「十字架の道 (リスト)」の版間の差分
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1曲目 王の御旗 ({{lang-la|Vexilla regis}}) |
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調性記号は[[ニ短調]]だが、[[教会旋法]]による中世の[[イムヌス|ヒムヌス]]﹃{{仮リンク|王の御旗|en|Vexilla_regis}}﹄を用いているのであまり意味はない。フォルテで、3オクターブの[[ユニゾン]]によるオルガンの短い前奏のあと、同じくユニゾンの合唱によるヒムヌスが歌われる。この冒頭の3音 (D-F-G) は﹃十字架の道﹄の中では[[十字架]]を象徴する音型として用いられており、以後移調・転回・変形されて頻繁に現れる<ref name="ondine"/>。ユニゾンの合唱の後、簡単なオルガンによる後奏と、4声のソロによる演奏で終わる。4声のソロには後半、簡単なオルガンの伴奏がついている。
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ヒムヌス『王の御旗』は8節からなっているが、ここで歌われるのは第1節と第3節のみである<ref name="hyperion"/>。使われている歌詞は中世のオリジナルのものではなく、17世紀に改訂された方の歌詞を使っている。 |
ヒムヌス『王の御旗』は8節からなっているが、ここで歌われるのは第1節と第3節のみである<ref name="hyperion"/>。使われている歌詞は中世のオリジナルのものではなく、17世紀に改訂された方の歌詞を使っている。 |
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2曲目 1留:イエス、死刑を宣告される |
2曲目 1留:イエス、死刑を宣告される |
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フォルティッシモ、3オクターブのユニゾンのオルガンによる劇的な独奏で始まる。音楽のほとんどはオルガン独奏で、最期に短く、無伴奏の[[バス_(声域)|バス]]独唱により、[[ピラト]]のモノローグが歌われる。}}
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3曲目 2留:イエス、十字架を背負う |
3曲目 2留:イエス、十字架を背負う |
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{{Indent|レント、調性記号なし、4分の3拍子 |
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半音階的に動き調性感のまったくないオルガン独奏が続き、途中に無伴奏の[[バリトン]]独唱で短く、Ave, ave, crux! と歌われた後、再び半音階的なオルガンの独奏 (メノ・レント、4分の4拍子) になる。}} |
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4曲目 3留:イエス、初めて倒れる |
4曲目 3留:イエス、初めて倒れる |
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{{Indent|レント、調性記号なし、4分の3拍子 |
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テノール合唱とバス合唱によって「イエスは倒れた」と短く歌われた後、2部に分かれたソプラノ合唱とアルト合唱によって無伴奏でヒムヌス「[[スターバト・マーテル]]」が静かに歌われる。「スターバト・マーテル」は第1節だけが歌われる<ref name="hyperion"/>}} |
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5曲目 4留:イエス、[[聖母マリア]]に出会う |
5曲目 4留:イエス、[[聖母マリア]]に出会う |
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{{Indent|レント、調性記号なし、4分の4拍子 |
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オルガン独奏の曲で声楽は入らない。半音階的な動きが多く、調性感はほとんどない。}} |
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6曲目 5留:[[キレネのシモン]]、十字架を背負うイエスを手伝う |
6曲目 5留:[[キレネのシモン]]、十字架を背負うイエスを手伝う |
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{{Indent|アンダンテ、調性記号なし、2分の3拍子 |
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再び、オルガン独奏の曲。半音階的な動きが多いが、途中[[変イ長調]]に転調して一時的に調性感が戻る。しかし、コメプリマ (メノ・レント) になって再度
