているもの

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漢字,マーク,デザインが関連しているもの

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数の表現が関連しているもの

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キュード・スピーチと関連しているもの

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CL表現の組み合わせ

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文法

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平叙文・疑問文・否定文・条件文など、音声言語に標準的にみられる構文が存在するが、その文法的特性は非手指表現によって示されることが多い[7][4]

非手指表現(NMM/NMS/NMs)

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NMS(non-manual signalsNMM( Non-manual markers)

平叙文と肯否疑問文の非手指表現

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YES-NONM

勝つ 





:

勝った? 



:




WH疑問文の非手指表現

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WHWH





名前は? 








非手指表現-名詞の並列のうなずき

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下の画像は名詞ごとにうなずきがあらわれている。このとき各名詞は並列化されている。つまり「赤と紫と黄色と緑」となる。



下の画像では,名詞ごとにうなずきがあり,二つの名詞の並列とみなされる。「わたしと父」となる。


2[14]

口型(口形)

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使[23][4]

[24]

(一)Po() -

(二)Pa() - [4]

(三)Pa++() -

(四)U () -[4] 

(五)Ta() - ()

(六)nmm -[7]

見えた 



1. Po()-Po 

見た! 



2. Pa()-Pa 

たくさん見えた 



3Pa++()-Pa++()使

見る 



4U ()U ()

見た 



5Ta(Ta(

見る,問題なく 



6nmmnmm n m m






一致動詞

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 (agreeing verbs)[25]

[4]



一致動詞「渡す」「受け取る(渡される)」

一致動詞を動かす方向の違いは「能動態」「受動態」とは関係なく,「私があなたを見る」「あなたが私を見る」というように、人物間の関係を示すものである。

相(そう)

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[4]
  1. 歩く(歩く動作を継続する)- 継続相「ずっと歩く」
  2. 歩く(歩く動作を断続的にくり返す) - 習慣相「いつも(定期的に)歩く」
  3. 歩く(一歩あるく直前でやめる) - 直前相「歩く前にやめた」 

同様に「見る」を小さい動きで繰り返すと「定期的に見る」という「習慣相」となる[4]

男性・女性を表す表現

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McBurney (2002: 341 16) 使[26]




脈をはかる+世話をする+女性=看護婦(かんごふ)

脈をはかる+世話をする+男性=看護士(かんごし)

×脈をはかる+世話をする+中性単数=看護(する人)は用いられない。

脈をはかる+世話をする+中性複数=看護師




++

「通訳者」のように、日本語では性による形態の違いがないものの中にも性の違いを表現するものがある。

「通訳者」の場合   画像:通訳 + 女性

画像:通訳 + 男性

画像:通訳 + 人々

男性優位傾向

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英語のManが一般的な『人』『人間』を意味する場合があるように日本手話においても『男』の手話が『人』『(ある行為の)対象』として用いられる場合がある。以下がその例。

画像:「通う」「助ける」

「通う」は女性や人のCLで表現する場合もあるが、一般的には男性単数の形で表現する。聴者の手話通訳者などがこれに違和感を覚え、女性の手形で表現することがあるが,当のろうコミュニティでは『妹は女子校に通う』という時でも男性単数の形が違和感なく用いられる。

画像:「女子校に通う」

画像:「男子校に通う」

日本手話の社会学的性差

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使




下の画像は「おいしい」という意味の三つの手話表現である。

日本手話における数

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catcatsamat/amant/

121



使++++



CL

CL11

121314

15

CL

下の画像は「同じ」「一致」「作る」という手話である。この表現だけでは説明される主語が単数なのか複数なのかははっきりしない。ところが,下段のように地面に平行に円の軌跡を描いて「同じ」「一致」「作る」と示される時,必ず主語は複数形であることが前提となる。つまり,この形を見れば対象が伏せられていても「たくさんの〜」「多くの〜」の事だと了解できるという意味である。

画像:複数のものを示す述語「同じ」「一致」「作る」。

その他の表現

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JSLJSL使

L使

NS (Nihon Shuwa)使NSJSL使



NHK手話ニュースにおいてかつて聴者キャスターが用いていた表現(日本語をおりまぜる表現)は文法的に見て日本手話とは異なるとされていた。しかし、1990年代後半より、最近ではろう者のキャスターが日本手話でニュースを伝える形式に変更された[14]

2018年度より、NHKみんなの手話も、日本手話を主とした扱う内容に一新された(番組テキスト18年度~19年度「監修者あいさつ」による)。なお、同局の「中途失聴者・難聴者のためのワンポイント手話」では、日本語対応手話が使用されている。

