両脇の4名はアコライト(侍者)。中央左側の司祭はアルブと白のストールを着用し、中央右側の主教は白のチャジブルと金色のマイター(主教帽)を身に着け、牧杖(パストラル・スタッフ)を持っている。
立教学院諸聖徒礼拝堂
典型的・伝統的な聖公会の聖堂内観
草津聖バルナバ教会
門の上に聖母マリアの彫像がある
●歴史的主教制[14]︵監督制︶‥聖職者を平信徒と明確に区別し、主教︵Bishop︶・司祭︵Priest︶・執事︵Deacon︶の三聖職位制を保っており、使徒継承性を自認している。
●管区・教区があり、必ず主教によって統括される。
●修道士・修道会制度が存在する︵一旦ほとんど廃止され、19~20世紀になってから復興された[15]︶。アングリカン・ベネディクト会、アングリカン・フランシスコ会などが存在する[16]。
●聖職者の祭服︵アルブ、ストールなど︶や、聖堂の様式︵ほとんど必ず中央奥に祭壇と聖卓がある︶などはカトリックとほとんど同じである。
●教会暦の概念があり、時節によって定められた祭色を用いる。
●礼拝の式次第は、幾度もの変遷を遂げているが、現行のものは特に聖餐式に関しては、おおよそローマ典礼︵英語版︶︵カトリック教会のミサ︶に準拠した形式となっている。また、朝の祈りでは﹁ザカリヤの賛歌﹂︵ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス︶、夕の祈りでは﹁マリヤの賛歌﹂︵マニフィカト︶、就寝前の祈りでは﹁シメオンの賛歌﹂︵ヌンク・ディミティス︶が主に歌われまたは唱えられるのは、カトリックの聖務日課から受け継いだ形式である。
●聖餐には原則的に薄い種無しパン︵ホスチア、ホースト、ウェファー︶とアルコール発酵したぶどう酒が用いられる。
●儀礼の中では聖餐を何よりも重要視し、原則的に毎主日︵教会によっては毎朝︶聖餐式が行われる。
●教名︵一般的には洗礼名、または教名の風習がない教派からの転会者は堅信に際して名付けられる︶、また教父母の風習がある。
●多くの教会で、﹁聖○○教会﹂という具合に、特定の守護聖人に因んだ名が付けられる。
●公祷の祈祷文は、原則的に全て成文祈祷であり、一冊の祈祷書にまとめられている︵一冊の祈祷書に全ての成文祈祷を載せるという形式は、聖公会発祥である︶。
●主日の聖餐式や週日の朝・夕の祈りでは、その日に朗読される聖書箇所︵聖書日課︶が全て定められている。
●逝去者のための祈り︵レクイエム︶を行う。
●グレゴリオ聖歌の旋律に由来する聖歌がある[注3]。
以下、主に﹁ハイ・チャーチ﹂と呼ばれる教会に見られる特徴
●聖像を認めており、イエス・キリストや聖母マリア、その聖堂の名前の由来になった聖人、天使などの絵や彫像を、祭壇やステンドグラス、バナー︵旗︶などに用いる場合がある。
●聖餐を伴う礼拝︵聖餐式︶のことを、英語ではMass︵ラテン語の﹁ミサ‥Missa﹂と同語︶と呼ぶことがあり、日本語でも稀にミサと呼ぶ場合がある[18]。
●礼拝中、特定の箇所で十字を切る、ひざまづく、立つなどの決まった所作がある。
●陪餐の際に、分餐者の前でひざまづいて、分餐者の手から信徒の口で聖体を拝領する場合がある。
●礼拝中、振り香炉︵抹香︶やトーチ︵行列用の手持ち蝋燭︶を用いる場合がある。
●礼拝中の全てまたはほとんどの祈祷文を、旋律を付けて朗唱︵唱詠司式/チャンティング‥Chanting/コーラル・サーヴィス‥Choral Service︶する場合がある。こうした盛式聖餐式を、﹁ハイ・マス﹂︵High Mass︶・﹁荘厳ミサ﹂︵Solemn High Mass︶や﹁歌ミサ﹂︵Sung Mass︶と呼ぶ。対義語は﹁ロー・マス﹂︵Low Mass︶である。
●現在、多くの聖公会は、司式者と会衆が向かい合って行われる対面司式であるが、司式者が祭壇に向かい会衆に背を向けて司式する背面司式を行う場合も稀にある。
●司祭に対する敬称として、神父・Fatherと呼ぶ場合がある。︵多くの教会では﹁司祭﹂あるいは﹁○○先生﹂と呼ぶ。稀に牧師と呼ぶ場合もあるが、聖公会における﹁牧師﹂︵Rector︶はプロテスタントの用語とは異なり、カトリックにおける主任司祭、即ち、その教会の管理者たる司祭という意味である。︶[20]︵詳細は﹁牧師#呼称と役職の教派別対照表﹂および﹁牧師#聖公会の牧師﹂を参照︶