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調性感は希薄になる。}} |
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7曲目 6留:[[聖ヴェロニカ]] |
7曲目 6留:[[聖ヴェロニカ]] |
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{{Indent|アンダンテ、調性記号なし、4分の4拍子 |
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「聖ヴェロニカ」では、[[讃美歌]]136番「[[血しおしたたる]]」({{lang-de|O Haupt voll Blut und Wunden}}、バッハの[[マタイ受難曲]]の中の複数のコラールで利用されたことはよく知られている) が用いられていることと、コラール「血しおしたたる」の少し前にB-A-C-H (変ロ-イ-ハ-ロ) のモティーフが出現することからわかるように、[[ヨハン・セバスチャン・バッハ|バッハ]]を意識していることが明瞭である<ref>『フランツ・リスト Via Crucis、アルヴォ・ペルト 宗教合唱作品』ライナーノーツ</ref>。ここで使われているコラールは自身で和声付けしてバッハも使用しているが、『十字架の道』での和声はリスト自身によるもので、バッハによる和声付けは使われていない<ref name="ondine"/><ref name="hyperion"/>。}} |
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8曲目 7留:イエス、再び倒れる |
8曲目 7留:イエス、再び倒れる |
2021年6月10日 (木) 13:52時点における版
概要
作曲の経過
﹃十字架の道﹄の完成までにかかった時間はかなり長い。 草稿は、コロッセオの近くにあるサンタ・フランチェスカ・ロマーナ教会にリストが住んでいた1866年に作られたが[2][6]、本格的に作曲されたのはずっと後の1878年から翌1879年にかけてのことである。 1878年の晩夏、リストはひどいうつ状態に陥り、そこから逃れるためにこの曲を再び作り始めた[7]。主にローマで作曲、1879年のブダペスト滞在中に完成された[注 3]。曲の構成
全部で15曲からなる。1曲目の﹁王の御旗﹂は1種の前奏曲で、続く14曲が伝統的な﹁十字架の道行き﹂を音楽的に表現している。 15曲のうち、﹁イエス、聖母マリアに会う﹂﹁キレネのシモン、十字架を背負うイエスを手伝う﹂﹁イエス、衣を剥がれる﹂﹁イエス、十字架から降ろされる﹂の4曲には声楽が入らず、オルガン (またはハーモニウム、またはピアノ) のみの演奏である。 1曲目 王の御旗 (ラテン語: Vexilla regis) アンダンテ・マエストーゾ、ニ短調、2分の3拍子 調性記号はニ短調だが、教会旋法による中世のヒムヌス﹃王の御旗﹄を用いているのであまり意味はない。フォルテで、3オクターブのユニゾンによるオルガンの短い前奏のあと、同じくユニゾンの合唱によるヒムヌスが歌われる。この冒頭の3音 (D-F-G) は﹃十字架の道﹄の中では十字架を象徴する音型として用いられており、以後移調・転回・変形されて頻繁に現れる[5]。ユニゾンの合唱の後、簡単なオルガンによる後奏と、4声のソロによる演奏で終わる。4声のソロには後半、簡単なオルガンの伴奏がついている。 ヒムヌス﹃王の御旗﹄は8節からなっているが、ここで歌われるのは第1節と第3節のみである[6]。使われている歌詞は中世のオリジナルのものではなく、17世紀に改訂された方の歌詞を使っている。 なお、リストはヒムヌス﹃王の御旗﹄を﹃十字架の道﹄以前に1864年作曲のピアノのための小品﹃王の旗は先立ち﹄(ラテン語: Vexilla regis prodeunt)[注 4] の中で既に利用している。 2曲目1留:イエス、死刑を宣告される テンポ指定・調性記号なし、4分の3拍子 フォルティッシモ、3オクターブのユニゾンのオルガンによる劇的な独奏で始まる。音楽のほとんどはオルガン独奏で、最期に短く、無伴奏のバス独唱により、ピラトのモノローグが歌われる。 3曲目2留:イエス、十字架を背負う レント、調性記号なし、4分の3拍子 半音階的に動き調性感のまったくないオルガン独奏が続き、途中に無伴奏のバリトン独唱で短く、Ave, ave, crux! と歌われた後、再び半音階的なオルガンの独奏 (メノ・レント、4分の4拍子) になる。 4曲目3留:イエス、初めて倒れる レント、調性記号なし、4分の3拍子 テノール合唱とバス合唱によって﹁イエスは倒れた﹂と短く歌われた後、2部に分かれたソプラノ合唱とアルト合唱によって無伴奏でヒムヌス﹁スターバト・マーテル﹂が静かに歌われる。﹁スターバト・マーテル﹂は第1節だけが歌われる[6] 5曲目4留:イエス、聖母マリアに出会う レント、調性記号なし、4分の4拍子 オルガン独奏の曲で声楽は入らない。半音階的な動きが多く、調性感はほとんどない。 6曲目5留:キレネのシモン、十字架を背負うイエスを手伝う アンダンテ、調性記号なし、2分の3拍子 再び、オルガン独奏の曲。