正則行列
逆行列が存在する行列
(逆行列から転送)
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正則行列︵せいそくぎょうれつ、英: regular matrix︶、非特異行列︵ひとくいぎょうれつ、英: non-singular matrix︶あるいは可逆行列︵かぎゃくぎょうれつ、英: invertible matrix︶とは、行列の通常の積に関する逆元を持つ正方行列のことである。この逆元を、元の正方行列の逆行列という。例えば、複素数体上の二次正方行列
が正則行列であるのは ad− bc≠ 0 が成立するとき、かつ、そのときに限る。このとき逆行列は
で与えられる。
ある体上の同じサイズの正則行列の全体は一般線型群と呼ばれる群を成す。多項式の根として定められる部分群は線形代数群あるいは行列群と呼ばれる代数群の一種で、その表現論が代数的整数論などに広い応用を持つ幾何学的対象である。
定義
編集例
編集
次の複素数体[注釈2]の元を成分にもつ行列 A, Bを考える。
このとき AB= E= BAを満たすので、A は正則行列で[注釈3]、B は Aの逆行列である。
一方、B に注目すれば Bも正則行列で、A は Bの逆行列である。
また次の行列 Nは逆行列をもたないので、正則ではない。
特徴づけ
編集性質
編集n 次正則行列 A、B について次が成り立つ。
判定法
編集「ガウスの消去法」も参照
関連項目
編集脚注
編集注釈
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(一)^ Aが正方行列でなくとも正則性は次のように定義できる‥
﹁m×n 行列 Aに対して、AB = Emかつ BA= Enを満たす n×m 行列 Bが存在するとき、 Aを正則という﹂。
しかし、このとき
より m= nとなるので、結局正則行列は正方行列なのである。
(二)^ この例の場合は体の標数が 2でなければ何でもよい
(三)^ ただし、この Aはユニモジュラ行列ではない
(四)^ ただし無限次の場合を考えると、たとえば
のように AB= Eであるが BA≠ Eとなる例がある[3]。
(五)^ 数値解析・精度保証付き数値計算においてはニュートン法、Krawczyk法、大石-Rump法などのように近似逆行列が必要となる場合が少なからずある。高次元行列の逆行列を求める手法としてSchurの補元を用いる方法などが知られている。
出典
編集- ^ 斎藤 1966, p. 41.
- ^ a b 斎藤 1966, p. 48.
- ^ Lam, T.Y. (2001). A First Course in Noncommutative Rings (Second ed.). Springer. p. 4. ISBN 978-0-387-95325-0
- ^ a b c 斎藤 1966, p. 52.
- ^ 斎藤 1966, p. 60.
- ^ 斎藤 1966, p. 85.
- ^ 斎藤 1966, p. 71.
- ^ a b Stewart, G. W. (1998). Matrix Algorithms. 1. SIAM. p. 38. ISBN 978-0-898714-14-2
- ^ 斎藤 1966, p. 53.
- ^ 斎藤 1966, p. 89.
- ^ 山本哲朗『数値解析入門』(増訂版)サイエンス社〈サイエンスライブラリ 現代数学への入門 14〉、2003年6月。ISBN 4-7819-1038-6。
参考文献
編集- 斎藤正彦『線型代数入門』(初版)東京大学出版会、1966年。ISBN 978-4-13-062001-7。