●ローマ教皇の首位権を認めず、また聖公会内に教皇のような絶対的指導者を置かず︵カンタベリー大主教が名誉としての筆頭聖職者ではある︶、原則として国や地域ごとに置かれた各教会のゆるやかな連合体︵アングリカン・コミュニオン︶として成り立っている。
●聖母マリアの無原罪の御宿り・被昇天の教義を認めない。
●煉獄の教義を認めない。
●聖餐式は、聖職も信徒も等しく、原則的にパンとぶどう酒の二種陪餐︵両形色︶である。
●﹁聖体﹂を、聖餐式の中で飲食する以外の目的で用いること︵聖体賛美式など︶は行わない。
●礼拝は原則的に各国語で行われる。
●公会議は、第4回目のカルケドン公会議まで、あるいは第7回目の第2ニカイア公会議までのみを認める[注4]。
●聖職者の結婚を認める︵修道士を除く︶。
●個人懺悔を義務とせず、懺悔のあとに行動による﹁償い﹂も課さない。
●離婚・再婚を認める。
●︵ここ数十年の間の変革であるが、︶女性聖職者を認めつつある。
これら﹁プロテスタント的な側面﹂の多く︵ことに前半部分︶は、正教会とも類似する要素である。
●旧約聖書はいわゆる﹁続編﹂を含み、礼拝中の聖書朗読でも普通に旧約聖書として扱われるが、﹁この部分を元に教義を建てない﹂という原則も持っており、聖典とは区別している[23]。
●聖奠︵サクラメント︶は洗礼・聖餐の2つとするが、堅信・聖職按手・聖婚・個人懺悔・病人の按手および塗油の5つを﹁聖奠的諸式﹂︵Sacramental Rites︶と称して、実質的にはサクラメントに準ずる、聖霊の恵みを伴う神秘的儀礼として認めている。
●聖餐論に関しては個々の聖職者や信徒によって様々な理解がなされているが、概して、カトリックの全実体変化説も、一部プロテスタントの象徴説からも距離を置く。ただ、聖餐式の式文中には、﹁イエス・キリストの肉を食し、その血を飲み﹂や﹁主イエス・キリストの体/血﹂などといった語句が用いられている。︵詳細は﹁聖餐論#聖公会の聖餐理解﹂を参照︶
●聖人の概念があり、聖人崇敬を否定しないが、義務ともしない。また、聖母マリアや聖人に対する執り成しの祈りも公祷においてはほとんど行わない︵但し、聖歌隊によるアンセムでは、﹁アヴェ・マリア﹂などが歌われることがある︶。聖公会として公式に記念する聖人は、宗教改革以前の人物がほとんどで、カトリックや正教会などよりも限定的である。しかし、これは認めないということではなく、﹁諸聖徒の交わり﹂として尊重している。例えば、教名に、カトリックでのみ、あるいは正教会でのみ認定されている聖人や福者らの名を用いることなどもできる場合がある。
●﹁聖書のみ﹂ではなく、﹁聖書﹂・﹁伝統﹂・﹁理性﹂の3つを信仰の柱とする[24][注5]。3つめの﹁理性﹂をも重んずるところから、自由主義神学的な信仰理解をする者が比較的多い。
●礼拝中に歌われる歌︵Chant, Hymn︶のことを、漢語では﹁讃美歌﹂ではなく﹁聖歌﹂と訳す︵カトリック、正教会と同様︶が、その多く︵英語では"Hymn"と称するもの︶は、ルター派のコラールに類似した、全会衆で唱和する平易な歌である。︵但し、聖歌隊によるアンセムでは、カトリック由来のラテン語多声聖歌も歌われることがある。︶また、祈祷文や詩編唱の唱詠において︵英語では"Chant"と称するもの︶は、アングリカン・チャント︵英語版︶と呼ばれる、ホモフォニックかつメリスマをあまり用いずシラビックで平易な和声聖歌の伝統がある[27][28]。
世界各地にある聖公会の諸教会の世界的連合を、アングリカン・コミュニオン(Anglican Communion)という。アングリカン・コミュニオンは原則的にイングランド国教会を母体とし、カンタベリー大主教の名誉的地位を認めるが、カンタベリー大主教には自管区以外の全聖公会に対する裁治権はない。聖公会の教会組織は、国や地域ごとに独立して自治を行う形態をとっている[35]。
聖公会系の教会は、大英帝国の植民地の拡張に伴い、米国聖公会(米国における教会員はおよそ300万人である)、カナダ聖公会(信徒数は200万人を越えている)、オーストラリア聖公会 (オーストラリア全人口の約20%がこの教会に所属している)、ニュージーランド、南アフリカ等で信者を増やしていった。現在ではイギリス国外における信者の人数が、国内の信者の人数を上回っており、その大部分はアフリカで占められる[注 6]。
(一)^ もっぱら漢語圏において用いられる名称。
