計量文献学
概要
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文献の著者の異同や時代の推定、同一著者の著作内容・思想と文体との関係の解析などを目的とする。数値化し解析する対象としては、例えば単語または文の長さ、特定の単語または品詞の使用率、同義語や句読点の使い方などがあるが、言語、書記体系、文の種類︵散文・韻文︶や内容によって適したものが異なるので、場合に応じて選択する必要がある。つまり統計解析方法が特に定まっているわけではないため、対象に応じて様々な手法が用いられるのである。
計量文献学の手法がはじめて用いられたのは15世紀のことであり、このときは翻訳の比較で使用された[1]。1851年にはインド出身の数学者オーガスタス・ド・モルガンが文章の長さを作者特定のためのスタイルとして使用できる可能性を予想した[1]。﹁計量文献学﹂という語がはじめて使用されたのは1890年のことであり、この年にポーランド出身の哲学者ヴィンツェンティ・ルトスワフスキが著作"Principes de stylométrie"でstylométrie︵計量文献学のフランス語名︶という語をはじめて用いた[1]。ルトスワフスキは1898年に計量文献学の手法を使い、プラトンの対話篇の時系列特定を試みた[2]。その後、種々の統計学的手法が開発されるのに伴い、それらが応用されるに至っている。特に現代ではコンピュータの利用が普通になり、遺伝的アルゴリズムやニューラルネットワークも応用されている。また狭山事件のように犯罪捜査︵脅迫状など︶に応用された例もある。
出典
編集- ^ a b c Partyka, Jaclyn; Wermer-Colan, Alex. "Stylometry Methods and Practices". University Libraries, Temple University (英語). 2021年7月17日閲覧。
- ^ Lutosławski, Wincenty (1898). "Principes de stylométrie appliqués à la chronologie des œuvres de Platon". Revue des Études Grecques (フランス語). 11 (41): 61–81. doi:10.3406/reg.1898.5847. ISSN 0035-2039。
参考文献
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●村上征勝﹃真贋の科学 計量文献学入門﹄朝倉書店︿行動計量学シリーズ﹀、1994年9月。ISBN 4-254-12646-8。
●伊藤瑞叡﹃なぜいま三大秘法抄か 計量文献学入門﹄隆文館︿三大秘法抄の研究 三部作 その1﹀、1997年8月。ISBN 4-89747-333-0。
●伊藤瑞叡﹃三大秘法抄なぜ真作か 計量文献学序説﹄隆文館︿三大秘法抄の研究 三部作 その2﹀、1997年11月。ISBN 4-89747-334-9。
●村上征勝﹃シェークスピアは誰ですか? 計量文献学の世界﹄文藝春秋︿文春新書﹀、2004年10月。ISBN 4-16-660406-6。