ウィッチクエスト
表示
![]() |
ウィッチクエストは、1991年に冒険企画局が製作したテーブルトークRPG︵以下TRPG︶のルールシステムおよび世界観設定をさす。初版のゲームデザインはわきあかつぐみ、イラストは九月姫、リプレイ執筆は星宮すみれ、ゲームマスターとシナリオ制作は奈那内さなぎが担当している。
プレイヤーは、プレイヤーキャラクター︵以下PC︶として13歳の新米魔女か、そのお供となる1歳の魔女猫となり、困っている人を助け﹁幸せさがしのお手伝い﹂をする。ほのぼのとした日常的冒険をあつかう、エブリデイ・マジックなファンタジーTRPGである。
作品概要[編集]
現代に近い、平和な世界が舞台。13歳になった魔女候補の女の子は、大魔女さまからはじめての魔女夜会のお誘いをうける。何をやっても失敗ばかりの新米魔女たちだが、お供の猫とともに、さまざまな人々と出会い、人助けをすることで成長していく。世界観と傾向[編集]
TRPGでファンタジーものというと、中世欧州風の異世界が舞台で、魔法理論や架空の宗教があり、モンスターとの戦いがあるものが多い。ウィッチクエストは、現代に近い世界を舞台に、自由な発想で魔法を使いこなし、日常的なレベルで人助けをすることをテーマとしており、きわめて遊びやすく、TRPG初心者にも勧められるのが特徴である。 舞台となる世界は、﹃ファンタジーRPGクイズ﹄や﹃百の世界の物語﹄の舞台にもなっている﹁ユキリア世界﹂の一地方となっているが、横のつながりは薄く、クロスオーバー的なネタもほとんど見られないため、他のユキリア世界関連のゲームの知識は必要ではない。システムの特徴[編集]
行為判定など基本的なルールは汎用ルールであるアップルベーシックを使用しているが、本作独自の様々なルールが多数取り入れられている。 システムとしては、新米の魔女とパートナーである魔女猫による、ほのぼのとしたファンタジーの再現に特化しており、ダイス2個とオリジナルの占いカード﹃ウィッチ・タロー﹄を使う簡単なルールながら、世界観の再現性は高いといえる。本作のあとがきにおいて、﹁魔女の宅急便﹂に影響を受けたことも語られている。 PCは魔女になるか猫になるかをまず決定し、魔女PC一人と猫PC一匹がペアを組む。人数の都合でペアが組めなかった魔女PCもしくは猫PCがいる場合、ゲームマスター演じるNPCとペアを組むことになるが、このゲームは基本的に偶数人数でプレイすることが推奨されている。 魔女PCと猫PCは使用できる魔法が全く異なる。魔女が使用できる﹁魔女魔法﹂は、アドリブで自由に考案でき、可能ならばあらゆること[1]を魔法で処理することができる。ただし、新米魔女という設定なので、失敗することも多い。魔法の判定は、﹁魔法力﹂︵魔女のパラメータで、月齢に応じて上下する︶、対象の﹁魔法を信じる力﹂︵魔法をかける対象の﹁生物﹂﹁場所﹂﹁物品﹂のパラメータ。魔法を信じる人間、魔法の力が強い場所や物品には魔法がかかりやすい︶、魔法の﹁難易度﹂︵どんな魔法をかけるかは自由だが、その威力や複雑さによって難易度が変化する︶の3つの要素によって判定値が決まり、ダイスによって最終的な成否を判定する。 一方で猫が使用できる﹁猫魔法﹂は、リストにあるもののみ使用でき、魔法ごとに決まっているMPを使用することによって発現する。こちらは効果が限定されている代わりに判定不要でMPがあれば必ず成功する。 魔女はさまざまな行動を試みることができ自由である反面、それぞれの行動の成功率が低い。いっぽう猫はパラメータも少ないが決まった行動に関しては成功が約束されている、しかし魔女や動物としか会話できないなど行動が限られており、魔女のサポートが主な役割であるという、若干玄人向けのPCであるといえる。 TRPG初心者が魔女を演じ、経験者が猫を演じてサポートするというプレイスタイルも推奨されている。 魔女と猫は、シナリオで決まったポイントを分け合うことでそれぞれ成長する。