シシリー・メアリー・バーカー
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シシリー・メアリー・バーカー Cicely Mary Barker | |
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誕生 | 1895年6月28日 |
死没 | 1973年2月16日 |
職業 | 挿絵画家・児童文学者 |
国籍 | イギリス |
代表作 |
『春の花の妖精』(1923) 『花の妖精』シリーズ |
ウィキポータル 文学 |
シシリー・メアリー・バーカー または シセリー・メアリ・バーカー (Cicely Mary Barker,1895年6月28日 - 1973年2月16日) は、イギリスの挿絵画家で児童文学者である。﹁花の妖精︵フラワーフェアリー,flower fairies︶﹂シリーズと呼ばれる、独自の妖精詩画集を発表した。彼女の花の妖精は、花びらで造られたような衣装をまとった少年や少女で、背中に蝶やとんぼの翅︵はね︶を付けているのが特徴である。
生涯[編集]
シシリー・メアリー・バーカーは、1895年6月28日、ロンドン南方、サリーのクロイドンで、ウォルター・バーカーとメアリ・エリノア・オスワルド︵Mary Eleanor Oswald︶のあいだの第二子として生まれた。 子供時代、シシリーはてんかんを患った。その症状は二十代になる頃にはなくなったが、シシリーは特別な配慮を家族内で受けた。両親は中産階級に属しており、病弱なシシリーに乳母を付けた。彼女は学校へは通わず、家庭教育で教養を身に付けた。屋外に出ることはなく、子供時代は読書と絵を描くことに関心があった。才能の芽生え[編集]
シシリーの才能は早くから発揮され、自身、水彩画の心得があった父親ウォルターが彼女のよき師となり、指導者となった。1908年、わずか13歳のシシリーは、クロイドン芸術協会に作品を出展した。1911年には、四つの作品に買い手が付き、彼女の前途は洋々としたものとなった。 不幸なことに、父ウォルターは1912年に41歳で逝去し、シシリーはよき指導者をなくすと共に、バーカー一家は経済的な困窮に見舞われた。シシリーの姉ドロシーは、しかし実際的な性格で、教師の資格を持っており、ドロシーが一家の生計を引き受けた。シシリー自身も、詩作品や水彩画を雑誌社に売ることで、生計を補った。花の妖精シリーズ[編集]
1917年と1918年に、シシリーは後に彼女を有名にする計画に着手した。彼女が愛してやまなかった、自然と子供たちの姿を美しい形で一つにまとめあげる計画――﹁花の妖精﹂の絵を描くことを始めた。シシリーは植物学的な正確さを求めて花々を観察し、また生き生きした子供たちの姿を活写するため、近所の子供をモデルにスケッチを描いた。 こうして、シシリーは﹃春の花の妖精︵Flower Fairies of the Spring︶﹄を作り上げたが、彼女の本を引き受けてくれる出版社が見つかったのは、1923年のことだった。ブラッキー社︵Blackie︶が、彼女の詩と妖精の挿絵、各々24作を引き受け、シシリーに25ポンドを支払った。﹁花の妖精﹂シリーズの第一作だった。 シシリーは内気な性格であったので、外の大人の世界とは隔絶して、家族に守られる生活を続けた。彼女の詩には、純粋さと無垢の要素が維持されたが、このような彼女の生活から来たものとも言えた。 1924年に、姉のドロシーは自身の児童学校を開き、シシリーと母親を連れて、同じクロイドンのなかであったが、引っ越しを行った。学校の庭にシシリーはスタジオを建て、姉の学校の生徒である子供たちをモデルに、更に多数の絵を描いた。 ﹁花の妖精﹂詩画集シリーズは、片面に妖精の絵、その対する面にシシリー作の詩を載せた形で、﹃春﹄﹃夏﹄﹃秋﹄﹃道ばた﹄﹃庭﹄﹃樹﹄﹃アルファベット﹄と七巻がブラッキー社によって出版された。しかし、1985年に、ブラッキー社は、過去の作品から絵と詩を集めて、独自に新しい本を編纂し、これを﹃冬の花の妖精︵Flower Fairies of the Winter︶﹄として出版し、花の妖精シリーズは、現在では八巻が揃っている。画家としての活動[編集]
シシリーは、﹁花の妖精﹂シリーズ以外にも、様々な挿絵を描き、詩画集や、彼女自身が創作した物語を出版した。白鳥と少女の友情を描いた﹃いぐさ川の王︵The Lord of the Rushie River︶﹄や﹃妖精の贈り物﹄などが知られる。 敬虔なキリスト教徒であったシシリーは、キリスト教関係の聖歌や詩の本の挿絵を描き、また教会のパネル画や、祭壇の装飾画などを描いた。ポストカードやグリーティング・カードの挿絵は、若い頃から最後まで描き続けた。作風は異なるが、同じ妖精画を描く画家の友人などもできた。 シシリーにとっては、しかし芸術家の友人たちよりも、家族の方が一層に親しみ深く、また重要であった。シシリーにとって悲しみであったのは、1954年に、姉のドロシーが心臓麻痺で世を去ったことだった。老いた母親と二人残されたシシリーは、家事を維持するのに精一杯で、創作活動は休止された。晩年[編集]
1950年代は、シシリーにとって最悪のときとなり、親しい友人たちの死去を見送らねばならず、更に1960年には、母メアリが世を去った。彼女は長年住み馴染んだクロイドンを出て、サセックス州へと移った。 シシリーは高齢で、視力も損ない体力も衰えてはいたが、1961年から1972年に渡り、クロイドン芸術協会の副会長を務めた。そして1973年2月16日、シシリーは77歳で逝去した。シシリーの作風[編集]
シシリーの花の妖精は、植物の正確な描写と、生き生きした子供たちの像で画期的なものであった。彼女の絵は、幻想的というより、リアリズムでもあり、ラファエル前派の芸術の影響を受けたその作品は、何よりも﹁自然﹂な描写に充たされていた。 初期に描かれ、﹃春の花の妖精﹄に納められた美しい絵である﹁プリムローズの花の妖精﹂は、当時、バーカー家で家事の仕事をしていたグラディス・タイディという名の少女をモデルに描かれた。シシリーが造った妖精のコスチュームをまとったグラディスは、花を実際に手にして、ポーズを取った。 シシリーの描く花の妖精は、甘美な美しさと純粋な童心を喚起させるが、ときに奇妙にも見えるコスチュームをまとっていて、背中に蝶やとんぼの翅︵はね︶が付いていることを除くと、普通の子供や、少年や少女の絵であった。子供たちのポーズや表情は自然そのものであった。それは、花の植物学的な正確さと共に、実際の子供たちの姿に対する、シシリーのたゆみない観察とスケッチから来ていた。作品[編集]
