線型独立
定義
編集自明な線型関係
編集線型従属
編集
線型関係
において、ある iで ci≠ 0 であるとき、v1, v2, ..., vnは線型従属︵一次従属︶であるという。このとき viは残り n− 1 本のベクトルの線型結合で表せる。このとき v1, v2, ..., vnが張る線形空間の次元は n未満になる。
線型独立
編集ベクトル v1, v2, …, vn が線型従属でないときこの集合は線型独立(一次独立)であるという[1][2]。つまり、スカラー a1, a2, …, an に対して
このとき、どのベクトルも残り n − 1 本が張る線形部分空間外のベクトルである。
「基底 (線型代数学)」および「正則行列」も参照
基本的な性質
編集
●線型独立であるベクトルたちはどれも、零ベクトルでない。
●零ベクトルでないベクトル v≠ 0 に対して一元集合 {v} は線型独立である。
●線型独立な集合の部分集合は線型独立である。特に空集合は線型独立である。
●線型独立な集合は基底に拡張できる。
●ベクトル空間全体を生成する集合の線型独立な部分集合全体は極大元︵=基底︶をもつ。
例
編集数ベクトル空間における例
編集R2 のベクトル
編集- のベクトル (1, 1) と (−3, 2) は線型独立である。
実際 λ1, λ2 を二つの実数として
を λ1, λ2 に関して解けば λ1 = 0, λ2 = 0 がわかる。
行列式による別法
別の方法は
の n個のベクトルが線型独立であることとベクトルをその列として取ることによって形成される行列の行列式が 0 でないことは同値であるという事実を用いる。
この場合、ベクトルによって形成される行列は
列の線型結合を次のように書ける
ある 0 でないベクトル Λ に対して AΛ = 0 かどうかに興味がある。これは Aの行列式に依存し、それは
行列式が 0 でないから、ベクトル (1, 1) と (−3, 2) は線型独立である。
別のやり方で、n 座標の mベクトルを持っていて m < n とする。このとき Aは n×m 行列であり Λ は m成分を持つ列ベクトルで、再び AΛ = 0 に興味がある。前に見たように、これは n方程式のリストに同値である。A の最初の m列、最初の m方程式を考えよう‥ 方程式の全リストの任意の解は減らされたリストでも解でなければならない。実は、︿i1,...,im﹀ が m行の任意のリストであれば、方程式はそれらの行に対して正しくなければならない。
さらに、逆も正しい。つまり、m ベクトルが線型従属かどうかを m行のすべての可能なリストに対して
かどうかをテストすることによってテストできる。︵m = nの場合、これは上のようにただ1つの行列式を要求する。m > n ならばベクトルは線型従属でなければならないことは定理である。︶この事実は理論に値する‥ 実用計算においてはより効率的な方法が利用可能である。
R4 のベクトル
編集R4 の次のベクトルは線型従属である。
実際、線型関係式
において、λ3 を任意として
とすれば非自明な関係を得る。
標準基底ベクトル
編集V = Rn とし V の次の元を考える:
これら e1, e2, …, en は線型独立である。実際、a1, a2, …, an は R の元として
は、すべての i ∈ {1, …, n} に対して ai = 0 を意味する( に注意する)。
函数空間における例
編集- 実変数 t の関数全体の成すベクトル空間 V において関数 f(t) = et, g(t) = e2t ∈ V は線型独立である。
実際、a, b を二つの実数として、線型関係式 af+ bg= 0 は tの任意の値に対して a(f(t)) + b(g(t)) = aet+ be2t= 0 が成り立つことを意味する。et は常に 0 でないから、これで両辺を割れば bet= −a となり、右辺は tに依存しないから左辺 betもそうであり、b = 0 が必要とわかる。このとき a= 0 である。
線型従属関係のなす射影空間
編集ベクトル v1, …, vn の間に成り立つ線型従属関係 (linear dependence) の係数ベクトルとは、線型関係式
を満たす n 個のスカラーを成分に持つベクトル (a1, …, an) で少なくとも一つの成分が 0 でないものをいう。そのような係数ベクトル (a1, …, an) が存在するとき、n 個のベクトル v1, …, vn は線型従属である。
n 個のベクトル v1, …, vn の間に二つの線型従属関係式が与えられたとき、一方の係数ベクトルが他方の非零定数倍となっているならば、これら二つは同じ線型関係を記述するものとなるから、これら二つを同一視することには意味がある。この同一視の下で、v1, …, vn の間の線型従属関係の全体は射影空間を成す。
脚注
編集- ^ Dunford & Schwartz 1988, p. 36.
- ^ Friedberg, Insel, Spence, Stephen, Arnold, Lawrence. Linear Algebra. Pearson, 4th Edition. pp. 48-49. ISBN 0130084514
- ^ Halmos 1995, pp. 36–37.
- ^ Halmos 1995, p. 37.
参考文献
編集- Dunford, Nelson; Schwartz, Jacob T. (1988). Linear Operators Part I: General Theory. Wiley Classics Library. Wiley. ISBN 0-471-60848-3. MR1009162. Zbl 0635.47001
- Halmos, Paul R. (1995). Linear Algebra Problem Book. Dolciani Mathematical Exposition. 16. The Mathematical Association of America. ISBN 0-88385-322-1. MR1310775. Zbl 0846.15001
関連項目
編集外部リンク
編集- 『ベクトルの一次独立,一次従属の定義と意味』 - 高校数学の美しい物語
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Linear independence”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- Weisstein, Eric W. "Linearly Dependent Functions". mathworld.wolfram.com (英語).
- Tutorial and interactive program on Linear Independence.