(二)^ Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕΙ ΥΜΑΣ/η αλήθεια ελευθερώσει υμάς/古典ギリシア語発音‥ヘー アレーテイア エレウテローセイ ヒュマース/現代ギリシア語発音‥イ アリーシア エレフセロースィ イマース
(三)^ 日本聖公会の﹃古今聖歌集﹄には、グレゴリオ聖歌﹁天使ミサ﹂︵De Angelis‥デ・アンジェリス︶および﹁クレド3﹂に由来する聖餐式の唱詠がある[17]。
(四)^ 第7回目の第2ニカイア公会議を認めるか否かは、聖公会内でも見解が分かれる[21][22]。
(五)^ ﹁伝統﹂については、いわゆる伝統主義・保守主義という意味ではなく、決められたマニュアルを盲目的に守ることとは別物である。﹁伝統や儀式はどこにおいても同一である必要はない。伝統は常に多様で、国、時代、人々の慣習に従って変化することもある﹂︵﹃イングランド国教会の39箇条﹄第34条︶。﹁理性﹂については、個人の合理的考えというニュアンスではなく、﹁共同体が経験する事柄﹂という意味と捉える[26]。
(六)^ スコットランド聖公会、2016年での教会会員は3万1656人。日本聖公会、信者数はおよそ5万8千人。フィリピン聖公会、信徒数は推定12万5千人。東南アジア聖公会、信徒数は約9万8千人。北インド教会は北インドで、聖公会、長老派教会、会衆派教会、メソジスト教会などが合併してできた、キリスト教プロテスタントの信徒が多く参加する合同教会、信徒数は150万人。南インド教会は長老派教会、オランダ改革派教会、会衆派教会、メソジスト教会、聖公会が合併してできた、信徒数は380万人である。エルサレム・中東聖公会、信者数は3万5千人である。
(一)^ “香港聖公會 - 教省歷史”. 香港聖公会. 2021年9月12日閲覧。︵中国語︶
(二)^ Paul Kwong; Philip L. Wickeri (2015), “Chapter18: Sheng Kung Hui - The Contextualization of Anglicanism in Hong Kong”, in Mark David Chapman; Sathianathan Clarke; Martyn Percy, The Oxford Handbook of Anglican Studies, Oxford University Press, ISBN 978-0198783022, https://books.google.co.jp/books?id=JijYCgAAQBAJ&pg=PA256&lpg=PA256&dq=literally+means+%22Holy+Catholic+Church%22+in+Chinese.+It+was+the+Chinese+name+used+in+the+Church+since+mid-nineteenth+century&source=bl&ots=8gq7rvDwB9&sig=ACfU3U2Pv9lLiztONzx1h4nsc6A8QOKuIw&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwivgYWBtNDyAhVIE6YKHWdGD1AQ6AF6BAgREAM#v=onepage&q&f=false ︵英語︶
(三)^ ﹃キリスト教大事典 改訂新版﹄教文館、1977年 改訂新版第四版、p.609
(四)^ 英国聖公会の39箇条(聖公会大綱) - ウェイバックマシン︵2008年1月22日アーカイブ分︶
(五)^ 聖公会綱領の説明 - ウェイバックマシン︵2006年8月21日アーカイブ分︶
(六)^ abcd“聖公会とは”. 浜松聖アンデレ教会. 2021年9月12日閲覧。
(七)^ The Compass Rose - ウェイバックマシン︵2010年11月22日アーカイブ分︶︵英語︶
(八)^ “日本聖公会 北関東教区 川越キリスト教会”. kawagoe-seikoukai.org. 2019年2月8日閲覧。 “聖公会は、イギリス国教会を母体とするプロテスタントの教会です。”
(九)^ ab“聖公会とは”. 日本聖公会 東京教区. 2021年9月12日閲覧。
(十)^ 西原 2016, p. 50.