●﹃春の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Spring ‥Blackie 1923 ●﹃夏の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Summer ‥Blackie 1925 ●﹃秋の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Autumn ‥Blackie 1926 ●﹃道ばたの花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Wayside ‥Blackie 1948 ●﹃庭の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Garden ‥Blackie 1944 ●﹃樹の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Trees ‥Blackie 1940 ●﹃花の妖精のアルファベット﹄ A Flower Fairy Alphabet ‥Blackie 1934 ●﹃冬の花の妖精﹄ The Flower Fairies of the Winter ‥Blackie 1985 ●﹃聖歌画集本﹄ A Little Picture Hymn Book ‥Blackie ●﹃古いうたの本﹄ A Little Book of Old Rhymes ‥Blackie ●﹃子供のうたの本﹄ The Children's Book of Rhymes ‥Blackie ●﹃いぐさ川の王﹄ The Lord of the Rushie River ‥Blackie 1938 ●﹃白鳥サイモン﹄ Simon the Swan‥A Sequel to the Lord of the Rushie River ‥Blackie邦訳[編集]
偕成社 ﹁フラワーフェアリー﹂シリーズ 新倉俊一 訳 1979年 ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃はるのうた﹄ The Flower Fairies of the Spring ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃なつのうた﹄ The Flower Fairies of the Summer ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃あきのうた﹄ The Flower Fairies of the Autumn ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃アルファベットの妖精﹄ A Flower Fairy Alphabet ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃木の妖精﹄ The Flower Fairies of the Trees ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃にわの妖精﹄ The Flower Fairies of the Garden ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃みちばたの妖精﹄ The Flower Fairies of the Wayside ほるぷ出版 ﹁花の妖精﹂ シリーズ 白石かずこ 訳 1994年 ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 春﹄ The Flower Fairies of the Spring ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 夏﹄ The Flower Fairies of the Summer ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 秋﹄ The Flower Fairies of the Autumn ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 冬﹄ The Flower Fairies of the Winter ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち アルファベット﹄ A Flower Fairy Alphabet ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 木﹄ The Flower Fairies of the Trees ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 庭﹄ The Flower Fairies of the Garden ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃花の妖精たち 道ばた﹄ The Flower Fairies of the Wayside その他‥徳間書店 ●シシリー・メアリー・バーカー ﹃白鳥とくらした子﹄ 八木田宜子 訳 2002年 The Lord of the Rushie Riverエピソード[編集]
日本では、シシリー・バーカーの花の妖精は、チョコレートのおまけに付いていた、ミニチュア・カードの絵でよく知られている。参考文献[編集]
- Cicely Mary Barker 『 A Delux Book of Flower Fairies 』 Frederick Warne
外部リンク[編集]
- シシリー・バーカー:生涯と作品略述(英語)
- クロイドン・サイト (英語)
- 花の妖精・オフィシャルウェブサイト(英語)