脚注・参照

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  1. ^ 神田和幸(編著) (2009). 基礎から学ぶ手話学. 福村出版 
  2. ^ a b c 末森明夫 (2017). 自然科学と聾唖史. 斉藤くるみ(編著)『手話による教養大学の挑戦』. ミネルヴァ書房. pp. 241-284. 
  3. ^ 木村晴美・市田泰弘 (1995). “ろう文化宣言”. 現代思想 (3月号). 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 松岡 和美 (2015). 日本手話で学ぶ手話言語学の基礎 (2 ed.). くろしお出版 
  5. ^ 伊藤政雄・竹村 茂著『世界の手話・入門編』(廣済堂出版・ケムの本のコーナー参照)付録「日本語対応手話とは」から採録した。
  6. ^ a b c d 伊藤政雄 (1998). 歴史の中のろうあ者. 近代出版. p. 227 
  7. ^ a b c d e f g 岡典栄・赤堀仁美 (2011年5月30日). 日本手話のしくみ. 大修館書店 
  8. ^ Wayne H Smith (2005). “Taiwan Sign Language research: an historical overview”. LANGUAGE AND LINGUISTICS-TAIPEI 6.2: 187-215.. 
  9. ^ Sagara, Keiko (2014). The numeral system of Japanese Sign Language from a cross-linguistic perspective. MA thesis, University of Central Lancashire (修士論文、セントラルランカシャー大学) 
  10. ^ Susan Fischer and Qunhu Gong (2010). Variation in East Asian sign language structures. in Diane Brentari (編)Sign Languages. Cambridge University Press. pp. 499-518 
  11. ^ Robert Adam (2012). Language Contact and Borrowing. in Roland Pfau, Markus Stainbach, Bencie Woll (編)Sign Language: An International Handbook. De Gruyter Mouton. pp. 841-862. 
  12. ^ Susan Fischer (1978). Sign Language and Creoles. in Patricia Siple (編)Understanding Language through Sign Language Research. Academic Press. pp. 309-331. 
  13. ^ Dany Adone (2012). Language Emergence and Creolisation. in Roland Pfau, Markus Steinbach, Bancie Woll (編) Sign Language: An International Handbook. De Gruyter Mouton. pp. 862-889 
  14. ^ a b c 木村晴美 (2011). 日本手話と日本語対応手話(手指日本語):間にある「深い谷」. 生活書院 
  15. ^ 市田 泰弘 (2005). “手話の言語学 第6回・空間の文法(2)代名詞と動詞の一致”. 言語 34: 90-98.. 
  16. ^ 木村晴美・市田泰弘 (2014). はじめての手話. 生活書院. p. 26 
  17. ^ 市田泰弘 (2005). “手話の言語学第2回・図像性をめぐる2つの世界ー手話の音韻形態構造(1)「CL構文」”. 月刊『言語』 2005年2月号: 94-100.. 
  18. ^ キュード・スピーチの英訳英辞郎 on the WEB:アルク
  19. ^ キュード・スピーチ(きゅーどすぴーち)とは - コトバンク
  20. ^ 「聴覚障害」とは?>2 コミュニケーション方法
  21. ^ NETAC Teacher Tipsheet 23cuedspeech.pdf キュードスピーチ - 筑波技術大学
  22. ^ 全国ろう児をもつ親の会>DEAF KIDS NEWS>2001/08 「検証 ろう教育用語『キュード・スピーチ』」
  23. ^ 市田泰弘 (2005). “手話の言語学第8回・頭の位置と口型ー日本手話の文法(4)「知覚動詞・思考動詞、非手指副詞」”. 月刊『言語』 2005年8月号: 92-98.. 
  24. ^ 坂田加代子・矢野一規・米内山明宏 (2008). 驚きの手話「パ」「ポ」翻訳:翻訳で変わる日本語と手話の関係. 星湖社 
  25. ^ 市田 泰弘 (2005). “手話の言語学第6回・空間の文法ー日本手話の文法(2)「代名詞と動詞の一致」”. 月刊『言語』 2005年6月号: 90-98.. 
  26. ^ Susan Lloyd McBurney (2002). Pronominal reference in signed and spoken language: Are grammatical categories modality-dependent?. Meier, Kearsy Cormier, David QWuinto-Pozos (eds.) Modality and structure in signed and spoken languages. Cambridge University Press. pp. 329-369 

関連項目

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外部リンク

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