猫が魔女の行動を手助けすれば、﹁猫ポイント﹂が蓄積され、猫がレベルアップする。猫ポイントを引いた残りが魔女の経験値となり、魔女の成長に使用される。猫に助けてもらってばかりだと、魔女の成長はおそくなるルールである。新米の魔女は、猫の助けを借りなければなかなか魔法や行動が成功しないが、助けを借りてばかりでは成長できない。そうした両者の関係がシステムで規定されている。 ゲームを進行するゲームマスター側には、若干の配慮が求められる。本作は児童文学的ともいえる雰囲気を持っているため、シナリオには悪人やモンスターを倒して終了する戦闘中心の展開とは異なる工夫が必要となる。また、コンベンションなどでは、事前に、ウィッチクエストの独特な世界観をプレイヤーに説明しておくことが望まれる。本作はハックアンドスラッシュなファンタジーには向かないゲームシステムといえる。作品一覧[編集]
初版は宙出版から販売されたが現在では絶版である。しかし、ファンサークル﹁魔女の会﹂が冒険企画局よりライセンスを受けて﹁ウィッチクエスト﹂と﹁ウィッチクエスト2﹂を統合した﹁ウィッチクエスト 再編集版﹂を発行しており、RPG専門店などで入手できる。﹁魔女の会﹂は熱烈なウィッチクエスト愛好家による団体であり、精力的なサポートを展開している。ウィッチクエスト関連書籍は、九月姫や速水螺旋人らによる愛らしいイラストも魅力的。宙出版版[編集]
﹃ウィッチクエスト 小さな魔女エディス﹄ 基本ルールブック。1991年5月発行。上下巻に分かれた新書判で、上巻がリプレイ、下巻がルールブックになっている。ゲームをするだけなら下巻のみで可能。下巻の巻末にカード︵ウィッチタロー︶が添付されている。上巻 ISBN 4-391-11348-1、下巻 ISBN 4-391-11349-X。 ﹃ウィッチクエスト2エディスと猫のいない街﹄ サプリメント。1991年11月発行。上下巻に分かれた新書判で、上巻はリプレイ、下巻が追加ルール/追加データ集になっている。ゲームをするだけなら下巻のみで可能。下巻の巻末にカード︵ストラクチャーカード︶が添付されている。上巻 ISBN 4-391-11411-9、下巻 ISBN 4-391-11412-7。 宙出版版では、リプレイのプレイヤーとして、めるへんめーかー、妹尾ゆふ子、中川奈緒美、近藤功司が参加。魔女の会版[編集]
﹃ウィッチクエスト 再編集版﹄ 宙出版版の内容を再統合したバージョン。2001年発行。編集やレイアウトは全て作りかえられている。﹁リプレイブック﹂﹁ルールブック﹂﹁ゲームマスターズガイド﹂のB5判書籍三冊で構成されている。 ﹃ここからはじめるウィッチクエスト︵改定版︶﹄ プレイングガイダンスを掲載したガイドブック。2003年発行。A5判 ﹃ウィッチクエスト シナリオガイド1絵日記に消えた夏休み﹄ シナリオ集。2002年発行。 ﹃ウィッチクエスト シナリオガイド2うしなわれた未来﹄ シナリオ集。2003年発行。 ﹃ウィッチクエスト シナリオガイド3踏まれた猫のワルツ﹄ シナリオ集。2004年発行。 ﹃ウィッチクエスト シナリオガイド4線路のおもいで﹄ シナリオ集。2005年発行。 ﹃ウィッチクエスト マスタースクリーン﹄ A4判3面で構成されたマスタースクリーン。2001年発行。 ﹃ウィッチタロー&ストラクチャーカード﹄ 再編集判に同封されているカード類と同じもの。予備用のカードが欲しい人向け。2001年発行。 上記はゲームショップでも流通されている製品である。この他にも﹁魔女の会﹂ではイベント限定で多数のサプリメントが配布されているが、同人誌ベースなため完売したものは再発行されないものも多く、入手が非常に困難なものも数多い。脚注[編集]
- ^ ルールブックには「宇宙を創造する」魔法ですら規定されている。
関連項目[編集]
- ご近所メルヒェンRPG ピーカーブー - 「異なるタイプの2種のPCがペアになる」という、本作を元にしたコンセプトとゲームシステムを持つ。