3.5インチ光磁気ディスク オリンパス製
5.25インチ光磁気ディスク ソニー製
外付け型3.5インチMOディスクドライブ
︵バッファロー製MO-PL640U2︶
3.5インチMOディスクドライブ︵内蔵型︶
特徴
ISO規格のMOディスクは着脱可能な記憶媒体︵リムーバブルメディア︶である。3.5インチメディアと、より寸法の大きい5.25および8インチメディアが存在する。
フロッピーディスク2枚分の厚さを持つプラスチックのカートリッジに収められている。このため記録面は指紋や傷などから保護され、むき出しのメディアより指紋や傷がつきにくい。
またドライブの利用に際しても特にデバイスドライバは不要で[注釈1]、データの読み書きもフロッピーディスクと同様の感覚、つまりライティングソフトなしで行うことができる。
下位互換性があるために旧来のメディア︵例‥128 MBメディア︶を最新のドライブ︵例‥2.3 GB対応ドライブ︶で利用することも可能である︵この逆は容量の問題で不可︶。ただし、初期規格のメディアを最新規格のドライブで書き込むことができない等の制限はある。
3.5インチメディアにおいては、2000年以降Media IDと呼ばれる著作権保護機能が備わったメディア / ドライブの搭載が推進され[4]、順次発売された。
DVD-RAMと違ってMS-DOSのデフォルトでデフラグが可能で頻繁な同期化、バックアップ用のメディアとして適している[注釈2]。
容量
一般的にパソコンで用いられる3.5インチタイプのメディアでは、128 MB (ISO/IEC 10090)・230 MB (ISO/IEC 13963)・540 MB (ISO/IEC 15041)・640 MB (ISO/IEC 15041)・1.3 GB (ISO/IEC 17346)・2.3 GB (ISO/IEC 22533)の容量がある。
GBクラスの容量を持つものは﹁GIGAMO︵ギガモ︶﹂と呼ばれる[5]。なおGIGAMOにはオーバーライトメディアはない。
5.25インチメディアは3.5インチメディアが普及する以前に発売され、円盤の大きさはコンパクトディスクとほぼ同じで通常はDVD-RAMカートリッジとほぼ同形状のカートリッジケースに収められているが使われる機器によりケースに収めていない場合もある。また5.25インチメディアにはWrite Once Read Manyタイプや医療専用メディアも存在する。パソコン及びワークステーションやサーバで用いられ最大で9.1 GB︵両面︶の容量がある。
アクセス方法
シークができないクイックディスクに対し、MOはランダムアクセスが可能である。
3.5インチの640 MBまでのMOは内周からアクセスを開始するが、GIGAMOでは外周からアクセスする。また、5.25インチメディアではディスク両面に記録する。
記録方式
光磁気変調方式を採用している。トラックはフロッピーディスクやHDD︵ハードディスクドライブ︶の同心円状とは違い、螺旋状になっている。
また3.5インチMOはこれまでに幾多の技術を盛り込んで大容量化してきた。その技術のすべてを以下に挙げ、解説する。
●128 MB‥マークポジション記録、CAV、512バイト/セクタ、グルーブ記録
●230 MB‥ZCAV
●640 MB‥マークエッジ記録、2048バイト/セクタ
●1.3 GB‥MSR
●2.3 GB‥MSRとランド&グルーブ記録
MSRは磁気超解像 (Magnetically induced Super Resolution[6]) のことで、フロントマスクとリアマスクによってレーザのビームスポット︵照射面積︶を狭めることで記録密度、読み取り精度を向上することができる。また素材が摂氏150度になったときだけ記録層の磁気を再生層に転写する中間層を設け、読み取り精度を高めている。しかしこの読み取り方式の特性上、従来よりも読み取り用レーザの出力が約7倍に高まることになり、結果として書き換え回数を激減させてしまった。
データ転送方法
当初のMOディスクへの書き込みはディスクの1回転毎に以下の3工程を行っていたため、ヘッド - MO間の物理的なデータ転送速度が遅かった。
●磁性層のデータ消去︵フォーマット︶
●磁性層へのデータ記録︵書き込み︶
●磁性層に書かれたデータの検証︵ベリファイ︶
寸法の大きい5.25インチタイプでは複数のレーザーを照射し、複数の工程を同時に行い物理的なデータ転送速度を速くしたドライブもある。
