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﹃ 二百万ドルの死者﹄︵にひゃくまんドルのししゃ、Dead Man's Tale ︶は、1961年に刊行されたエラリー・クイーンの推理小説︵犯罪小説︶。クイーンのハウスネームによる、ペーパーバック書き下ろしの最初の長編。
クイーンのマネージャーが、出版社に売り込んでスタートした企画で、代筆者が執筆し、リーが監修・キャラクター原案などを担当したとされる︵﹁青の殺人﹂はダネイが監修︶[1]。
クイーン名義だが、実際にはSF作家のスティーヴン・マーロウが執筆した作品である。
●エラリー・クイーンのペーパーバック描き下ろし[2]作品の一つ。
●クイーンの本格ものとは全く作風の異なる作品。犯罪組織の内紛から東欧のスパイ戦に発展し、唐突に物語が終わる。
主な登場人物[編集]
●バーナード︵バーニー︶・ストリート - 裏世界の顔役。表向きは労働争議の仲裁などを専門にしている﹁事件屋﹂。
●エステル・ストリート - バーナードの妻。バーナードの遺言書に立腹する。
●スティーヴン︵スティーヴ︶ - バーナードの子分。エステルに弱みを握られている。インテリの弟が内心自慢に思う。
●アンドリュー︵アンディ︶ - スティヴンの弟。大学で文学を収め、学寮のなかで名門クラブのOB。眼鏡をかけ学究肌だが、殺し屋とも対等にやりあうなど兄に似て大胆。
●ミロ・ハーハ - バーナードの遺産二百万ドルの相続人。大戦時にバーナードの命を救ったチェコ人パルチザン。現在は行方不明。
●ゲルトレーデ︵トルーディ︶・オーレンドルフ - ミロ・ハーハの元恋人。
●ハインツ・ケムカ - 音楽家。ゲルトレーデの現在の同棲相手。
●ロナルド︵ロン︶・ハーレイ - 弁護士。
●ルー・グッディ - エステルに雇われた殺し屋。
●ファン・ヒルファサム - オランダ・オースタダイク市長。
●ヨハンナ - オランダ・オースタダイク市長夫人。ハーハと浮気をしていた過去がある。
●ヨースト - オランダの農園主。探りに来た訪問者を殺し埋める。
●ミュラー - 運転手。チェコ潜入に雇われる。
●ミラドール教授 - 社会主義運動の指導者。演説中にハーハに化けた狙撃手に撃たれ死亡。
●リブセ・ミラドール - 教授の娘。入国したアンドリューとともにチェコから脱出をはかる。
●ローリンホーフェン - チェコのスパイ。
●オットー・ザンダー - チェコの警察庁長官。社会主義者を取り締まろうとしている。
﹁事件屋じつは組織暴力の親玉﹂として裏世界に君臨するストリート一家のボス・バーナードは、新たに遺言書を作る。﹁命の恩人であるチェコ人のミロ・ハーハに、二百万ドルを譲り、妻には残りのはした金のみ残す﹂というのだ。
突飛な遺言にたまったものでは無い妻エステルは、組織の幹部スティーヴンに相談する。スティーヴンはハーハの所在を確認しに弟アンドリューとヨーロッパに旅立つ。ところが、留守中にバーナードが殺し屋に殺されてしまう。オランダでは、アンドリューがハーハの恋人だった娘ゲルトレーデに接近する。そしてハーハの生存を確認しチェコに潜入したが、彼は政争の道具にされようとしていた。
日本語訳書[編集]
●﹃二百万ドルの死者﹄ 青田勝訳、ハヤカワポケットミステリ1006、1967年
●﹃二百万ドルの死者﹄ 青田勝訳、ハヤカワ・ミステリ文庫2-20、1978年︵巻末にエラリー・クイーン長編リスト︶
●本国のpocket books社では、本作を含め、1966年までに15作品をエラリー・クイーン名義のペーパーバックで出版している。日本でも丸善や紀伊国屋など大手書店の洋書コーナーで販売されていたという[3]。しかし、次の翻訳は2000年に﹃青の殺人﹄が出版されるまで、30年以上経過している[4]。
- ^ 「チェスプレイヤーの密室」飯城勇三・解説
- ^ クイーンの『ローマ帽子の謎』に始まる作品群はハードカバーで発売
- ^ 『青の殺人』(2000年3月 原書房)有栖川有栖・解説
- ^ 早川書房HMMで『摩天楼のクローズドサークル』が『夜の帳が下りる時』の訳題で紹介されたが、単行本の出版は原書房になった。