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2012年10月31日 (水) 04:20時点における版
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美術史とは
従来の美術史は、巨匠・天才が遺した傑作について研究・記述するものであり、美術館に収蔵されるような、いわゆるハイ・アートが中心に扱われてきた。 近年ではこうした美術史のあり方に対する疑問も出されるようになった。美術の歴史である以上、その対象は美術であるのは当然だが、何をして美術とするかについて、様々な議論が行われるようになり、ハイアートの範疇に収まらない様々な視覚的・造形的な生産物が研究対象として選ばれるようになっている。 以下で、まず一般的︵伝統的︶な美術史から説明する。美術史へのアプローチ
美術史の方法として、作家の伝記的事実や作品の履歴の調査、作品の形態分析や図像学といったものが挙げられる。作家の経歴、作品の成立時期などの調査では、文献調査も重要であり、作品そのものも史料として扱われる。ある作品がどのような時代背景の中、誰のために描かれたか、またどのようにして今日まで伝えられてきたか、といったことを知ることは作品理解に欠かせない。作品の形態分析としては、同じ主題︵例えば聖母像︶を様々な作家がどのように表現したかを比較したり、先行作品からの影響関係などがテーマになる。図像学︵イコノグラフィー︶は、絵画作品に描かれた動植物や人物などにどのような意味が込められているか︵例‥百合の花は純潔を表す︶を読み解こうとするものである。絵画に描かれている一つ一つのものは、注文者の意向も考慮しながら慎重に選択されるのが通例であった。美術史の歴史
ヴァザーリの﹃列伝﹄ ﹃美術家列伝﹄︵1550年、第2版1568年︶は画家の伝記であるが、単なる事実の羅列ではない。ヴァザーリには芸術の頂点をなすミケランジェロの天才的な作品が生み出されるまで、どのような歴史的発展があったかを探ろうという意識がある。また、中世の美術とヴァザーリ当時の美術には断絶があることを強調し、当時の美術を古典古代の再生︵ルネサンス︶として捉えていた。 古代賛美 ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンの﹃ギリシャ芸術模倣論﹄︵1755年︶、﹃古代美術史﹄︵1764年︶はギリシア・ローマ美術を賛美し、芸術は自然を理想化すべきものであり、古代ギリシアにおいて達成されていると説いた。ヴィンケルマンの著作は各国に大きな反響を呼び、新古典主義美術の理論的支柱となった。 様式史 ハインリヒ・ヴェルフリンは﹃美術史の基礎概念﹄︵1915年︶でルネサンス美術とバロック美術を対比させ、﹁様式史﹂の概念を確立した。例えば、平面的なルネサンスに対し、奥行きのあるバロックなどの対比的な特徴を挙げた。 図像解釈学︵イコノロジー︶ パノフスキーが﹃イコノロジー研究﹄︵1939年︶で提唱した概念。絵画の背後にある作家の心理、世界観まで解釈しようとするもの。美術史のカノン
今日一般に美術史とされるものは上記のような過程を経て形成されてきたが、巨匠や天才が遺した傑作、ハイアートの発展を記述したものになっている。例えば﹁西洋美術全集﹂といった美術書を見ると、古代から中世を経て現代に至るまでの名作がルネサンス、ロマン主義、印象派などと様式ごとに分類され、歴史的に発展してきたかのように整然と記述されている。こうした美術史をカノン︵canon、正典の意味︶と呼んで批判する見方がある。従来の美術史への批判
近年の美術史においては方法論への関心も高く、社会史やフェミニズム、文芸批評といった他分野の方法論を美術史に適用する動きも活発である。作品の成立において、社会的コンテキストやジェンダー、階級などとの関わりが、きわめて重要なものとして扱われるようになってきている。![]() | この節の加筆が望まれています。 |