(11)^ 竹内 2018, p. 8.
(12)^ 西原 2016, p. 50-52.
(13)^ ab“今から聞けない!キリスト教講座・聖公会って?”. ウイリアムス神学館. 2021年9月12日閲覧。
(14)^ ab“聖公会とは”. 堺聖テモテ教会. 2021年9月12日閲覧。
(15)^ w:Dissolution of the monasteries
(16)^ w:Anglican religious order
(17)^ ﹃古今聖歌集﹄日本聖公会管区事務所、1959年、41-48頁。
(18)^ “2015年クリスマス案内”. 聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂 (2015年11月29日). 2021年9月12日閲覧。
(19)^ 竹内 2018, p. 295-296.
(20)^ “Q&A‥1.神父さんと 牧師さんの違い、また司祭さんとは何ですか。”. 日本聖公会東京教区. 2021年9月12日閲覧。
(21)^ “The Church of England and the Seventh Council”. Project Canterbury: Bringing Anglican History Online. 2021年9月12日閲覧。︵英語︶
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(23)^ “Q&A‥6.聖書には何が書かれているのですか。”. 日本聖公会東京教区. 2021年9月12日閲覧。
(24)^ “月島聖公会について”. 月島聖公会. 2021年9月12日閲覧。
(25)^ 西原 2016, p. 45-50.
(26)^ “聖公会ってなんなの?”. ジーザス・クライスト ファンクラブ. 2021年9月12日閲覧。
(27)^ “第49回定期・慈善演奏会 ルネサンス期イギリスの聖堂の響き...イートン・クワイアブックのポリフォニーから国教会アンセムまで”. 東京スコラ・カントールム (2007年11月3日). 2021年9月12日閲覧。
(28)^ “YouTube: Five hours of glorious Psalms (Anglican chant) - Guildford Cathedral Choir (Barry Rose)”. 2021年9月12日閲覧。
(29)^ 西原 2016, p. 37-45.
(30)^ “イギリスの古楽︵その3︶Sarum Chant”. Frei aber einsam. 2021年9月12日閲覧。
(31)^ “聖公会祈祷書小史”. 聖アンデレ主教座聖堂. 2021年9月12日閲覧。
(32)^ 竹内 2018, p. 6-7.
(33)^ 英国聖公会の39箇条(聖公会大綱)|熊本聖三一教会ホームページ - ウェイバックマシン︵2008年1月22日アーカイブ分︶
(34)^ 竹内 2018, p. 7-9.
(35)^ ﹃キリスト教大事典 改訂新版﹄教文館、1977年 改訂新版第四版、p.54
(36)^ ﹃岩波キリスト教辞典﹄p.635 聖公会の項目 輿石勇
(37)^ 下楠昌哉ほか著﹃イギリス文化入門﹄p.137 ISBN 978-4-38405-566-5
(38)^ “カトリック・聖公会・福音ルーテル 日本で初の合同礼拝開催 第二バチカン公会議﹁エキュメニズム教令﹂50年記念”. キリスト新聞 (2014年12月25日). 2021年9月12日閲覧。
(39)^ ホセ・ヨンパルト﹃カトリックとプロテスタント-どのように違うか-﹄サンパウロ、1968年、1.その歴史の違い、p.42
(40)^ “聖公会のロザリオと祈り方について”. 日本聖公会北海道教区 札幌キリスト教会. 2021年9月12日閲覧。
(41)^ “YouTube: Spasi, Gospodi, Iyudi Tvoya (O Lord, Save Thy People)”. 2021年9月12日閲覧。
(42)^ “在日ウクライナ正教会”. 2021年9月12日閲覧。
(43)^ “St Mary & St Mark Coptic Orthodox Church Japan (Facebook)”. 2021年9月12日閲覧。︵日本語︶
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