現在では以下のような方法で物理的な書き込み速度を向上させると共に、MOドライブに搭載されるキャッシュメモリの大容量化とキャッシュコントローラの改良によるデータ転送の改善も図られている。
●﹁消去﹂と﹁記録﹂を1回転中の工程で行う技術︵ダイレクトオーバーライト。対応するドライブとメディアを組み合わせて使用した場合のみ有効︶
●ディスクの回転速度向上︵1996年末で最大3,600 rpm → 2005年末で最大6,750 rpm︶
●ディスクのデータ密度向上
耐久性
MOの耐久性は次のような要因による。
●カートリッジに収められていることで、傷や埃によるダメージが少ない
●ディスクの両面を覆う分厚いポリカーボネート製の保護層により傷へのさらなる耐久性が高まる
●記録時のレーザーの出力がCDやDVDと比較するとはるかに弱いため、ディスクへのダメージが少ない
●加熱しないと磁気の影響を受けないため、磁石を近づけただけではダメージを受けることはない
●CD-RやDVD-Rとは違い、紫外線でほとんど劣化しない
●フロッピーとは違ってヘッドが接触することがないため、ディスクやヘッドが摩耗することはない
その他のメディアが抱える弱点に悩まされることが少ない点が、MOに対する根強い支持に繋がっている。
ただしドライブの構造上、レーザー岐路にプリズムを使っているため、喫煙場所やほこりの多い室内で使うと書き込み読み取りエラーが出て、耐久時間内にもかかわらず故障となることが多い。分解して清掃すると回復するが、かなりの熟練を要する。また高温下で使うとディスクの冷却が遅くなるため、書き込み速度の低下が起こる[注釈3]。
ドライブ自体は10万時間の耐久性がある。
各メディア製造メーカーの加速劣化試験によるとデータ保持寿命は推定50年から100年とされ、現在もMOの耐久性に匹敵するメディアは存在しない事からプロユースを中心とした需要は根強い︵使用環境にもよるが、メディアよりもドライブの寿命の方が早いことすらある︶。なお、MOの書き換え回数はハードディスクドライブをも上回る1000万回とされる︵GIGAMOは100万回以上︶。対するハードディスクドライブは100万回以上とされる。
音声録音用とデータ記録用の光磁気ディスクがある。
Hi-MDはMDの上位互換のメディアで、MDと同じサイズで1 GBの容量を実現している。磁壁移動検出方式 (DWDD: Domain Wall Displacement Detection) を採用している。
HS (Hyper Storage)は、1995年にソニーが開発した光磁気ディスクである。3.5インチフロッピーディスクとほぼ同じサイズのカートリッジに納められており、容量は約650 MB。
HSの開発にあたっては日立製作所と3Mが協力している[8]。
将来的には2002年頃までに約2.5 GBに容量を段階的に拡大する予定だった。しかし、当時普及していたMOとの互換性がない上にMOと比べてドライブやメディアが高額だったため普及しなかった。ドライブ、メディアとも製造・販売は終了しており、開発も停止されたままである。
AS-MOはAdvanced Storage Magneto Opticalの略で5インチの光磁気ディスク。シャープを含む16社で開発され、直径120 mmの片面ディスクで6 GBの大容量記録を実現した[9]。ASTC(advanced storage technical conference)が1998年4月に規格を策定した[10]が、製品化はされなかった[11]。
シャープとソニーによって2000年3月に発表された[13][14]。
1990年代後半から将来迎えるであろうハードディスクの記録密度の限界が問題視され、各メーカーでは高速リードライト、高記録密度の光磁気ディスクを研究している。
磁区拡大再生技術 (MAMMOS: Magnetic AMplifying Magneto-Optical System) といった記録再生技術や、青紫色レーザを利用することで5.25インチサイズで最大200 GBの容量が見込まれている。このうちMAMMOSは従来のレーザ波長で20 GB/12 cm、現時点でのDWDDは従来のレーザー波長で3 GB/5 cmの容量とされる。なおDWDDの技術目標は100 GB/12 cm、青紫色レーザで200 GB/12 cmを見込んでいる。
2013年11月25日に発表されたこれまでとは全く違った技術である光スイッチング磁石を用いた記録方式もある。ディスクとしての媒体で供給できるのかまだ不透明であるが、平方インチあたり30 GB記録可能でありブルーレイディスクを大きく超える容量になる。