ヘリコプターの操縦装置

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ホバリングから転送)
ヘリコプターにおける操縦装置の配置

[1] 

3[2] 調調1調

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H145 

R222




Robinson R22 

1

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G2 



CH-472[3]

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[]





ヘリコプターの操縦装置とその効果
名称 直接制御 1次的効果 2次的効果 前進飛行時の使用 ホバリング時の使用
サイクリック
(縦方向)
メイン・ローター・ブレードのピッチ角を前後方向に変更する。 スワッシュプレートにより、メイン・ローター・ディスクを前後に傾ける。 ピッチ角を機首下げまたは機首上げに誘導する。 前進速度の調整およびロール旋回の制御を行う。 前後方向に移動する。
サイクリック(横方向) メイン・ローター・ブレードのピッチ角を左右方向に変更する。 スワッシュプレートにより、メイン・ローター・ディスクを左右に傾ける。
移動方向にロールするように誘導する。 横方向への移動を行う。 横に移動する。
コレクティブ スワッシュプレートを介して、メイン・ローター・ブレードの迎え角を集合的に変更する。 全てのメイン・ローター・ブレードのピッチ角を等しく増加/減少し、機体を上昇/下降させる。 トルクを増加/減少させる。注:一部のヘリコプターでは、スロットル・コントロールがコレクティブに装備されている。ローター速度は、基本的に飛行間一定に保たれる。 ローター・ブレードのピッチ角を変更することによりパワーを調節する。 スキッド高さおよび垂直速度を調節する。
アンチトルク・ペダル テール・ローター・ブレードのコレクティブ・ピッチを変更する。 ヨー・レート(ヨー方向の速度)を変更する。 トルクおよびエンジン回転速度を増加/減少させる。(コレクティブよりも影響が小さい) サイドスリップ・アングルを調整する。 ヨー・レートおよびヘディングを制御する。

飛行状態[編集]

ヘリコプターの飛行状態には、ホバリング、前進飛行およびオートローテーションの3つがある。

ホバリング[編集]

空中で停止すること。ヘリコプターの飛行状態において最も難しいのは、ホバリングであると考えるパイロットもいる[4] 。なぜならば、ヘリコプターは、一般的に動的に不安定であり、パイロットの操作なしでは、所望の姿勢から逸脱した状態から回復することがないからである。このため、ヘリコプターを所望の位置に所望の姿勢で保持するためには、パイロットが常に操作・修正を行われなければならない。ホバリングにおけるパイロットの操縦装置の操作は、次のようになる。サイクリックは、水平面内のドリフト(前方、後方および側方への動き)を止めるために用いられる。コレクティブは、所望の高度を維持するために用いられる。テール・ローター(またはアンチトルク・システム)ペダルは、機首の方向(ヘディング)を制御するために用いられる。ホバリングの習得を困難にしているのは、これらのコントロールの相互作用である。どれか1つのコントロールを操作すると、他の2つを調整しなければならないことが多い。安定したホバリングを行うためには、コントロール入力のカップリングに精通することが必要である。

前進飛行[編集]

前進飛行においては、ヘリコプターの操縦系統は、固定翼機のそれとほぼ同じように作用する。サイクリックを前方に動かすと、機首が下がり、高度が低下して速度が増加する。サイクリックを後方に動かすと、機首が上がり、速度が低下して高度が上昇する。速度が一定の状態でコレクティブ(パワー)を増加すると上昇し、コレクティブ(パワー)を減少させると降下する。これら2つの操作を組み合わせ、コレクティブを下げながらサイクリックを後方に操作したり、コレクティブを上げながらサイクリックを前方に操作したりすると、高度を一定に保ちながら速度を変化させることができる。ペダルは、ヘリコプターと固定翼機で同じように作用し、飛行中の釣り合いを保つために用いられる。この釣り合いは、旋回傾斜計のボールが中央に位置するようにペダルを操作することによって達成される。

オートローテーション[編集]

オートローテーションを参照

差動ピッチ制御[編集]

2つの水平ローターを装備しているヘリコプターにおいては、パイロットの操縦操作に応じて姿勢を変化させるために、それぞれのローターを反対に作動させなければならない場合がある。二重反転式ローター(カモフKa-50など)のように2つのローターが1つのマストに搭載されている場合、同軸ドライブ・シャフト上に上下に配置されたローターが反対方向に回転しているため、ヨー方向の操縦は、旋回しようとしている方向に回転しているローターと反対方向に回転しているローターのコレクティブ・ピッチを同時に増減し、トルクの不均衡を生じさせることによって行われる。

タンデム・ローター(ボーイングCH-47チヌークなど)においては、反対方向に回転する2つのローターが同じ機体の別な場所に搭載され、機首部および尾部にあるマスト内に配置された別個のドライブ・シャフトで駆動されている。この形態においては、コレクティブ・ピッチの差動により、機体全体のピッチ姿勢を変化させる。パイロットがサイクリックを前方に動かして、ノーズを下げ前方に加速させようとした場合には、前方ローターのコレクティブ・ピッチを減少し、後方ローターのコレクティブ・ピッチを反対に増加させることにより、重心周りの回転が生み出される。ヨー方向の操縦は、「サイクリック」ピッチの差動によって行われる。前方ローターのサイクリック・ピッチが所望の方向に傾けられ、後方ローターが反対に傾けられると、機体はその中心を軸に旋回する。

反対に、交差反転式ローターサイド・バイ・サイド・ローター(ベル・ボーイングV-22オスプレイなど)においては、2つの大きな水平ローターが横に並んで配置されており、コレクティブ・ピッチの差動により機体をロールさせる。ヨー軸の制御は、タンデム・ローターと同様に、サイクリック・ピッチの差動により行われる。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Gablehouse, Charles (1969) Helicopters and Autogiros: a History of Rotating-Wing and V/STOL Aviation. Lippincott. p.206
  2. ^ Flying a Helicopter at helis.com
  3. ^ Tandem Rotors at www.helicopterpage.com
  4. ^ Learning to Fly Helicopters, see section titled: First Lesson: Air

関連項目[編集]