半音階的な動きが多いが、途中変イ長調に転調して一時的に調性感が戻る。しかし、コメプリマ (メノ・レント) になって再度 調性感は希薄になる。 7曲目6留:聖ヴェロニカ アンダンテ、調性記号なし、4分の4拍子 ﹁聖ヴェロニカ﹂では、讃美歌136番﹁血しおしたたる﹂(ドイツ語: O Haupt voll Blut und Wunden、バッハのマタイ受難曲の中の複数のコラールで利用されたことはよく知られている) が用いられていることと、コラール﹁血しおしたたる﹂の少し前にB-A-C-H (変ロ-イ-ハ-ロ) のモティーフが出現することからわかるように、バッハを意識していることが明瞭である[9]。ここで使われているコラールは自身で和声付けしてバッハも使用しているが、﹃十字架の道﹄での和声はリスト自身によるもので、バッハによる和声付けは使われていない[5][6]。 8曲目7留:イエス、再び倒れる 速度指定・調性記号なし、4分の3拍子 9曲目8留:エルサレムの女たち、イエスのために涙を流す アンダンテ・マ・ポコ・モッソ、 調性記号なし、4分の4拍子 10曲目9留:イエス、三たび倒れる レント、ニ短調、4分の3拍子 11曲目10留:イエス、衣を剥がれる レント、ヘ短調、4分の4拍子 12曲目11留:イエス、十字架にはりつけられる アンダンテ、調性記号なし、4分の4拍子 13曲目12留:イエス、十字架上で死す 速度指示・調性記号なし、4分の4拍子 14曲目13留:イエス、十字架から降ろされる アンダンテ・モデラート、ニ短調、4分の3拍子 15曲目14留:イエス、墓に安置される アンダンテ、ニ短調、2分の3拍子編成
●混声合唱 (部分的に独唱) ●オルガンまたはハーモニウムまたはピアノ 聖金曜日に戸外で演奏することを想定して作曲されているためオルガンかハーモニウムを伴奏にしている[5]。ただし、祈りのために室内で演奏することも許しており、その場合はピアノでもよい。初演
リストの存命中には演奏されず、作曲されてから半世紀たった1929年の聖金曜日にブダペストで初演された[7]。初演はArtur Harmat (リスト音楽院教会音楽科教授) の指揮による[6]。出版
リストはレーゲンスブルクのプステット社から楽譜を出版しようとしたが、曲が独創的過ぎて売れそうもないとの理由で拒絶され、リストの存命中には出版されなかった[6]。その後、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された旧リスト全集[注 5]の第5シリーズ第7巻に収録、1936年に出版された。リストの旧全集が﹃十字架の道﹄の初出版である。 1936年現在で、自筆譜はブダペストのハンガリー国立博物館内のセーチェーニ図書館 (後の国立セーチェーニ図書館) に収蔵されていたことがわかっている[3]。録音
オルガン伴奏による演奏
- ハイペリオン CDA67199、コリドン・シンガース、マシュー・ベスト (指揮)、トーマス・トロッター (オルガン)、2000年録音
ピアノ伴奏による演奏
- Liszt Via Crucis, Philips 416 649-2、ラインベルト・デ・レーウ (指揮・ピアノ)、オランダ室内合唱団、1984年録音
- Franz Liszt Via Crucis, Salve Regina, Vater Unser, Ave Verum Corpus, Alpha Classics ALPHA 390, ラインベルト・デ=レーウ (指揮・ピアノ)、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント
- 『フランツ・リスト Via Crucis、アルヴォ・ペルト 宗教合唱作品』Ondine ODE 1337-2、2019年、Kaspars Putniņš (指揮)、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団、Kalle Randalu (ピアノ)
ピアノ編曲版
脚注
注
出典
- ^ エヴェレット・ヘルム 著、野本由紀夫 訳『〈大作曲家〉リスト』音楽之友社、256頁。ISBN 4-276-22162-5。
- ^ a b エヴェレット・ヘルム『リスト』xi
- ^ a b c フランツ・リスト旧作品全集、第5シリーズ第7巻
- ^ エヴェレット・ヘルム『リスト』xxii
- ^ a b c d 『フランツ・リスト Via Crucis、アルヴォ・ペルト 宗教合唱作品』Ondine ODE 1337-2、ライナーノーツ
- ^ a b c d e f g h ハイペリオン CDA67199、ライナーノーツ
- ^ a b Franz Liszt Via Crucis, Salve Regina, Vater Unser, Ave Verum Corpus, Alpha Classics ALPHA 390、ライナーノーツ
- ^ “Liszt Ferenc: Via crucis The 14 Stations of the Cross”. 2021年6月8日閲覧。
- ^ 『フランツ・リスト Via Crucis、アルヴォ・ペルト 宗教合唱作品』ライナーノーツ
- ^ エヴェレット・ヘルム『リスト』p.250.
外部リンク
- 十字架の道の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト