こも巻き
こも巻き︵こもまき、菰巻き︶とは、江戸時代から大名庭園で行われてきた害虫駆除方法で、マツカレハの幼虫︵マツケムシ︶を除去する方法のひとつ。
﹁こも﹂は漢字で書くと﹁菰﹂。マコモやワラで編んだ﹁筵︵むしろ︶﹂のこと。
以前はマコモで作っていたが、現在ではワラを使うのが一般的で﹁藁巻き﹂である。
マツカレハの中齢幼虫は、冬になると地上に降り、落ち葉の中で越冬する習性を持つ。このため、11月頃、マツやヒマラヤスギの幹の地上2mほどの高さに、藁でできた﹁こも︵菰︶﹂を巻きつける。春先に、この﹁こも﹂の中で越冬したマツカレハの幼虫を﹁こも﹂と一緒に焼却処分し、マツカレハの駆除をする。施術の時期的に冬支度のように解釈する向きもあるが、決して防寒目的ではない。
ただし、マツカレハの天敵となるヤニサシガメなども越冬場所が共通していることが多く、共々に燃やされてしまうこととなる。
この駆除法の効果と問題点を、比較検証した研究で新しいものとしては、兵庫県立大学環境人間学部准教授の新穂千賀子らが、2002年︵平成14年︶から5年間かけて姫路城で行った調査があり[1][2][3]、この研究結果よれば、こも巻きに捕まったマツカレハは僅かであり、対して害虫の天敵となるクモやヤニサシガメが大多数を占め、害虫駆除の効果は無く、むしろ逆効果であることを証明した[4]。
もっともこの研究以前から、天敵や設置方法への配慮が必要との声は、古くから上がっており[5][6]、天敵の捕殺の程度を検証し、害虫を効果的に選択するための研究も行われている[7]。
そのため、宮内庁が管理している皇居外苑や京都御苑では、既に新穂らによる研究の20年以上前の1980年代から行われておらず、浜松市も2007年︵平成19年︶から廃止し[1]、姫路公園でも例年行っていたが逆効果であることが分かったため、2015年︵平成27年︶12月から廃止した[8][9]。
脚注[編集]
(一)^ ab
“マツの﹁こも巻き﹂効果に?、捕まるのは益虫ばかり”. ヨミウリ・オンライン︵読売新聞︶. (2008年3月21日). オリジナルの2008年3月28日時点におけるアーカイブ。 2008年6月18日閲覧。
(二)^
“﹁こも巻き﹂ 害虫駆除効果ナシ…兵庫県立大調査”. ヨミウリ・オンライン︵読売新聞︶. (2008年3月21日). オリジナルの2008年9月24日時点におけるアーカイブ。 2013年5月18日閲覧。
(三)^
“マツの﹁こも巻き﹂効果に?、捕まるのは益虫ばかり ︵上記、読売新聞記事のブログ保存版︶”. 2013年5月18日閲覧。
(四)^
新穂千賀子、中居裕美、村上諒、松村和典 (2007), “姫路城のマツのこも巻き調査”, 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 51: 54
(五)^ 藤田昇 (1963), “マツカレハの防ぎ方”, 植物防疫 17: 464
(六)^ 久居宣夫 (1981), “マツのわら巻き”, 採集と飼育 43: 58
(七)^ 吉村仁志、木上昌己、矢野宏二 (1995), “バンドトラップで捕獲されたマツ害虫とその天敵昆虫とクモ : こも巻き法の再評価”, 昆蟲 63 (4): 897-909
(八)^ 害虫より益虫駆除だから…姫路城の恒例﹁こも巻き﹂廃止
(九)^ 姫路城の冬の風物詩中止 松の﹁こも巻き﹂逆効果